世界大学ランキングと日本版ランキングの指標の違い

 イギリスの高等教育専門誌「タイムズ・ハイアー・エデュケーション(以下、THE)」が、2018年9月26日に世界大学ランキング(以下、世界ランキング)2019を発表しました。THEの世界ランキングは、世界で最も利用されている大学ランキングといわれ、ランキングの発表は今回で15回目になります。世界ランキング2019では、前回のランキングより約150校多い、世界86か国1258校の大学がランク付けされています。
 世界ランキングは、THE世界大学ランキング日本版(以下、日本版ランキング)と比べて、研究力重視といえます。世界ランキングの指標の分野は大きく4つに分かれ、「教育(教育環境)」「研究(量・収入・評判)」「被引用論文(研究影響力)」がそれぞれ30%、「国際性(教職員・学生・研究)」が7.5%、「産業界からの収入(知の移転)」が2.5%という比重になっています。研究に関する項目である「研究」と「被引用論文」が合わせて60%を占めていることが、世界ランキングの研究重視を物語っています。また、「国際性」分野の中にも「国際共同研究」の項目があることや、「教育」分野でも「学士課程学生に対する博士課程学生比率」「教員に対する博士号取得者比率」という項目があるなど、全体として大学院での研究に焦点を当てています。
 一方で、日本版ランキングは、学部の教育力を重視しています。
 日本版ランキング2018は、どれだけ充実した教育が行われている可能性があるかを示す「教育リソース」が34%、どれだけ教育への期待が実現されているかを示す「教育充実度」が26%、どれだけ卒業生が活躍しているかを示す「教育成果」が20%、どれだけ国際的な教育環境になっているかを示す「国際性」が20%という、4つの指標分野を基にランク付けされています。4つの指標分野すべてが、「教育」に焦点を当てたものだと分かります。

日本版ランキング2018におけるトップ2大学の比較

 日本版ランキングで同率トップの東京大学と京都大学について見てみましょう。
 日本版ランキング2018では、2017年に2位だった京都大学がスコアを伸ばし、東京大学と同率1位になりました。この2大学の各分野のスコアは、ほぼ均衡しています。その中で、「国際性」分野ではやや京都大学がリードし、それ以外の3分野では東京大学の方が少しスコアが高いという特徴が見られます。

 京都大学は、世界各国の大学・機関と大学間および部局間の学術・学生交流協定を締結しているほか、国際シンポジウムや学内交流事業など、様々な国際交流・グローバル教育に取り組んでいます。
 京都大学の「国際性」のスコア上昇によるランクアップは、指標項目の違いも影響していることが考えられます。日本版ランキング2018の指標は2017からの変更として、「国際性」に「日本人学生の留学比率」「外国語で行われている講座の比率」の2項目が追加され、「教育リソース」の比重が4ポイント下がりました。また、他の分野でも一部項目の比重が変わりました。これにより、京都大学の「国際性」分野のスコアは7.1ポイント上昇し、ランクアップしたと考えられます。
 一方、世界ランキングでも京都大学のランクアップは大きく、2018のランキングでは74位でしたが、2019では65位に躍進しました。また、東京大学も2018の46位から42位に順位を上げました。
 世界ランキングは、2018から2019のランキングで指標は変わっていません。その点から考えると、東京大学および京都大学のランクアップは、2大学の「実力」アップだと言えるでしょう。
 京都大学は、「教授法」と「被引用論文(研究影響力)」がそれぞれ4.1ポイント、国際性は3ポイント以上、上昇しました。引用数が伸びた要因としては、ノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑京都大学高等研究院副院長・特別教授の研究が挙げられます。
 東京大学は、世界ランキング2018から2019で、「教授法」と「産業界からの収入」がそれぞれ4ポイント以上、上昇しました。スコアアップの要因としては、産学協推進本部を設け、大学発のベンチャー企業を積極的に行うなど、産学連携に関する取り組みを行ったことが挙げられます。

世界ランキング2019でランクインした日本の大学

 世界ランキング2019にランクインした日本の大学を見てみると、日本版ランキングでその大学より順位の高い大学を、世界ランキングでは追い抜いている大学がいくつかあります。これは、世界ランキングと日本版ランキングの指標の違いによるものでしょう。
 そこで、世界ランキング2019にランクインした日本の大学のうち、私立大学上位2校の帝京大学と藤田医科大学(藤田保健衛生大学から2018年10月10日に名称変更)について見ていきましょう。
 帝京大学は、世界ランキング2019に初ランクインしました。日本版ランキング2018では分野別ランキングでのみ「教育成果」分野の93位にランクインしていますが、世界ランキング2019では総合401-500位でした。これは日本の大学の中では7位タイという順位です。帝京大学は被引用論文(研究影響力)のスコアがかなり高いことが特徴といえます。
 藤田医科大学は、日本版ランキングでは、「教育リソース」分野43位のみのランクインでしたが、世界ランキング2019では、ランクインした日本の大学の中で7位タイでした。2018では501–600位でしたが、2019では401-500位にランクアップしています。被引用論文(研究影響力)のスコアが13ポイント以上、上昇していました。
日本の大学は、他国の大学と比べ、論文に使用する言語の問題もあって被引用回数が少ない傾向にあります。しかし、その中でも英語での論文執筆に力を入れる大学が、世界ランキングの上位にランクインするといえるでしょう。