偏差値以外の指標を示せる

 北海道札幌南高等学校では、1年次からロングホームルームの時間を使い、大学・学問研究を行っています。一般的なキャリア教育は、職業研究から始めることも多いのですが、あえて大学・学問研究を先に行うことにより、生徒にとって最適な大学選びができると考えています。
 偏差値のみを大学選びの参考にすると、より偏差値の高い大学に入ることが目的になりがちです。もっと視野を広げ、特定の職業に捉われず、各生徒にとって1番の大学に進学してほしいという意図から、進路指導の場でも大学・学問研究を重視しているのです。それにより、勉強へのモチベーションを高めています。
 もちろん、偏差値という指標も大切ですが、それでは大学の面白さ・充実さなどはわかりません。そのため、日本版を通じて、「さまざまな物差しがある」と生徒に伝えていくのが大切だと思っています。
 日本版では、教育リソースがきちんと指標化されていて、学修環境や研究力について測ることができます。さらに、さまざまな指標がバランス良く入っているため、大学・学問研究の一環として、「この大学では何ができるのか」を生徒たちに考えさせるきっかけになっています。

大学研究に新しい視点

 具体的な活用法としては、全校生徒を対象に配付している「進路だより」の大学研究についての特集で、大学選びの必見ポイントとして日本版を紹介しました。
 その際、ランキング1位の東京大学と2位の東北大学をピックアップしました。東北大学が京都大学を上回ったことについて、生徒たちは驚いていました。さらに、東北大学はランキング指標に着目し、その他の情報も付け加えて発信したところ、反応が大きく出ました。実際に、今現在で東北大学を志望する生徒数は過去最高となり、京都大学の志望者数に追いつくほどの数字となっています。
 また、生徒たちは、偏差値のデータだけでは見つけられなかった大学が日本版にランクインしていることに興味を持ち、積極的に大学調べをするようになっています。例えば、単科系の大学が上位にも入っているのを見て、生徒の中には、長岡技術科学大学を第1志望に変更した生徒もいます。
 また、理系の場合、本校は医学部志望者が多いのですが、今までは北海道以外の医大を目指していた生徒が、ランキングを見て、札幌医科大学など地元の医学部にも目を向けるようになりました。偏差値と日本版とを照らし合わせることによって、教育力も伴っている大学であると確認でき、志望校選びの後押しとなっています。

生徒の多様な大学選択に期待

 大学研究には、主に大学ホームページの情報を使っています。最近は、日本版のポスターも、偏差値ランキングのポスターとともに掲示し、生徒への活用を呼びかけています。
 今後は、今年度の出願状況を見て、視野を広げた大学選択が達成できているのかを確認し、実際に、THE世界大学ランキング 日本版の影響があるようであれば、「去年はTHE世界大学ランキングを参考に、進学する大学を決めた先輩もいるよ」と、生徒たちに紹介していきたいと考えています。

北海道札幌南高等学校 進路部長
高桑 知哉
高桑 知哉
たかくわ・ともや
教職歴27年目。学問研究、大学研究からの進路指導、 生徒が本気になるための啓発活動の推進や進路データの提供に尽力。 専門教科は化学・物理。