アクティブ・ラーニングに積極的な大学は?授業の事例や導入方法

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アクティブ・ラーニングは学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称です。大学では、「課題を主体的に解決する力」を育てるため、積極的にアクティブ・ラーニングを授業に取り入れています。

課題解決型の学習方法が盛んに取り入れられる背景

 アクティブ・ラーニングの手法を用いた大学教育は、1960年代からアメリカで取り入れられました。大学の大衆化が進んだことにより、従来の講義形式の授業では十分な学修効果を期待できないという状況を打破するために、考え出された教育手法です。
 情報化やグローバル化などの社会的変化にさらされる現代の若者にとって、課題を主体的に解決する力は必須でしょう。さらに学生は、社会や企業から、主体的に問題に取り組み、解決していく能力が求められています。学生が求められている課題を解決する力を身に付けるために、日本の大学でも、専門的な知識を画一的に伝達するだけでなく、体験学習、調査学習、教室内でのグループディスカッション、グループワークなどのアクティブ・ラーニングの手法を取り入れた授業を数多く提供しています。

 文部科学省の調査によると、2011年度、初年次教育でプレゼンテーションやディスカッション等を取り入れた授業を行っている大学は7割ほどでしたが、2015年度にはおよそ8割の大学が能動的学習の手法を取り入れた授業を実施するようになりました。また、教員向けにアクティブ・ラーニングを推進するためのワークショップまたは授業検討会を実施した大学は半数近くに上ります。
 アクティブ・ラーニングの手法を用いた授業は学生の記憶に残りやすいという研究結果もあります。下の図は、ラーニングピラミッドと呼ばれるもので、それぞれの学習方法が学生の記憶にどれだけ定着しやすいかを表しています。ディスカッションやフィールドワーク、学びあいなどのアクティブ・ラーニングの手法を取り入れた学修方法の方が、講義形式での学修方法に比べて、学生の記憶への定着率が高いことが読み取れます。このように、学生の主体的な学びを促進することができ、学生の記憶の定着率も高い能動的な学修方法を取り入れた授業が行われる機会は今後も増え続けていくと思われます。

出典:The Learning Pyramid. アメリカ National Training Laboratories
出典:The Learning Pyramid. アメリカ National Training Laboratories


 では、実際に大学で行われているアクティブ・ラーニングの取り組みには、どのようなものがあるのでしょうか。THE世界大学ランキング日本版(以下、日本版ランキング)では、どれだけ教育への期待が実現されているかを示す「教育充実度」という指標があります。「教育充実度」分野で高い評価を得ている大学の中で、学生の主体性を伸ばすための取り組みを積極的に行っている大学をご紹介します。

関西大学

 関西大学では、 従来の授業者中心の授業から学習者中心の授業への移行を目指して、教員・職員・学生による三者協働型のプログラムが行われています。
 初年次学生向けPBL型科目「スタディスキルを身に付ける」は、ノートテイキングや情報検索、レポート作成などの基礎的なスキルから、プレゼンテーション・スキルまで修得することができる、少人数ゼミ形式の全学部共通科目です。
 この科目は、先輩の大学院生や学部生が、かつて受講生として授業を通して学んだ事柄を、ラーニングアシスタントとして他の学生に伝承する点が特徴的です。また、受講生の学習の支援をする学生スタッフと、教授の授業をサポートする学生スタッフの役割が明確に分かれているため、可能な限り多くの学生が主体的に学習に関わることができます。

芝浦工業大学

 芝浦工業大学は、文部科学省による「スーパーグローバル大学創成支援」に私立理工系大学で唯一採択され、THE世界大学ランキング2019でも、「国際性」分野で特に高いスコアを獲得しています。
 芝浦工業大学のカリキュラムの特徴として、4年間を通じて課題解決型のアクティブ・ラーニング科目が導入されていることが挙げられます。いつでもディスカッションができるスペースが学生に開放されているなど、学生がアクティブ・ラーニング手法を最大限有効活用できる環境も整っています。
 その他にも、国内外で展開されている海外協定校や企業を交えたグローバルPBL(Project Based Learning)では、海外協定校の学生とプロジェクトチームを結成し、専攻分野に応じた課題解決型ワークショップにメンバーで協力して取り組むことができます。
 このように、「国際性」分野で高い評価を受けている芝浦工業大学ならではのアクティブ・ラーニング科目を通して、グローバル人材に必要な能力を身につけられます。

龍谷大学

 龍谷大学の法学部は、2017年度からフィールドワークを伴う調査活動を行うアクティブ・ラーニング科目「法政アクティブリサーチ」を開講しました。「法政アクティブリサーチ」では受講生主体の積極参加型の授業が行われます。
 この授業では、学生が政府機関や自治体、企業でのアプローチやヒアリングを通してテーマに即した調査研究を行います。また、その学修成果は学内外に発信され、企業や行政などによって役立てられます。
従来、法学部の授業は座学が中心ですが、このようなフィールドワーク型の授業を取り入れることにより、実践的な知識を身に付けると同時に、社会人に求められるコミュニケーション能力や交渉能力も養うことができます。

 日本版ランキングのスコアとアクティブ・ラーニングなどの学生の主体性を伸ばす授業を提供するために改革に取り組んでいる大学に着目してみてはいかがでしょうか。