近畿大学が抜け出し、他3大学は拮抗

 日本版ランキング2018における「産近甲龍」の4大学のスコアを、2017版と比べてみましょう。最も大きな変化は、甲南大学のスコアが5ポイント以上、上昇したことです。これにより、甲南大学は京都産業大学の順位を抜き、2017版では「近龍産甲」だった4大学のランク順が、2018版では「近龍甲産」に変わりました。
 4大学の中ではトップの近畿大学が、さらにスコアを上げ、他の3大学との差を広げました。一方で、龍谷大学、甲南大学、京都産業大学のスコアの差は、わずか1ポイント未満に縮まって、3大学が肩を並べている状況です。

国際学部設置を契機にグローバル化を加速

 近畿大学の総合ランキングは2017版の54位から、2018版では49位にアップしました。ランクアップの要因は、「国際性」のスコアが42.7未満から49.2に上昇したことにあると言えます。
 近畿大学は2016年度に国際学部を新設しました。国際学部では、学年全員約500人は、1年次の後期から約1年間の長期留学が必須となっています。また、同学部のグローバル専攻では、授業の約4分の3が英語で行われます。
 国際学部開設を契機に、大学全体としてグローバル化を加速させる中、海外との交流をさらに充実させている点も見逃せません。近畿大学の学術交流協定校は、世界46か国・地域に228校あります(2017年度現在)。2016年度に新規31校、2017年度に新規40校と協定を締結するなど、急激に協定校数を増やし、日本人学生の海外派遣や外国人留学生の受け入れがしやすくなる土壌を整えています。これらの取り組みが、「国際性」のスコア上昇に奏功したのかもしれません。

「多文化共生キャンパス」が学生をグローバル人材にする<龍谷大学>

 龍谷大学の総合ランキングは80位タイから88位タイに後退し、分野別スコアでも2017版のスコアを上回る分野はありませんでしたが、全体的なスコア水準の高さにより、4大学中2位の座をキープしています。
 分野別スコアの中で特に高いのは「教育充実度」です。「教育充実度」の指標項目は、「グローバル人材育成の重視」と「入学後の能力伸長」に関する高校教員の評判調査です。これらの項目に影響を与えていると思われるのが、「多文化共生キャンパス」をめざす取り組みです。
 龍谷大学では2017年3月現在、世界35か国・地域から訪れた435人を超える留学生が学んでいます。深草キャンパスおよび瀬田キャンパスに設けられたグローバル・コモンズや、国際学生寮「りゅうこく国際ハウス」にある研修・国際交流スペース「さくら」などで、日本人学生と外国人留学生が交流する企画が催されています。国・地域を越えた異文化交流は、グローバル人材としての素養や、語学力、コミュニケーション力などの能力を伸ばすことにつながるでしょう。
 2017年度には学部を越えた取り組みとして、グローバル企業などを訪問して仕事研究を行う「グローバル・キャリア・チャレンジプログラム」も始まりました。学部による考え方の違い、ビジネスにおける日本と海外の違いなど、多文化を学ぶ機会となっています。

「教育成果」急上昇の背景に、社会で生きる力を鍛える学び<甲南大学>

 甲南大学の総合ランキングは2017版の111-120位から、2018版は94位タイへと大幅にランクアップしました。この飛躍を支えたのは、「教育成果」分野のスコアです。2017版の31.6ポイントから、2018版では64.8ポイントと、スコアが2倍以上になりました。「教育成果」分野のランキングでは、2017版では121-130位だった順位が、2018版では26位タイ(私立大学では7位)に急上昇しています。
 2018版では「教育成果」の指標項目の割合が変わり、「企業人事の評判調査」の割合が3%増加、代わりに「研究者の評判調査」の割合が3%減少しました。企業からの視点がより大きく影響するようになった日本版ランキング2018での順位の急上昇は、甲南大学に対する企業からの評判が高いことがうかがえます。
 近年の産業界では、多様な人と協力し合い、様々な状況に臨機応変に適応する力が求められています。甲南大学では、創立以来、複数のモノを混ぜ合わせて新たなモノを生み出す「融合力」の育成を重視し、学部・学科を越えた学びが推進されています。「神戸連携」「バリアフリー」「スポーツ」などのテーマに分かれ、有志の学生がチームを組んで課題を解決する「KONANプレミアプロジェクト」はその一例です。
 また、1年次から4年次まで各学年にキャリアデザイン科目が設けられ、「なりたい自分像」に段階的に近づくことができます。その仕組みも、企業で活躍するためのキャリア意識を育てることにつながっているのでしょう。

異分野を「むすぶ」教育が入学後の能力を伸ばす<京都産業大学>

 京都産業大学の順位は、2017年版の88位から、2018年版は96位にダウンしました。しかし、スコア自体は上昇しています。分野別スコアを見ると、「教育充実度」のスコアが順位の上昇に貢献したと考えられます。そこで、「教育充実度」の指標項目である、高校教員の評判調査の「グローバル人材育成の重視」と「入学後の能力伸長」という項目のうち、「入学後の能力伸長」に注目してみましょう。
 京都産業大学では、モノとモノ、人と人を結びつけて、新しいものや価値を産み出す「むすぶ人」の育成を目標に掲げています。
 例えば、理系3学部(理学部、コンピュータ理工学部、総合生命科学部)と、学部外の教育を結ぶ「グローバル・サイエンス・コース(GSC)」は、そうした取り組みの一つです。英語力を磨いて世界に羽ばたく理系産業人を育成するコースで、英語教育においては、外国語学部、キャリア教育、共通教育と連携した実践的な英語プログラムが提供されています。
 また、学びと社会を結ぶ取り組みとして、企業が提供した課題の解決を図る「産学協働教育科目群(PBL系)」、授業の一環として行われ卒業単位が獲得できる多彩なインターンシップなども行われています。
 これらの他学部や社会と自分を「むすぶ」取り組みを通して、学生は視野の広さ、協働性、課題解決力など、様々な能力を4年間で伸ばしていると考えられます。