実力がありながらも競争意識が薄い日本の大学~世界版を振り返る~

 9月に発表されたTHE世界大学ランキング2018。ランキングを制作しているTES Globalのデータ・解析ディレクターであるダンカン・ロス氏が、この結果を振り返りました。
 ダンカン氏は、中国の成長、西欧・アメリカの教育予算の縮小、カナダの国際性の上昇などに言及。日本については、ランクイン校数を前回の69から89に増やしたことに賛辞を送りました。一方で、「平均スコアを前回に比べ1ポイントほど下げている」「他国に比べ、GDPの割にスコアが低い」といったデータを紹介し、躍進する中国などと比べて成長が停滞している点を指摘しています。「高等教育は、1国だけのものではなく、他国と競争したり協力したりする時代」「ランキングに振り回されるのではなく、自学を客観的に見るための情報として活用すべき」と述べ、日本の大学に、自学を世界的な視野でとらえるように呼びかけました。
 同ランキングの日本での展開について、サポート役を務めるベネッセコーポレーションの学校カンパニー大学・社会人事業本部の藤井本部長は、「ランクイン大学は、世界の大学の上位5%という位置づけ。ランクイン校数世界3位という数字は、日本の大学の優秀さを示している」と、各大学の努力の成果を取り上げました。世界の論文数に占める日本の論文数の割合が低下していることも併せて紹介し、各大学のさらなる改革に期待を寄せました。

日本版は項目を充実させブラッシュアップ予定~日本版の次回構想~

 日本版について、3月の発表以降、全国の高校が強い関心を示している様子が紹介されました。進路指導室等にランキングポスターを貼ったり、進路ガイダンスで新しい大学選びの基準として紹介したりする高校が増えています。
 また、次回の日本版の発表については次のような報告がありました(内容は発表段階での検討内容で、確定情報ではありません)。

 ・次回の日本版の発表は、2018年は3月28日。
 ・スコアを算出するためのデータの一つに、大学生調査を加える。学生がアンケートサイトにアクセスして回答する方式を採用。アメリカ版ランキング(COLLEGE RANKINGS)2017と共通の質問項目を設定し、2国間で回答を比較できるようにする。
 ・現在は外国人の学生・教員の割合からスコアを算出している「国際性」分野に、新規項目を追加する。
 ・各分野・項目の重みづけを見直す。

日本版ランクイン大学が語る、ランキングの捉え方

 日本版にランクインした4大学から、グローバル化やランキングへの対応、考え方について講演がありました。内容の一部をご紹介します。

■東北大学(世界版:201-250位 日本版:2位)
米澤 彰純先生(IR室 室長)
「THE世界大学ランキングは、国会で言及されるなど、日本で最も注目度が高く影響力が大きいランキング。パートナー大学の検討、自学のアピールに活用しています」
「日本版は、偏差値ではなく教育の中身を見て大学を選ぶ高校生を増やしています。本学のような地方の大学は都市部の高校生から選ばれにくい傾向がありましたが、ランキングに入ることによって都市部にも強力にアピールできます」

■会津大学(世界版:601-800位 日本版:23位)
程 子学先生(副学長)
「日本版で23位にランクインした際、ポータルサイトのトップ記事として取り上げられました。歴史が浅く規模の小さい大学としては、知名度を上げる絶好の機会となりました」
「コンピュータ理工学に特化した教育、教員の4割が外国人という国際性の高さ、起業が盛んな学風などを、今後もさらにアピールしていきます」

■桜美林大学(日本版:111-120位)
畑山 浩昭先生(副学長)
「日本版では『国際性』が30位、『教育満足度』が62位でした。スコアを引き上げている取り組みとして、複数の海外拠点と連携した日本人留学生の送り出し、英語や中国語で日本語や日本文化を学べる海外留学生向けプログラム、興味・関心に応じて多彩な学問を広く深く学べるリベラルアーツ学群の教育制度などがあります。一方、研究力、理系教育の強化などが、今後の課題として見えてきました」

■立命館アジア太平洋大学(日本版:=24位)
近藤 祐一先生(入学部長)
「日本版の発表により、全ての大学が同じ土俵でグローバルな評価にさらされることになりました。国際的に通用する教育とは何かを、あらためて考え直しています」
「本学は、学生の半数が86か国・地域から集まった外国人という特色ある環境を実現しているものの、日本人学生と外国人学生の交流をさらに促進すべきだと感じています。両者が協働する授業を増やそうと、改革に取り組んでいるところです」