各大学の強みが分野別スコアに表れている

 総合ランキングでは、芝浦工業大学が58位タイ(私立大学に限れば17位)と、首都圏私立理工系5大学の中で、唯一2ケタ台の順位を獲得しています。120位台の東京電機大学と千葉工業大学、130位台の工学院大学の3大学は僅差だと言えるでしょう。
 分野別のスコアを見ると、芝浦工業大学と千葉工業大学は「教育満足度」が順位を押し上げ、東京電機大学、工学院大学、東京都市大学は「教育成果」がランクインの大きな要因になっているようです。
 なお、5大学とも世界大学ランキングにもランクインし、世界的にも研究力の高さが認められています。

高校教員から人材育成力を認められた2大学

 芝浦工業大学と千葉工業大学でスコアが高かった「教育満足度」は、高校教員への調査を基にスコア化された指標です。

 芝浦工業大学は、全国の私立理工系大学で唯一、スーパーグローバル大学創成支援事業(以下、SGU)に採択されています。もともと課題解決型学習(以下、PBL)が盛んな同大学ですが、SGU採択を機にスタートした「グローバルPBL」は、海外短期研修中に現地の学生とプロジェクトチームをつくり、専攻分野に応じた課題に取り組むというもの。国籍や言語の壁を乗り越えて協働する経験が、学生のグローバル人材としての素養を鍛えます。
 また、同大学は、「教育リソース」においても、私立大としては高いスコアを示しています。それもそのはず、設備においても、ハード、ソフトの両面で充実した環境を整えています。特に、学生のための施設は豊富で、デザインやモノづくりのための環境が整えられた豊洲キャンパス、広大な敷地にSIT総合研究所をはじめとする最先端設備や国際学生寮、総合グラウンド(2017年完成)などを備えた大宮キャンパス、イノベーションの拠点として都心に位置する芝浦キャンパスと、それぞれ特徴を持った3つのキャンパスがあります。

 千葉工業大学は、国内の私立工業大学の中で最も長い歴史があります。チャレンジ精神を重んじる自由闊達な校風が特徴で、学生たちがそれぞれの分野で主体的な活動を続けています。そのような活動が、入学後の能力伸長を促していると言えるでしょう。
 例えば、未来ロボティクス学科の教員、有志学生が集まるプロジェクト「CIT Brains」では、2006年から自律型サッカーヒューマノイド(人の操作ではなく、自分の意志で動くロボット)の開発を行い、国内外のロボット競技大会で輝かしい成績を収めています。
 キャンパスには、機械の加工や組み立てを行える「学生自由工作室」や、高度な工作機械を扱える「工作センター」が設けられ、これらを活用してコンテストに応募し、受賞に至る学生は珍しくありません。また、世界的なレベルのロボット研究組織「未来ロボット技術研究センター(以下、fuRo)には、学部生がその活動をサポートする制度「fuRoジュニア」があり、最先端のロボット研究に関わることができます。

企業や大学研究者が教育力を認める3大学

 東京電機大学、工学院大学、東京都市大学は、企業の人事担当者や大学の研究者への調査結果がスコア化された「教育成果」で存在感を示しています。

 「実学尊重」を建学の精神とする東京電機大学は、グループディスカッションやプレゼンテーションなど学生が主体となって行うPBL形式の授業の導入を全学的に推進しています。社会人を招いてディスカッションを行う授業3Dプリンタを使ってアイデアを形にする授業、Webアプリケーションを制作する授業などが行われています。
 さらに、理工学部では、3年次における成績優秀者を対象に、2018年度に「オナーズプログラム(次世代技術者育成プログラム)」を設置予定。学生は、今後の産業ニーズを先取りした宇宙工学・生体医工学・環境工学のいずれかの学際領域におけるハイレベルな研究に取り組み、社会に役立つ知識・技術を学ぶことができます。

 工学院大学は、日頃の授業や課外活動を通じて、就業力の育成に力を入れている点が企業に認められていると考えられます。
 学生が社会に出てからも新たな知識を学ぶために必要な、エンジニアとしての基礎力の育成を重視。また、課題解決力を身につける機会として、卒業単位に認められるインターンシップ、ソーラーカーの開発やロボット開発、競技プログラミングなどに挑む「学生プロジェクト」などに取り組むことができます。そのほか、英語力不問、現地授業料無料のハイブリッド留学プログラムや、日本にいながら国際交流ができる「キャンパス・アテンディング・プログラム」で、これからのエンジニアに必要な語学力を養います。
 大学の調査によると、就職内定者の97.5%が内定先に満足しているとのことです。

 東京都市大学は、学生が4年間で得た力を可視化する取り組みを始め、2016年度の大学教育再生加速プログラムに選定されています。
 同大学は、卒業までに育成する力を「リテラシー基礎力」「コンピテンシー基礎力」「語学力」「基礎学修力」「専門学修力」「専門実践力」の6つに分け、それぞれをスコア化するしくみを開発。各学年終了時に学生と教職員がスコアを共有し、その後の大学生活で何に力を入れるべきなのかを検討したり、就職活動でのアピールポイントとして活用したりします。卒業時には最終的なスコアを、学位の内容を明らかにする証書である「ディプロマサプリメント」として発行します。この「ディプロマサプリメント」は、企業にとって、学生がどんな力を身につけてきたのかを客観的に把握する材料になると言えるでしょう。