世界の大学における学位取得にかかる年数の違い

 日本の大学には4年制の学部・学科と6年制の学部・学科があります。しかし、海外の大学では、その国の特徴を反映した制度が設けられ、日本の大学とは違いがあります。
 学位取得にかかる年数や学士課程の卒業要件は国によって異なります。いくつかの国の要件をみてみましょう。

■カナダ
 カナダの大学は、2年制大学と4年制大学に分かれます。これは、アメリカの大学と同様です。
2年制の大学は、カナダ国内に約170校あり、その多くが「コミュニティカレッジ」と呼ばれる州立大学です。コミュニティカレッジは日本での専門学校のように、特定の職業に向けた教育を行う学校がほとんどです。
 4年制の大学は、前半の2年間で一般教養を学び、後半の2年間で専門科目を学ぶというカリキュラムを取っている場合が多く、一般的に「ユニバーシティ」と呼ばれます。ユニバーシティで4年間の課程を修了すると、学士号を取得できます。
 カナダではコミュニティカレッジから4年制のユニバーシティに編入する学生が多く、コミュニティカレッジにもユニバーシティの前半2年間のような一般教養を学ぶ編入プログラムがあります。編入プログラムを修了すると、準学士号を取得できます。

■イギリス
 イギリスでは、多くの大学が学士課程を3年で修了できます。また、大学院の修士課程は1~2年、博士課程は最短3年です。
 日本より学士課程が1年短い理由は、大学での教育を専門科目に絞っていることにあります。イギリスでは、中等教育の最後に「シックス・フォーム」と呼ばれる課程に進み、大学で専攻したい分野の基礎教養を学びます。そして、シックス・フォームでの統一試験が、大学進学試験となります。
 そのため、日本などの外国からイギリスの大学に正規入学する際は、シックス・フォームの代わりに、約1年間のファウンデーションコースを修了する必要があります。

■マレーシア
 英国領時代の長かったマレーシアでは、大学の制度にもイギリスの影響が見られます。
 マレーシアの大学には、日本の短期大学に相当する「ディプロマ」と呼ばれる2年制の大学と、日本の学士課程に相当する「バチェラーディグリー」と呼ばれる大学があります。「バチェラーディグリー」の修了にかかる年数は学ぶ学問によって異なり、文系科目やIT系なら3年、工学系は4年、医学は5年です。さらに、バチェラーディグリーの一種に「オーナーズディグリー」と呼ばれる学位があり、通常のバチェラーディグリーよりも優等な学位とされます。オーナーズディグリーの取得には、マレーシアでは通常のバチェラーディグリーよりも数年長くかかることがあります。
 マレーシアでも、イギリスの「シックス・フォーム」と同様に、中等教育課程の中で基本的な教養を学ぶ「ファンデーションコース」という課程があります。ただし、ほとんどのマレーシアの大学では、日本の高校の卒業をバチェラーディグリーコースの入学資格として認めています。

早期卒業制度とは何か?メリット・デメリットを解説

 早期卒業制度は、4年制の大学であれば3年または3年半など、例外的に修業年限よりも短い期間で大学を卒業できる制度のことです。「成績が優秀であること」「ある時点での修得単位数が規定以上であること」などの大学が定めた要件を満たす学生が、早期卒業制度を利用できます。
 大学の審査により早期卒業の要件を満たすと認められた学生は、1学年上の先輩とともに研究室に入り、単位修得と並行して研究活動を行うというのが一般的です。
 中には、同大学の大学院に入ることを前提とした早期卒業制度もあります。

 早期卒業制度のメリットを紹介しましょう。
 まず、早期卒業制度を利用した学生は、大学に通う時間が少なく済むため、早く社会に出ることができます。例えば、大学院に進む場合でも、学士課程・修士課程合わせて5年程度で修了することが可能です。また、学士課程の途中で休学し、留学などを行う場合でも、早期卒業制度を利用すれば同学年の学生と同じ時期に卒業できる場合もあります。
 また、専門分野の講義や研究に早く関わることができることもメリットの一つです。同学年の他の学生よりも先に研究室に入ったり、大学院に進んだりできるため、早く専門分野を究めたい学生にとっては魅力的な制度だといえます。

 逆に、早期卒業制度にはデメリットもあり、早期卒業制度を利用する学生を最も悩ませる問題は、時間的余裕がないということです。一般的には4年間かけて履修する内容を3年間や3年間半に収めるため、早期卒業制度を利用する学生は、時間を効率的に使う必要があります。
 また、早期卒業制度の利用条件として「一定以上の単位数を修得していること」と「成績の平均が規定以上であること」が定められています。学生にとって単位を落とすことが制度を利用できなくなる要因になるため、単位修得に向けた勉強時間の確保が必要になります。
 そのため、アルバイトやサークル活動ほか、課外の活動にはあまり時間を割けないと考えてよいでしょう。

 ただし、これらのデメリットは、学生が時間を効率的に使い、優秀な成績を収めることにもつながります。研究や留学などの目標を持った学生には、早期卒業制度の利用も一つの選択肢です。

早期卒業制度を導入している大学は?

 THE世界大学ランキング日本版2018の「教育成果」分野にランクインした大学から、早期卒業制度を導入している大学を国立・公立・私立からピックアップ。それぞれの大学の取り組みを紹介します。

■宇都宮大学(国立大学)
 宇都宮大学では、早期卒業制度の要件を「本学に3年以上在学し、所属する学部の卒業要件とする単位を特に優秀な成績をもって修得したと認められるもの」とし、成績の平均、必要な単位の修得、卒業論文等の成績により早期卒業が可能になります。

■大阪府立大学(公立大学)
 大阪府立大学では、学域ごとに定めた規則により、早期卒業資格が認定されます。
 例えば、工学域では「本学に3年以上在学した者で、各課程の定める卒業要件として修得すべき単位を優秀な成績で修得した学生は、3年次末で早期卒業することができる」とし、3年間で学士課程を修了できる早期卒業制度を設けています。

■成蹊大学(私立大学)
 成蹊大学では、学部により規則が決められています。その中でも法学部では、早期卒業の条件として「3年次終了時において、本人が早期卒業を希望しており、かつ、大学院への進学が決定されていること」とし、大学院への進学が条件付けられています。

 このように、日本の大学であっても、早期卒業制度を利用することにより、学生は自分の将来設計に基づいて在学期間を短縮できる可能性があります。各大学の様々な制度について知っておくと、大学への理解がより深まりそうです。