ランキングは自学の姿を映し出すひとつの鏡

 本学は世界の大学の研究力、国際性などに焦点を当てた「THE世界大学ランキング2020」で総合251-300位(国内3位タイ)、主に教育力を重視した同日本版ランキング(2020年3月発表)では総合1位にランクインしました。本学の研究力、教育力が国内外の研究者・教育者、また在学生に評価されたことを喜ばしく受け止めています。
 こうした国際的なランキングは海外の学生が留学先を探す際も、海外大学が日本の大学と国際連携を結ぶ際も、必ず確認されるはずです。一定の影響力を持つようになってきていることは間違いないでしょう。ただ、本学では順位そのものよりも、ランキングを構成するさまざま指標に着目をしています。それは自分たちの姿、立ち位置を写す鏡であると考えるからです。THEのランキングだけでなく、ほかの重要な指標と併せてさまざまな観点で自学を分析し、エビデンスに基づいた研究・教育の改善に役立てています。
 国際的な競争力を向上させるためには、海外大学の取り組みを学ぶことも重要です。ランキングは他大学とのベンチマーキングにも活用できますが、数値の単純比較はできません。各大学の立ち位置、置かれている状況を理解したうえで、総体としてベンチマークをしていきたいと考えています。
 ランキングマネジメントの話をすれば、本学はランキングの分析を専門に行う組織を設けていません。大学全体のパフォーマンスを上げることが目的なので、特定の部署で完結させず、全学的な共有を図ることが重要でしょう。研究推進、教育、国際を担当する部署に加え、各学部・研究科の長に対して、自分たちの研究、取り組みの成果として数値を確認するように促しています。

一貫した教育改革を実行しグローバルリーダーの育成をめざす

 本学は今、世界を舞台に活躍する若手リーダーの育成のため、入試から大学院教育まで一貫した改革に取り組んでいます。
 入試では「学力重視のAO入試」を実施し、一般入試と同等の学力と高い意欲を持つ入学者を増やしています。これは以前から行っているものですが、追跡調査の結果、入学後に大きな成長が見られる学生が選抜できていることから、2021年度入試では募集定員の30%にまで拡大いたします。
 学部教育に関しては、2013年から「東北大学グローバルリーダー育成プログラム(TGLプログラム)」を実施しています。本学の特徴である強固な専門基礎力に加え、学生のグローバルマインドセットを高めるもので、語学力や異文化への共感力、課題解決能力を育成します。同時に海外派遣プログラムを飛躍的に拡大させ、現在、年間700名の学部生が海外で学んでいます。
 また大学院教育では国際共同大学院を設置し、スピントロニクスやデータ科学など9分野において、海外大学とパートナーシップを組み、共同研究を推進しています。参加学生は約半年間、パートナー大学に留学し、海外の研究者と共に研究生活を送ることで、「自分の能力が世界でどこまで通用するか」を体感して帰国します。
 加えて外国人学生と日本人学生が生活を共にする寄宿舎「ユバーシティ・ハウス」を新設するなど、環境面も整え、学生の国際感覚の養成を図っていきます。
 本学が今、めざすのは「教育・研究・社会との共創との好循環」による、最先端の創造、大変革への挑戦です。そのためには、学内の理解と学外からの信頼を得ることが不可欠。様々なステークホ ルダーへの情報発信、コミュニケーションの強化を図りながら、真に国際的な大学となることに向けて、継続性のある改革を推進していきたい考えです。

東北大学 副学長(教育改革・国際戦略担当)
山口 昌弘
山口 昌弘
やまぐち まさひろ
1985年東京大学理学部物理学科卒業。1990年東京大学大学院理学系研究科博士課程修了(理学博士)。1991年米国ノースカロライナ大学博士研究員。2003年より東北大学大学院理学研究科教授、2014年よりグローバルラーニングセンター長。研究分野は素粒子論、特に標準模型を超える物理および初期宇宙の研究。1996年10月西宮湯川記念賞。