初ランクインを果たした私立大学の顔ぶれ

 日本版ランキング2018が発表され、総合ランキング上位151校に、2017年度版ランキングではランクインしていなかった23校が新しくランクインしています。新たにランクインした大学の内訳は、国立大学が3校、公立大学が7校、私立大学が13校です。
 一般に、国公立大学は「教育リソース」分野のスコアが高い傾向にあり、その点では、大規模校以外の私立大学は比較的ランクインしにくいとも言えます。しかし、私立大学ならではの柔軟な取り組みが「教育充実度」や「国際性」のスコアを上げ、小規模大学ならではの魅力を持つ私立大学も数多くあります。
 日本版ランキング2018の総合ランキングに初ランクインを果たした私立大学13校を見てみると、10校が「教育充実度」分野でもランクインしています。教育充実度は、高校教員の評判調査がスコア化されたものです。そのため、この分野のランキングが高い大学は、高校から「グローバル人材育成に力を入れている」「学生の力を伸ばしている」と判断されている大学と言えます。
 日本版ランキング2018で、初めて総合ランキングに入った私立大学は以下のようになっています。

初ランクインした大学の取り組み

 教育充実度に関わる取り組みを調べると、初ランクイン大学の特徴が見えてきます。そこで、初ランクインを果たした私立大学のうち、総合ランキング上位3校の「教育充実度」に関わる取り組みを紹介します。

総合27位:立教大学
 初ランクインした私立大学のうち唯一、立教大学が4分野すべてで150位以内にランクインしています。その中でも、「教育充実度」のスコアは96.2ポイントで19位です。
 立教大学は、2016年度に新たな教育カリキュラム「グローバル教養副専攻」をスタートしました。これは、「専門性に立ち世界に通用する教養人の育成」を目標とし、学生が所属する学部学科や専門性に加えて、「Arts & Science Course」「Language & Culture Course」「Discipline Course(2018年度開設)」いずれかの指定されたコースを履修します。最終的には大学が認定する海外体験を行い、その活動報告を行えば、卒業時に大学から修了証が発行されます。教養科目、専門科目、正課外活動を有機的に結び付けて体系化する、リベラルアーツの現代的再構築を目指したもので、10学部を有する特色を生かした、学部横断的な改革と言えます。
 また、2017年度にはグローバルリベラルアーツプログラム(GLAP)が新設されました。このプログラムの学生は、入学時から4年間、海外からの留学生と共に学びます。授業は原則英語のみで行われ、少人数教育を徹底しているのが特徴的です。さらに、希望者は留学生との寮生活、1年間の海外留学、帰国後の専門教育を通じ、学生の「さまざまな課題に向き合う思考力」「変革力」「異なる価値観を持つ人々と共に生きる力」などを養います。

総合53位:法政大学
 「教育充実度」のスコアが92.4ポイントで29位にランクインした法政大学は、学びの質の向上に向けた組織的・持続的取り組みであるFD(Faculty Development)などにおいて、様々な学内の業務に学生を巻き込むピア・ネットの体制を取っています。学生目線を取り入れた大学運営と、運営を通した学生取り組み自身の成長・気づきを効果的に行うユニークな取り組みと言えます。
 代表的なものに「学生が選ぶベストティーチャー賞」があります。この取り組みは、2014年度から年1回、教育開発支援機構FD推進センターの学生FDスタッフが、学生・教員・職員の懸け橋となって企画・実行し、理想的な授業をしている先生を選んで表彰しています。受賞内容は冊子にまとめられ、受賞した教員のコメントのほか、投票した学生のコメントや、学生が求め、受けたいと感じる授業の内容などを知ることができます。
 また、新入生向けの「学び場ガイド」も学生によって作られています。学生目線で「わかりやすさ」や「学生のニーズ」にこだわって制作され、新入生の疑問に答える形でまとめられていることが特徴です。法政大学では、他にも、在学生による新入生・編入生に向けた学修サポートが充実しています。
 これらの活動に関わった学生は、自分たちの活動が冊子という形になったり、他の学生の話題になったりすることによって達成感を感じています。活動の数々が、学生生活や大学での学びについて考えるきっかけとなっているようです。

総合86位タイ:獨協大学
 獨協大学の「教育充実度」のスコアは78.3ポイントで、59位にランクインしています。獨協大学の特徴は「オールインキャンパス」象徴される学部・学科の枠を越えた教育です。全学部が1つのキャンパスにあるため、様々な分野の授業を受けやすくなっています。そのほか、授業科目が1,400以上にものぼる「全学共通カリキュラム」を設置し、多様な知識の修得を通して、社会の様々な問題に対する自立的な判断力を育成しています。
 また、他の大学にはあまり見られない取り組みとして、「英語学習サポートルーム」で行われる学修カウンセリングがあります。これは、外国語学部(ドイツ語学科・フランス語学科)・経済学部・法学部1~4年生を対象に、入学から卒業まで、学生一人ひとりが自分の目標や生活・学修スタイルに合わせた英語学修の計画・実践をサポートするものです。英語の基礎から見直したい学生も、さらに高いレベルを目指したい学生も、カリキュラムや英語学修方法を熟知したアドバイザーから、対面式アドバイスを受けることができます。
 さらに、International Communication Zone(以下、ICZ)では、各国の衛星放送の視聴、各言語の雑誌やパンフレットの閲覧、検定や講座の情報を見ることができます。そのほか、「チャットルーム」という、各言語のネイティブスピーカーとの会話を楽しめる時間が設けられ、学生の語学力向上に役立っています。

 「教育充実度」に関わる取り組みは大学によって多種多様です。同程度のスコアであっても、大学それぞれの具体的な取り組み内容を調べてみると、特徴が見えてくるでしょう。