学生調査からわかる日本の大学の傾向とは?

 カンファレンスには多数の大学関係者、高校関係者が出席しました。ランキングを作成したTHEからは、データ・解析ディレクターのダンカン・ロス氏が来日し、3年目となる「THE世界大学ランキング日本版」には、日本の大学の優れた側面を世界に知ってほしいとの意図があることをあらためて紹介。「高等教育界で人材、情報のボーダレス化が進む中、潜在的なリーチが世界35億人に上るTHE世界大学ランキングは、日本の大学の存在感を示す窓口になります」と述べました。

 2018版のランキングでは学生調査の使用は見送られましたが、2019版のランキングでは「十分な量の回答が集まった」ため、その結果がスコアに反映されました。調査項目は、先に学生調査を実施していたアメリカ版、ヨーロッパ版と同一のものを設定。大学の良さを直接的に問うのではなく、「教員との交流の頻度」「学習内容を実社会に応用するための支援」「友人や家族に対する大学の推奨度」など、様々な角度から具体的に問われています。

 ダンカン氏は、「日本、アメリカ、ヨーロッパでは文化的な背景が異なるため、単純な比較は難しい」と前置きしたうえで、3つの地域における回答の傾向を比較した結果について言及。「日本の大学は『教員との交流頻度』が比較的高く、『クリティカル・シンキングのスキルの成長』はフランスやドイツと同等という特色がある一方で、『授業における挑戦/やりがいの豊富さ』が低い点は改善の余地があります」と指摘しました。こうして明らかになった点が今後の大学改革でどのように生かされていくのか、気になるところです。

学生調査に反映された大学改革の成果

 カンファレンスでは、基調講演として、シンガポール国立大学首席広報官のオヴィディア・リム・ラジャラム氏が登壇しました。同大学は、THE世界大学ランキング2018で22位、同アジア大学ランキングで1位を獲得。講演では、特徴的な取り組みとして、すべての学生が入学後20年間にわたって学籍を保持し、卒業後も知識をアップデートできる講座を受講できることが挙げられました。そのほかにも、大学の評判を保ち向上させるために、学生や卒業生、寄附者らの意見を積極的に取り入れている施策の説明があり、日本の大学にも大いに参考になったことでしょう。

 日本版のランキングをサポートするベネッセグループからは、大学・社会人事業本部の藤井雅徳本部長が、指標の変更点、学生調査の概要について説明しました。「総合順位が近い大学や競合大学と、分野別のスコアを比べて、自学の特徴を見いだしてほしい」と提案しています。

 また、進研アド改革支援室の高坂栄一室長は、学生調査についての見解をコメントしました。2019版のランキングにおける学生調査の質問項目は、この10年で行われてきた大学改革の成果を測るものになっていると指摘。「例えば、質問項目にある『クリティカル・シンキング』という用語は10年前の大学ではあまり聞かれませんでしたが、現在は多くの大学のシラバスで目にすることができます。また『社会との接続』のスコアの高さからは、キャリア教育や産学連携が浸透したとうかがえます」と分析。日本の大学改革の進展をたたえました。