日本版ランキング2019における「国際性」分野の動向

 2019年3月27日に、日本版ランキング2019が発表されました。
 日本版ランキング2019は、「教育リソース」「教育充実度」「教育成果」「国際性」という4分野16項目で構成されています。4つの分野のうち、「国際性」分野は「どれだけ国際的な教育環境になっているか」を示し、指標は「外国人学生比率」「外国人教員比率」「日本人学生の留学比率」「外国語で行われている講座の比率」の4項目です。
 2018のランキングから、指標項目の変更はありませんでしたが、ランクインした大学に動きが見られました。

「国際性」で大幅にランクアップした大学

 日本版ランキング2019の「国際性」分野で、2018のランキングから大幅にランクアップした大学を、順位の上り幅が大きい順に3校ピックアップし、特徴的な取り組みを紹介します。

■北九州市立大学
 北九州市立大学は、日本版ランキングの「国際性」分野で2018年の122位から2019年は61位にランクアップしました。
 北九州市立大学は、海外の大学との大学間交流協定が94校あります。海外での活動の機会が豊富であるため、1学年の学生数が1,500人弱なのに対し、1年間で約130人が留学または海外研修に取り組みます。
 北九州市立大学のグローバル教育において特徴的なのは、留学準備のためのサポートです。北九州市立大学の国際教育交流センターでは、学生たちが昼休みに集まり、英語・中国語・韓国語などで会話を行う「インターナショナルカフェ」を週1回開催しています。「インターナショナルカフェ」では、北九州市立大学で学ぶ外国人留学生がコーディネーターとして各言語のブースである「カフェ」を担当しています。そこで、学生たちは実践的な外国語に触れることができます。
 また、北九州市立大学は、交換留学・派遣留学・語学留学で利用できる給付型の奨学金も提供しています。このように、学生たちが国際交流をしやすいしくみが整っています。
 北九州市立大学には、「Global Education Program(以下、GEP)」という副専攻もあります。これは、「北九州グローバルパイオニア」というプログラムの一環として設置されているものです。GEPに参加できるのは、大学での成績やTOEICの点数などの条件を満たした学生のみです。GEPを通じ、学生たちは、英語による授業や留学生とのコミュニケーション、必修の国際的な活動やインターンシップなどに取り組みます。このようなプログラムにより、学生は実践的な語学力はもちろん、コミュニケーション力やビジネススキルも身につけることができます。

■武蔵大学
 武蔵大学は、日本版ランキング2018の「国際性」分野では138位タイでしたが、2019版では78位と、100位以内にランクインしました。
 武蔵大学では、海外留学や海外研修以外にも国際交流体験の機会が豊富です。例えば、学生が留学生と共に、主に英語を用いて東京都内・近郊を巡る「ウォークアバウト」や、日本語禁止・英語のみで過ごす英語合宿「MITC」などがあります。特徴的な取り組みとしては、テンプル大学ジャパンキャンパス(以下、TUJ)との単位互換プログラムが挙げられます。TUJは、米国ペンシルベニア州立の総合大学であるテンプル大学の日本校です。TUJは、日本にありながら、学生の約6割が米国を中心とする外国籍であり、使用言語も英語という国際的な環境です。武蔵大学の学生は、科目等履修生または1学期以上1年以内の「留学生」として、TUJの授業を受けられます。
 経済学部には、ロンドン大学のパラレル・ディグリー・プログラム(以下、PDP)が設置されています。語学の成績や試験の結果などの基準をクリアした学生は、4年1か月の間、日本で学び、卒業後の5月の試験に合格すると、ロンドン大学の学位を授与されます。また、PDPの履修生は、全員が1年次の6~7月にフィリピンでの英語研修を行います。
 そのほか、学生サポートの一環として、「武蔵大学外国語学習褒賞・勧奨」があります。これは、外国語の試験で一定の成績を修めた学生に、奨学金や図書カードを贈るというものです。
このように、日本国内でも国際交流や外国語の運用能力向上を図る取り組みが、ランクアップの鍵となったのではないでしょうか。

■学習院大学
 学習院大学は、日本版ランキング2018の「国際性」分野で106位でしたが、2019版では52位にランクアップしました。
 ランクアップの要因として、2016年4月に、国際社会科学部が新設されたことが挙げられます。国際社会科学部は、国際的なビジネスで活躍できる人材を育成することを目的とし、4週間以上の海外留学が卒業要件に含まれています。
 国際社会科学部では、日本語で社会科学の基礎を学びます。段階的に、全て英語で学ぶ講義に移行するというカリキュラム編成のため、学生は無理なく着実に英語の活用能力をレベルアップできます。また、英語科目にはCLIL(Content and Language Integrated Learning、内容・言語統合型学習)の手法を取り入れています。CLILとは、外国語の新聞記事や論文などを教材に使用し、協同学習や異文化理解学習を取り入れながら、専門科目の内容と語学を両輪として学ぶ教育方法です。これにより、学生は、専門科目の詳しい内容について英語で学習でき、実践的な英語力が養えます。
 このような先進的な取り組みが、「国際性」分野での大幅なランクアップを後押ししたのではないでしょうか。

 「国際性」分野でランクアップした大学は、外国語の教育と、様々な形での国際交流の推進に積極的に取り組んでいます。日本版ランキング2019では、ランクアップした大学にも注目してみましょう。