注目の集まる「子ども向けプログラミング教育」

 文部科学省は、新学習指導要領の実施に伴い、2020年度から小学校でのプログラミング教育を必修とすることを定めています。
 プログラミング教育に関して、文部科学省は、「情報活用能力」を、言語能力などと同様に「学力の資質・基盤となる能力」と位置づけています。具体的には、コンピューターで文字を入力するなどの基本操作や、コンピューターに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力の習得をめざします。
 また、プログラミングは将来、仕事で必要になる可能性が高いといった理由から、民間の子ども向けプログラミング教室の需要も高まっています。GMOメディア株式会社と株式会社船井総合研究所による調査では、2013年から2018年の間に、プログラミング教室の市場規模は13倍になり、2023年の市場規模は226億4,400万円に上ると予想されています。

子ども向けプログラミング教育を行う大学

 大学の情報分野での研究・教育ノウハウを生かし、子ども向けプログラミング教室の開催などによって、地域・社会に還元している大学を紹介します。

■早稲田大学
 早稲田大学には、初等教育を受ける1学年前の幼児から高校生までを対象とした講座を開設するコンピュータサイエンススクール「早稲田情報科学ジュニア・アカデミー」があります。「早稲田情報科学ジュニア・アカデミー」では、学習内容を「『プログラミングの技術』はもとより、現実の問題をどうプログラムで解決をするのか、そのために必要な情報科学の知識や実践スキルの礎を学ぶ」としています。
 講座は、早稲田大学などで教員や技術者としての経験がある講師陣が担当します。また、早稲田大学でプログラミングを学ぶ理工系の学生が、TA(ティーチング・アシスタント)として子どもたちをサポートします。
 小学生向けの講座として特徴的なものを紹介します。「Siv3D(シブスリーディー) for Kids-ワークショップ-ゲーム・アプリ開発者になってみよう!-」は、年長児から小学2年生までの子どもが、4種類の中から選んだゲームまたはアプリを制作する講座です。キャラクターや難易度をさまざまにカスタマイズし、オリジナルゲームに仕上げます。
 「Viscuit(ビスケット)親子ワークショップ-絵だけで簡単プログラミング-」は、小学校3年生から6年生までの子どもと保護者に向けた講座です。この講座のプログラミングは、文字を使わず、動物などの絵を組み合わせていくため、子どもたちは楽しくコーディング体験ができます。子どもたちは、この講座を通じ、アニメやゲームを制作します。
 実際のプログラミングに近い体験のできる「Enrect(エンレクト)体験講座-タッチ操作で簡単プログラミング-」は、小学3年生修了程度以上の算数の学力を持つ児童・生徒が対象です。タッチ操作により、子どもにも視覚的にわかりやすく、プログラミングの考え方を学べます。講座では、Enrectの開発者である鈴木遼さん(理工学術院在籍)が指導にあたります。

■電気通信大学
 「電気通信大学プログラミング教室」では、小学校5年生から高校2年生までに向けて情報教育を行います。教室では、電気通信大学の学部生も講師として教えます。
 教室の生徒の将来像は、「情報技術の専門家もしくは情報技術に強い何かの専門家」とされています。
 授業は、毎月4回、90分~120分間行われます。内容は、「Python、HTML、CSS、Linuxコマンドほか」「コンピュータサイエンスの基礎」「社会、技術、人物に関する情報提供」の3種類です。PythonはAIなどにも使われる人気のプログラミング言語、HTMLはWebサイトを作る最も基本的なプログラミング言語、CSSはWebサイトの見た目を形作るための言語です。また、LinuxはWindows10などと同じOSの一種で、主にサーバーやデータベースなどに活用されます。
 プログラミング教室は、生徒の理解度と関心に合わせて個別に学習を行うプロジェクト・ベースド・ラーニング(PBL)方式をとっているため、生徒が主体的に学ぶことが期待されます。
 2019年8月時点では、9時開始クラス、11時開始クラスそれぞれに、10人程度の小学生が参加しています。また、中高生も1クラスあたり15~25人程度が参加しています。

■埼玉大学
 埼玉大学STEM教育センターでは、ロボット技術やプログラミングを取り入れたものづくり教育に取り組んでいます。ロボット作りやプログラミングを使って研究に挑戦する「子ども研究員」とともに、「日本型STEM教育」について研究しています。
 STEMとは「Science, Technology, Engineering and Math」の頭文字をとったものです。STEM教育は、アメリカで2015年ごろから積極的に行われ、世界各国に広まりました。STEM教育の考え方では、これからの人材に必要なのは「知識を応用する力や情報を検証する力、問題解決能力」であり、その問題解決能力の養成のためには「科学・技術・工学・数学」を統合的に学ぶ教育が有効だとされています。
 STEM教育センターが行う「ロボットと未来研究会」は、小学1年生以上が対象です。入門コースの「ゲームクリエイター」では、視覚的にわかりやすい子ども向けプログラミング言語「スクラッチ」を使ってさまざまなゲームを作ります。また、「LEGOロボット入門―ロボみらセット―」では、「STEM Du Basicロボみらセット」を使って、プログラミングで動くロボットを作ります。さらに、パラパラ漫画形式のアニメ制作、レゴブロックを使ったオリジナルロボット制作などのコースもあります。
 また、提携する学童保育でロボットとプログラミングを学ぶ「ココカラKIDS」や、宿泊しながらロボット作りなどに取り組む「STEM CAMP」も開催しています。

 この記事で紹介した、早稲田大学、電気通信大学、埼玉大学の3校は、THE世界大学ランキング日本版2019にランクインしています。ぜひ、関連リンクよりランキングをご覧ください。