実践事例・ピックアップ

主体的な学びへの転換を促し、グローバルな環境を提供

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東北大学は、世界最先端の研究だけでなく、学生の教育、とりわけ初年次教育における大学での主体的な学びへの転換に力を入れてきた。こうした長年の努力の結果が、教育力を評価する第1回「THE世界大学ランキング日本版」において、総合2位という好成績に結実した。グローバルなキャンパス環境への取り組みも加速。グローバルリーダー育成に向けて着実な歩みを続けている。

東北大学 理事(教育・学生支援・教育国際交流担当)、理学部教授
花輪 公雄
はなわ・きみお
東北大学理学部を卒業後、東北大学理学部教授、理学研究科長を経て、 2012年に理事(教育・学生支援・教育国際交流担当)に就任。

全部局の教員が担当する「基礎ゼミ」

 東北大学は現在、学長の名前を冠した「里見ビジョン」で目指すべき方向性を明示している。全部で7つあるビジョンの最初に「学生が国際社会で力強く活躍できる人材へと成長していく場を創出します」と謳い、教養教育を核とする教育改革に力を注いできたことが高校教員からも評価を受けて、今回のランキングにつながったともいえる。

 大学教育の、最初の重要な使命である「高校までの受け身の学習から主体性を持って学ぶ姿勢への転換」を担うのが、1年次の最初のセメスターにおける全員必修の「基礎ゼミ」だ。今では一般的だが、東北大学では十数年前から導入している。入学定員約2,500名に対して約160コマを開講し、1クラス15名程度の徹底した少人数制をとる。教育部門を持たない研究所も含め全部局の教員が指導する、まさにオール東北大による教育プログラムといえる。加えて、担当教員には、FD・ワークショップ等を通して効果的な指導法を浸透させている。

 「基礎ゼミ」には、課題を提示するPBLタイプから、課題そのものの発見から始めるIBL(Inquiry Based Learning)タイプまであり、扱うテーマも多岐にわたる。外国人留学生と日本人学生が一緒に学ぶ「国際共修ゼミ」もある。優秀なグループには口頭やポスターでの発表の機会を与え、半年間で学生は著しく成長する。また、別のテーマを探求したい学生や、もっと発展的な内容を追究したい学生のために、続くセメスターで約60コマの「展開ゼミ」を用意している。こうした取り組みが「教育満足度」を下支えしている。

基礎ゼミ発表会では教職員・学生の審査によって優秀者が表彰される

入学前からスタートする体系的な留学プログラム

 キャンパス内のグローバル化を意欲的に推進してきたことも、ランキングにおける「国際性」指標での好結果につながった。まずは留学促進のため、4~6週間のSAP(Study Abroad Program)を充実させた。1・2年次が対象だが、2014年度からは国立大学で初めてAO入学生などを対象にした「入学前海外研修プログラム」を導入し、2016年度はアメリカ・カリフォルニア大学リバーサイド校に15名、ニュージーランド・オークランド大学に15名を派遣している。

 例年、1・2年次の1割に相当する500名がSAPや学部単位の短期留学プログラムに参加している。留学経験者の中から募ったGCS(Grobal Campus Supporter)が、周囲への留学の働きかけを行い、キャンパス内に“海外体験は当たり前”の雰囲気作りを醸成している。3・4年次の半年~1年間の交換留学プログラムほか、「東北大学グローバルリーダー育成プログラム(TGLプログラム)」といった、様々なグローバル関連のプログラムが動いている。

 外国人留学生の獲得にも積極的だ。交換留学以外にも、短期のサマープログラムや日本語研修プログラムなどを開発し、学部学生が日常的に留学生と接する機会を増やしてきた。さらに、2007年度からは「ユニバーシティ・ハウス」と呼ぶ国際混住寮も稼働している。現在、建設中の寮が完成すれば、2017年10月には全1,720室の規模になる。1室8人で、留学生と日本人学生がほぼ半々で生活する経験を通じ、生活レベルからの国際感覚の涵養を目指している。

ユニバーシティ・ハウスでは日常的に国際交流が行われている

学生の多様性や質確保のためAO入試の割合を3割に拡大

 多様な能力を持った学生を受け入れる高大接続改革も積極的に行っている。特に力を入れているのが全学部で実施しているAO入試で、募集人員470名(全募集人員の約20%)は、国立大学の中でもずば抜けて多い。それを2020年度にAO入学者比率30%まで持っていく計画だ。手間はかかるが、追跡調査の結果から、AO入学者に強い意欲があり、学修スキルも高い学生が多いことがわかり、踏み切った。各学部・学科の工夫を凝らした選抜により、多様な学生の確保を実現している。

 教育の質を保証するための取り組みとして、工学部では「学修レベル認定制度」を導入している。学生全員に統一テストを課し、「基礎学力」「専門学力」「課題解決/論理展開力」「語学力」「価値創造力」の5分野について7段階で評価。基礎および専門学力と語学力に関しては統一テストの点数を、他の2分野に関しては関連する履修科目の成績をそれぞれポイントに換算し、レーダーチャートで表現する。できるだけ正五角形に近づける努力を学生に促し、客観的な観点からの質を保証している。

 東北大学では、これらの教育改革を「里見ビジョン」に示されたロードマップに従って着実に進めると同時に、高校訪問や出張授業、オープンキャンパスなど様々な機会を通じて、高校との密接なコミュニケーションを重ねる努力も続けている。現在でも全国型の大学であることは間違いないが、今後、さらに多くの地域の高校にアピールしていく予定だ。