国立大学の入試改革(外部英語検定試験)について

 「英語4技能とは何か?知っておくべき外部検定と入試活用事例」(2018年1月15日)の記事で、2020年度より、センター試験に代わって導入される「大学入学共通テスト」の英語試験と併存して、認定された民間の英語の資格・検定試験の活用が始まること、さらに、2024年度以降は、英語の試験がそれらの認定試験に一本化される見通しであることを解説しました。
 この民間の英語の資格・検定試験の最大の特徴は、従来の大学入試センター試験「英語」でも測定されていたリーディングとリスニングの技能に加え、スピーキングとライティングの技能についても測定されることです。つまり、2021年以降の大学入試では、より「英語を使う力」が測られるようになります。
 加えて、2018年3月30日に、国立大学協会は「大学入学共通テストの枠組みにおける英語認定試験及び記述式問題の活用に関するガイドライン」にて、2018年1月時点よりもさらに詳細な活用内容について発表しました。

 このガイドラインを読み解いていきましょう。
1.2024年度入試までは、共通テストの英語試験と資格・検定試験を併用。
①「聞く」「読む」力を測る、大学入学共通テスト(現行「大学入試センター試験」の英語試験にあたるもの)
②英語4技能それぞれの力を測る資格・検定試験(外部英語検定試験)
③大学独自の個別試験
 2025年度以降の入試に関しては引き続き検討されることとなっています。①の大学入学共通テストの英語試験を廃止し、②の外部英語検定試験の活用に一本化する見通しもあります。

2.活用方法は2パターン。2つのパターンを併用することも可能。
① 一定水準以上の認定試験の結果を出願資格とする。
② CEFR による対照表に基づき、新テストの英語試験の得点に加点する。
※CEFR(セファール):外国語の学習・教授・評価のためのヨーロッパ言語共通参照枠
 国立大学はどちらかの方法、もしくは両方を組み合わせて活用することを検討するようになりますが、その選択は、各国立大学・学部等が各自の方針に基づいて決定します。

3.「大学入学共通テスト」で利用が予定されている資格・検定試験は8種類。
 国立大学は、受験生の受験機会の公平性を保証する観点から、センターが認定した全ての資格・検定試験を対象とする方針です。なぜなら、入試で利用できる資格・検定試験を限定すると、受験スケジュールや会場の違いにより、生徒の受験機会が平等に与えられなくなる可能性があるからです。
 また、対象となる資格・検定試験を限定することによる受験生のとりこぼしは、大学にとっても好ましい事態ではありません。大学入試センターが参加要件をみたしているとする外部英語検定試験はケンブリッジ英語検定、実用英語技能検定(英検)、GTEC、IELTS、TEAP(PBT) 、TEAP CBT、TOEFL iBT、TOEIC L&R /TOEIC S&Wの8つです。

 大学入試での資格・検定試験の活用では、異なる試験の結果を共通の基準で見るために、成績表示にCEFRが用いられる予定です。
 複数の民間検定を評価基準として採用し、かつ、各検定のスコアを共通の基準で見るために用いられるのが、CEFRという指標です。一般的に、「高校卒業時にCEFRのA2~B1レベル以上をめざすこと」が求められています。国立大学を受験する生徒は、そのレベル以上を目安に学習に取り組むとよいでしょう。

各大学における英語入試改革の取り組み

 2021年度入試の改革に先駆け、2018年度の入学試験で、すでに民間の英語の資格・検定試験の結果を取り入れている大学があります。2018年6月現在、一般入試に外部英語検定試験を取り入れている大学は、私立・国公立大学合わせて65校あります(英語4技能 資格・検定試験懇談会調べ)。
 現時点では国立大学で、実用英語技能検定、GTEC、IELTS、TOEFL iBTの4つを導入している大学が比較的多く見られます。また、それ以外にもさまざまな民間の英語の資格・検定試験を独自に利用している大学もあります。
 このように、現段階では、大学によって、民間の英語の資格・検定試験をどのように位置づけているかが異なります。各大学が「どの資格・検定試験を活用するのか」「どのような方法で資格・検定試験の結果を活用するのか」については、各大学や各資格・検定試験の公式ホームページでこまめに確認しておきましょう。

民間の英語の資格・検定試験を取り入れている大学

 一般に、外国語の習得を目指す外国語学部などでは、入試のみならず、入学後の大学生活においても英語4技能の教育に積極的です。グローバル人材の育成をめざし、留学や就職などの将来を見据えた英語でのコミュニケーション力向上の取り組みに力を入れています。
 卒業生が外務省、国際機関、商社、メーカーの海外営業担当などで活躍する国際関係学部でも、将来的に必要となるスピーキングやライティングの能力が重視される傾向にあります。そうした学部では、入学試験で民間の英語の資格・検定試験を導入し、高校生のうちから英語のアウトプットを強化することを求めることが考えられます。
 そこで、THE世界大学ランキング日本版2018の「教育成果」分野のランキングにランクインした国立大学の中から、国際関係学を学べる学部を有し、入学試験における民間の英語の資格・検定試験を実施または計画していて、かつ、その詳細を公表している大学2校について、2019年度入学試験における民間の英語の資格・検定試験導入状況を見ていきましょう。

千葉大学
 千葉大学は、「教育成果」分野のランキング16位にランクインしています。
 千葉大学は「グローバル・日本・ローカル」という複合的視点から国際理解と日本理解の双方を備えた上で、俯瞰的視野、多元的な視点で物事を考え、日本独自の視点から課題を発見・解決し、その解決策を世界へ発信することができるグローバル人材の養成を目指す国際教養学部を有しています。また、卒業要件に「1回以上の海外留学」が入っているため、英語でのコミュニケーションが重視されていると言えます。
 2019年度入試において、千葉大学では国際教養学部の通常型入試(一般入試)を含むいくつかの学部の前期日程試験で、外部の外国語検定試験の利用を行う予定です。定められた外国語検定試験のうち、2016年1月1日以降に受験した1つの試験の点数を、個別学力検査の「外国語」の点数に反映します。
 点数の換算方法は、各外国語検定試験で基準が決まっています。例えばTOEFL iBTは、80点以上で個別学力検査の満点として換算され、それ以下で62点以上なら20点、42点以上なら10点が、それぞれ個別学力検査の点数に加算されます。学部によって得点換算が異なりますので、詳細は大学のホームページで確認しましょう。

秋田大学
 秋田大学は、「教育成果」分野のランキングで24位にランクインしています。
 国際資源学部では、1・2年次に英語特別教育プログラムI-EAP(集中大学英語)で英語の基礎力を養い、2年次以降の専門教育科目はすべて英語で行います。さらに、約4週間、海外で実習を行う「海外資源フィールドワーク」は全ての学生で必修です。国際資源学部はその名の通り資源学を学べる学部ですが、国際的企業・国際機関のあらゆるセクションで即戦力として活躍できるスペシャリストの養成をミッションとしています。学生がグローバルな舞台で働くためのスキルとして、英語のアウトプット能力の育成に積極的であることが考えられます。
 秋田大学では、2018年度の入学試験より、民間の英語の資格・検定試験の利用を始めました。2018年度入試では、国際資源学部の「英語」試験において、大学が定める5つの外部英語検定試験で規定以上の点数を取得したことを証明した生徒は、個別学力検査の「英語」を免除し、満点と換算して合否判定しました。
 満点換算の基準はTOEFL iBT 61点以上、TOEFL CBT 173点以上、TOEFL PBT 500点以上、TOEIC 730点以上、IELTS 6.0 以上、英検 準1級以上です。

 このほか、2021年度入試からの大学入試改革に向けて、いくつかの大学が段階的に民間の英語の資格・検定試験の導入を行っています。しかし、検討中の内容が多く、今後も変更などが考えられるため、各大学が出す公式の情報をきちんと調べることが必要です。
 大学入学共通テストに利用されるのは、高校3年生の4月から12月までに受検したスコアとされています。ただし、英語の習得には学習の積み重ねが大切ですので、早い段階から勉強し、「聞く」「読む」「話す」「書く」の4技能をバランスよく身につけることが重要になるでしょう。