大学入試改革で何が変わる?

 大学入試改革により、2020年度(2021年度入学者選抜)から大学入学共通テストが始まります。これは、大学入試センター試験(以下、センター試験)に代わって新たに実施されるものです。学力の3要素である「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度(以下、主体性等)」を総合的・多面的に評価します。
 学力の3要素が入試で重視される背景には、社会のグローバル化や、AIやロボット等の出現による、産業構造や就業構造の転換に対応した人材の育成が、社会で求められていることがあります。そのため、共通試験も大学個別の入試も変わります。

大学入試改革による大学入学共通テストの導入
 大学入学共通テストは、実施期日(1月中旬の2日間)や出題教科・科目は現行のセンター試験と同じですが、これまでになかった取り組みとして「英語4技能評価」や「記述式問題」が導入されます。
 英語4技能評価は、「読む・書く・聞く・話す」の4技能を、民間事業者等が実施している資格・検定試験を活用して評価する仕組みが取り入れられます。各大学が入学者選抜に利用できる資格・検定試験は「大学入試英語成績提供システム」に参加している団体の試験です。受験生はあらかじめ入試で利用することを申請し、高校3年の4月から12月までの間に受けた2回までの試験結果を大学に提供します。大学入学共通テストの英語試験は、2023年度(2024年度入学者選抜)までは実施される予定のため、それまでの期間、各大学では、資格・検定試験と共通テストのいずれか、または両方を用いて選抜を行うようになります。
 また、記述式問題は、国語と数学(「数学Ⅰ」「数学Ⅰ・数学A」)で導入されます。国語は、80~120字程度の問題を3問程度、マークシート式問題と記述式問題の大問を分けて出題されます。数学は、大問の中にマークシート式と記述式の問題が混在する形で出題されます。記述式問題が新たに追加されるため、国語は現行の80分から100分程度に、数学は現行の60分から70分程度に試験時間が変更される予定です。

学力の3要素を総合的・多面的に評価する
 大学入試改革により、各大学では個別試験で、学力の3要素を総合的・多面的に評価する必要が出てきます。そのための個別試験では、入試区分の名称が、一般入試は「一般選抜」に、AO入試は「総合型選抜」に、推薦入試は「学校推薦型選抜」に変更されます。
 各個別試験の区分を見てみると、「一般選抜」では、学力の3要素のうち主体性等の評価に課題があるとの指摘があり、入試において調査書や志願者本人が記載する資料等(活動報告書など)の活用が推奨されています。逆に、「総合型選抜」や「学校推薦型選抜」では、「知識・技能」や「思考力・判断力・表現力」の評価に課題があると指摘されているため、小論文やプレゼンテーション、口頭試問、実技、科目試験、資格・検定試験、大学入学共通テストのいずれか1つ以上を活用し、受験生を総合的・多面的に評価していくことになります。

大学入試改革に沿った取り組み事例2選

 大学入試制度の改革にともない、各大学においてもさまざまな取り組みを始めています。九州産業大学と中京大学について、新たに導入された入試をご紹介します。

事前に講義を受ける「育成型入試」を導入した九州産業大学
 九州産業大学は、大学と高校生とのミスマッチを減らすために「育成プログラム」と「育成型入試」という制度を導入しました。「育成型入試」を受けるためには、「育成プログラム」の受講が必須です。
 「育成プログラム」では、高校生が学生に交じって九州産業大学で実際に行われている講義を受講、または実際の授業を収録したWeb模擬授業を受講します。その後、講義内容に関するレポートを提出し、面談において九州産業大学で学ぶ意欲や学びたいことなどが確認されます。また、面談結果は各生徒が所属する高校の担任や進路指導担当者に説明され、進路指導に役立ててもらうようになっています。
 この育成プログラムを終えた生徒のみ「育成型入試」を受けることができ、「育成型入試」では基礎テストや面接を行います。
 受験生は、「育成プログラム」と「育成型入試」を通じ、1人ひとりに適した学部学科の選択ができるようになります。一方、大学はそれぞれの「主体性のある学習意欲の有無」や「基礎学力」とアドミッション・ポリシーを照らし合わせ、合致した学生を獲得することができるため、大学側と高校生のミスマッチを解消できます。

グループディスカッションやプレゼンテーションを科目として課す中京大学
 中京大学は、2020年度からの抜本的な大学入試改革を見据え、学力の「総合評価」と学部の特色を反映した「高大接続入試」を法学部・国際英語学部・経済学部において実施しています。
 法学部には「基礎力評価型」と「リーダーシップ型」の2種類があり、「基礎力評価型」の場合、志願者は「基礎学力型」「法学的思考型」「活動実績型」から選択できます。注目される特徴の一つが、「法学的思考型」と「リーダーシップ型」の試験科目として課されるグループディスカッションです。受験生は、議論を通じて「思考力・判断力・表現力」と「主体性・意欲」を評価されます。
 また、国際英語学部は、学外ツアーへの参加を課し、課題テーマについてプレゼンテーションする「アクティブ型」入試を実施し、グローバル社会で活躍する素養や、問題解決過程における「学ぶ姿勢」「主体性」「協調性」を評価します。経済学部は「単位認定型」を導入、指定する講義の受講が必須となっています。受講後、試験に合格すると単位として認められます。
 中京大学では、これらの方法により受験生の主体性や意欲を含めた総合的な学力を評価し、各学部にとって多様な人材の獲得を目指しています。

 今回、ご紹介した事例のように、入学希望者の学力を総合的に評価するため、新たな入試方式を取り入れている大学も少なくありません。
 THE世界大学ランキング 日本版はさまざまな観点から大学の特徴を知ることができます。近年は大学の改革が進み、社会の変化に応じた新たな取り組みを始めるところが増えています。今後、ますます大学は人材育成の要となるでしょう。