4大学全体の順位帯は60~150位で2017と変わらず

 THE世界大学ランキング日本版2018(以下、2018版)における4大学の結果全体を見ると、総合ランキングが60~150位、「教育充実度」と「教育成果」に4大学ともランクインし、「国際性」には東洋大学のみがランクインするという構図で、これは2017版と同様です。
 ただし、各大学のランキングには変化がありました。4大学が位置する総合スコア40~50ポイント台には多くの大学が僅差でひしめき合っているため、スコアの数点の変動がランキングに大きく影響します。
 東洋大学は「国際性」のスコアを大きく伸ばし、2017版の76位タイから66位となりました。一方、日本大学は67位から82位に、専修大学は101-110位から121-130位に推移しています。駒澤大学は「教育成果」のスコアを急上昇させましたが、総合ランキングは141-150位で2017版と変わりませんでした。

留学生増加や海外留学促進により「国際性」が上昇<東洋大学>

 東洋大学の総合ランキングでの順位は、2017版の76位タイから2018版は66位に上昇。分野別スコアを見ると、4大学中で最も高い「国際性」のスコアを45.4から60.2へと急激に伸ばしています。
 さらに、東洋大学は2017年9月に発表されたTHE世界大学ランキングでも初のランクインを遂げています。世界からの認知度や信頼度では、4大学の中で一歩リードしていると言えるかもしれません。
 「国際性」に関する取り組みとして、東洋大学では留学生獲得強化を推進しています。2013年度には339人だった外国人一般留学生数は、2017年度には918人に増えました。
 外国人留学生の誘致は、日本人学生の国際交流や外国語学習にもいい影響をもたらします。例えば、白山・朝霞キャンパスの「English Community Zone(ECZ)」では留学生と会話やゲームを楽しめます。春休みには留学生とともに英語漬けの4日間を過ごす「English Camp」が行われます。
 また、日本人学生の留学については、留学プログラムだけでなく、留学に備えて英語のトレーニングを行うプログラムも充実しています。留学準備プログラムのLEAP(Learning English for Academic Purposes)では、T0EFLの攻略法、海外の大学で学ぶ際のノートの取り方、エッセイ(小論文)の書き方やディスカッションへの参加の仕方などを学ぶことができます。ただ留学することを目的にするのではなく、留学先でも充実した学修が行えるような、きめ細かいフォローが特徴的です。

学部ごとに特色を持つグローバル人材育成<日本大学>

 日本大学の2017版と2018版のスコアを比べると、総合スコアは55.8から53.1に。それでも、「教育充実度」は89.8(全体で33位タイ)と、高いスコア・順位を保っています。
 「教育充実度」は「グローバル人材育成の重視」「入学後の能力伸長」についての高校教員の評判を基にスコアを算出しています。
 日本大学では「グローバル人材育成の重視」に関して、全学対象の短期研修や交換留学以外にも、各学部がグローバル感覚を養う取り組みを行っています。例えば、経済学部の「Buddy Program」は、外国人留学生1人に対し学生4、5人が学習面・生活面をサポートする制度です。留学生とのふれあいを通し、語学や異文化を学べます。
 また、国際関係学部には、調査研究の一環として、中国、韓国、台湾、ロシアなどを訪れ、異文化交流や国際ビジネス現場を研修するゼミがあります。工学系の生産工学部では、世界を舞台に活躍するエンジニアになるために2年間かけて英語力やビジネススキルを鍛えるプログラム「Glo-BE」を実施しています。
 「入学後の能力伸長」に関連すると考えられる取り組みとして、日本大学が創立130周年を迎える2019年に向けて推進されている「“自主創造型パーソン”育成のための全学共通教育プログラム(仮称)」が挙げられます。これは、激しく変わりゆく時代の要求を満たす人材を、日本大学の理念である「自主創造」精神に満ちた「自主創造型パーソン」と位置づけ、その育成ための全学共通教育プログラムを構築するものです。
 将来的には、総合大学の利点を生かした幅広い科目の修得や、国語・英語・数学などの基礎的な学問分野、社会人基礎力などの社会人・市民として横断的に求められる能力を保証する教育プログラムの構築を目指しています。

初年次教育やアクティブ・ラーニングで学生の能力を引き上げる<専修大学>

 専修大学は2017版と同様に、2018版でも「教育充実度」と「教育成果」で高いスコアを獲得しましたが、どちらも昨年よりスコアを落とし、総合ランキングでは101-110位から121-130位にランクダウンしました。
 2018版での「教育充実度」のスコアは71.8で、「教育充実度」スコアを基にランク付けした分野別ランキング<教育充実度>では70位タイでした。「教育充実度」の評判調査項目の1つである「グローバル人材育成の重視」に関する特徴的な施策として、語学などの留学準備と実際の留学プログラムの両面からなる、ステップ別のプログラムがあります。留学準備の面では、国際交流センターが提供する留学支援プログラム「Language Skills Program(LSP)」が設けられています。これは、基礎・初級・中級・上級のレベル別に分かれた講座で、英語のほか、「留学生による異文化理解講座」「大学生からはじめる英会話講座」「グローバル人材育成講座」「最新ニュースで実践英会話」といった、コミュニケーションやグローバルスタディも学ぶことができます。
 実際の留学プログラムも、初級・中級・上級とレベル別に分かれているため、自分に合ったプログラムが選べるほか、無理なくステップアップを目指すこともできます。留学プログラムの中には「寮内留学プログラム」という、外国人留学生と同じ寮に住み、彼らのサポートを行うというものもあり、キャンパス内での国際交流の機会もあります。
 「教育充実度」のもう一つの調査項目である「入学後の能力伸長」に関する取り組みとして、高校と大学の学びがどのように違うのかを丁寧に教える「転換・導入科目」が初年次に設けられています。大学での学び方、施設の使い方、データ分析やキャリアデザインの基礎などを身につけておくことによって、その後の大学生活でより多くのことを吸収できるでしょう。
 さらに、学生の課題解決力や問題解決力を高めるために、全学でアクティブ・ラーニングを推進しています。中には、授業中に教員が出した質問にスマートフォンで回答し、その場で集計するというアプリを利用した授業もあります。これらの工夫が、学生数の多い私立大学でもアクティブ・ラーニングを行うことを可能にしています。

「教育成果」を高める、社会への視野を開く取り組み<駒澤大学>

 駒澤大学の2018版の総合ランキングは141-150位で2017版と変わりませんでしたが、総合スコアは38.6-39.5から41.5-42.5へと上昇。分野別スコアを見ると、「教育成果」が31.5から52.3へと大幅にアップしています。そこで、駒澤大学のキャリア教育に関する取り組みに注目してみましょう。
 在学中に仕事の現場を知る重要な機会としてインターンシップがあります。駒澤大学キャリアセンターが主催するインターンシップには、2017年度の夏、76社に175人が参加しました。そのほかにも、経済学部の「ビジネスインターンシップ」、グローバル・メディア・スタディーズ学部の海外インターンシップ(「海外演習実践講座」の一部)や、東洋大学、亜細亜大学、明治大学、青山学院大学と共催の1・2年生向けインターンシップ「Internship & Creationship Study」など、多くの機会が設けられています。
 また、就職支援については、ワンキャンパスの利点を生かした多様なプログラムがあります。1・2年生向けの「キャリア講座」、3年生の4割以上が参加する「就職ガイダンス」など、2017年度のキャリア教育講座は278講座に上ります。さらに、駒澤大学キャリアセンター公認の「駒澤大学就職活動支援団体クルーセイル」という団体に所属する4年生の内定者が、3年生に対してアドバイスを行うしくみも整えられています。学生は、身近な先輩たちと話して、キャリアセンター職員だけでは伝えることが難しい、就職活動に対する意識面や学生目線の情報を得ることができます。