初ランクインを果たした国公立大学の顔ぶれ

 日本版ランキング2018が発表され、総合ランキング上位151校には、23校が新しくランクインしています。新たにランクインした大学の内訳は、国立大学3校、公立大学7校、私立大学13校です。
 一般に、国公立大学は教育リソースのスコアが高い傾向にありますが、初ランクインを果たした国公立大学は、その他の分野のスコアも高いのが特徴です。学校自体が小規模の傾向にあり、それぞれの大学における取り組みの成果が実る結果になっていることがうかがえます。
 日本版ランキング2018で、初めて総合ランキングに入った国公立大学は以下のとおりです。

初ランクインの背景にある、各大学の取り組み

 初ランクインを果たした国公立大学のうち、国立大学3校の取り組みを紹介します。それぞれ分野別スコアの傾向が異なり、特徴が表れています。

総合83位:神戸市外国語大学
 神戸市外国語大学は、外国語大学ということもあり、国際性スコアが83.3ポイントで10位にランクインしています。これが、総合ランキング83位への順位を押し上げた要因になっていると考えられます。
 高い国際性スコアの要因になっている特徴的な取り組みのひとつが、全て英語で行われる「模擬国連」の実施です。「模擬国連」は、学生が自分の出身国以外の外交官を務め、国際社会が直面している問題を議論し、実際の国際連合の手法を模して決議を目指します。
 学生たちは、国際会議という外交の現場を疑似体験し、協調性や利害関係の調整、相互理解など外交コミュニケーションに必要なことや建設的な議論を英語で行うスキルが身につきます。さらに、海外との付き合い方、外交官とはどういった仕事なのかを考えるきっかけになるのも魅力です。学生は、他では体験できない貴重な経験を通じ、語学の修得だけでなく、身に付けた語学をどのように使うかも学ぶことができます。

総合84位タイ:高知工科大学
 高知工科大学は総合ランキング84位タイで、80位~90位の大学では唯一、4分野すべてで150位以内にランクインしています。中でも、教育充実度の順位が高い点は注目されるべきでしょう。
 高知工科大学は、1997年に私立大学として始まり、2009年に日本で初めて公立大学法人化に踏み切りました。その歴史から、「日本にない大学」を目指し、さまざまな取り組みを行っています。例えば、アメリカで一般的なクォーター制の導入、必修科目を置かない全科目選択制、学生の自由な学修時間を確保するために主要科目を1~3限に配置する試み、大学院とのつながりを重視した6年一貫教育、早期卒業制度など、先進的な制度を積極的に取り入れています。
 高知工科大学は理系大学ということもあり、特に研究分野への期待が高く、世界最先端を目指した研究が盛んです。例えば、JAXAとの次世代の航空エンジンの研究開発に学生を派遣するといった体験型プログラムや、人工知能で免疫細胞を追跡することによって、人工知能を医療に役立てる研究など、最先端の技術に学生が触れられる環境が整っています。このように、学生たちは、大学内外の実習を通じて実践的な経験を積み、それを研究に生かしているようです。

総合88位タイ:静岡県立大学
 静岡県立大学は教育充実度のスコアが67.5ポイントで、他のスコアよりも高い点が特徴です。これは、地域と連携した取り組みを通じ、地元の高校や企業に大学の取り組みが浸透しているためと考えられます。文部科学省の2016年度の学校基本調査によれば、静岡県における大学進学時の県外からの流入人口が8,000に対し、県外流出人口は12,174人と流入人口を上回っています。そのため、高校生の県内進学率を上げるための高大連携や、地域連携の取り組みが強化されていると考えられます。
 その取り組みの1つが「理系女子夢みっけ☆応援プロジェクトinしずおか」です。女子中高生の興味・関心を高めて理系分野へ進むことを促すため、科学技術分野の第一線で活躍する女性たちとの交流会・実験教室・出前授業の開催を静岡大学と共同で実施しました。このプロジェクトは2016年度から2017年度までの2年間、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が募集した女子中高生の理系進路選択支援プログラムに採択されています。
 静岡県立大学では理系の具体的なイメージがわかなかったり理系への進学をためらっていたりする女子生徒を対象に、女性教員や、より身近な理系の女子大学生と一緒に体験実験を行うイベントを開催しています。参加者の9割以上が「進路選択の参考になった」「理系進路を前向きに選択しようと思うようになった」とアンケートに回答したほか、保護者からも高い評判を得ています。
 また、「ふじのくに『からだ・こころ・地域』の健康を担う人材育成拠点」プロジェクトを通じ、“地域に根付いた大学”というイメージを定着させています。このプロジェクトの中では、「からだ」「こころ」そして「地域」の3要素を合わせて「健康」と位置づけ、連携自治体の「高齢化が急速に進む」「若者の県外流出」「地域産業の衰退」といった地域課題や、「健康長寿」全国1 位という強みに関する研究を進めています。学生は「しずおか学」という科目群を通じ、静岡の歴史、文化、産業等を学び、フィールドワークを行うなどして、自治体への意識を高めているのも特徴です。

 各大学の分野別スコアを見比べてみると、大学の特徴が見えてきます。その特徴にかかわる、大学の具体的な取り組みや施策などを調べてみると、大学の深い理解につながるでしょう。