高卒入学者は少数も高校教員から高評価

 本学では2016年にIR部門を設置し、エビデンスに基づく改革を行っており、THEのランキングもその一つとして活用しています。日本版のスコアを見ると、「教育満足度」が比較的高い点が意外でした。本学の学生の多くは3年次から編入している高専卒業者なので、高校教員から評価を得られるとは考えていなかったからです。
 高専卒業者に対しては一般教養を補うため、修士課程に至るまでリベラルアーツ科目を提供。一方、1年次からの入学生と高専卒業者の知識の差を埋めるため、1,2年次にも専門科目を配しています。このように、専門と教養の両面を全学年で学べることが、評価された理由の一つかもしれません。
 高い教育満足度のもう一つの大きな要因は、大学院進学者全員を対象とした4年次の「実務訓練」でしょう。学生は、国内外の企業等における5~6か月間のインターンシップ(うち海外は約15%)を通して、社会で求められる知識や能力を実感し、大学での学びに対する意欲を高めます。その成果は、就職率や企業評価の高さ、離職率の低さなどにあらわれています。それだけに、「教育成果」のスコアは低く感じられました。研究者による評判調査の比重の方が大きいことが要因かもしれません。

外部資金獲得施策として企業の海外進出を支援

 今後のスコア向上が望める分野は「国際性」と「教育リソース」です。
 大規模大学で「国際性」を強化するには時間が必要かと思いますが、本学のような単科大学では、施策が成果に直結します。学部教育の前半を現地の大学で、後半を本学で過ごし、修了者に両大学の学位を授与する「ツイニング・プログラム」が海外の学生に好評を得ており、留学生の割合は15%を超えようとしています。
 「教育リソース」については、外部資金の獲得に、教職員が総力を挙げて臨んでいます。「GIGAKUテクノパークネットワーク」はその一つ。本学ではメキシコ、ベトナム等世界6か国の大学にオフィスを設置し、現地の大学や企業と共同研究を行っています。ここに日本の企業にも入ってもらい、現地における販路の開拓、人材育成・供給、情報提供などに協力するかわりに、資金を提供してもらいます。参加企業はこれから確実に増える見通しです。
 海外とのネットワークが充実すれば、「国際性」はもちろん、教育や研究にも好影響をもたらし、各分野のスコア、そしてランキングも必ず上がるはずです。今後も努力を続け、地方単科大学も、大都市圏の大規模大学にも負けない教育をしているということを、このようなランキングを通じて、地方単科大学も、大都市圏の大規模大学に負けない教育をしているということを全国にアピールしていきたいですね。

理事・副学長
鎌土 重晴
鎌土 重晴
かまど・しげはる
1980年、豊橋技術科学大学工学部卒業。1982年、同大学大学院工学研究科修士課程修了。津山工業高等専門学校講師などを経て、1991年から長岡技術科学大学。2004年、同大学教授に。2015年から現職。ハルビン理工大学、重慶大学などの客座教授も兼務。専門は材料組織学。