スーパーグローバル大学のランクイン状況

 文部科学省は、世界トップレベルの大学との交流・連携を実現、加速するための新たな取り組みや、人事・教務システムの改革、学生のグローバル対応力育成のための体制強化など、国際化を徹底して進める大学を重点的に支援するため、2014年から「スーパーグローバル大学創成支援事業」を実施しています。
 スーパーグローバル大学には、世界レベルの教育研究を行う「トップ型」13校と、日本の社会のグローバル化を牽引する「グローバル化牽引型」24校の、合わせて37校が採択されています。
 2018年2月7日に発表された「THEアジア大学ランキング2018」には、スーパーグローバル大学37校のうち28校がランクインを果たしました。前回と比べてランクアップしたのは4大学のうち、「トップ型」が3大学(京都大学、大阪大学、北海道大学)を占めています。一方、今回のランキングで初ランクインを果たした大学には、「グローバル化牽引型」が3大学(会津大学、京都工芸繊維大学、東洋大学)含まれていました。

産学連携、研究力がランクアップを後押し

 「THEアジア大学ランキング2018」において、ランクアップしたトップ型3大学の分野別スコア推移を見てみると、京都大学と大阪大学が、「産業界からの収入」と「研究力」の2つのスコアを、大きく伸ばしていることがわかります。それぞれの取り組みを見ていきましょう。

京都大学
 2017年の14位から、3ランクアップし、2018年は11位にランクインした京都大学は、「THEアジア大学ランキング2018」の調査期間である2016年に、研究の実施体制強化に向けて、「リサーチ・アドミニストレーションシステム」の改革を行いました。
 京都大学では、2011年より文部科学省の事業の補助を受け、大学等における研究マネジメント人材(リサーチ・アドミニストレーター:URA)の育成・定着に向けたシステム整備を行ってきました。2016年4月に、それまで8地区に分かれて配置されていた部局URA組織を統合し、京都大学学術研究支援室(以下、KURA)として新体制でスタート。大学全体で、URAのマネジメントに基づく外部資金獲得、学際研究推進、研究の国際化などに取り組んでいます。これらの取り組みが、「研究力」の強化につながり、さらには産学連携を促進し、「産業界からの収入」の増加につながったと考えられます。
 特に、新たな学際研究プロジェクトの実現を目指す研究者を支援する「分野横断プラットフォーム構築事業」では、2011年度から2016年度までに、全61件の新規ワークショップや研究会を開催しました。KURAが、書籍の発刊やグループ内メンバーによる事業化などの成果につながっています。

大阪大学
 大阪大学は、2017年のランキングから4ランクアップし、2018年は28位になりました。こちらも、リサーチ・アドミニストレーションシステムの改革がランキングを引き上げた要因だと考えられます。
 2016年度には、URAの組織と、戦略的大学運営に資する様々なデータの収集・分析・評価・提供(IR)を行ってきた未来戦略機構戦略企画室IRチームの組織を統合しました。さらに、国際化を推進するため、2016年12月からURAのうち1名が北米に常駐しているほか、若手・女性・外国人研究者への支援として、研究費獲得や論文投稿支援を行っています。
 さらに、国際共同研究支援として、最先端の研究を展開している外国人研究者とそのグループを招へいし、大阪大学の研究者と共同研究を実施するための資金等を支援する「国際共同研究促進プログラム」を行っています。2016年度、このプログラムを契機とした国際共著論文は、前年の2倍以上である134件にも上りました。この論文数の増加こそ、「研究力」のスコアに貢献し、ランクアップした大きな要因と考えられます。
 そのほかにも、学際的な研究を推進する機関として、2016年度には、「データビリティフロンティア機構」と「先導的学際研究機構」を設置し、新たな研究領域の開拓に取り組んでいます。

初ランクイン大学で進む国際化

 「THEアジア大学ランキング2018」では、会津大学が131位、京都工芸繊維大学が251-300位、東洋大学が301-350位に、それぞれ初めてランクインしました。
 このうち会津大学は、「被引用論文」と「国際性」のスコアが高くなっています。この要因を見ていきましょう。
 全教員の約4割が外国籍の会津大学では、「THE世界大学ランキング 日本版 2017」の国際性ランキングでも12位と、上位にランクインしています。2016年10月より、学部に、英語のみで科目を履修し卒業できるコース「先進ICTグローバルプログラム(Advanced ICT program)」を開設し、第1期生が入学。シラバスの英語化にも取り組むなど、海外から学生が留学しやすい環境を整備しています。
 さらに、研究面でも、2016年度に5回の国際会議を開催するなど、グローバルな取り組みを行っています。このような国際的な取り組みが、海外とのネットワークの強化や英語論文数増加につながり、「被引用論文」のスコアに影響を与えたのではないかと考えられます。
 
 3月末には、「THE世界大学ランキング 日本版 2018」が発表されます。順位だけではなく、各大学のスコアの推移や初ランクインの要因を調べてみると、大学の強みが発見できるかもしれません。