社会の変化によって再び注目を集めている「コミュニティ」

 「コミュニティ」は、共同体という意味を持ち、もともとは「地域社会など、構成員が互いに互いのことを知っていて、一体感を持っているグループ」のことを指す言葉です。しかし、現在では、学校などの組織やオンライン上のサークルなどにも「コミュニティ」という呼称が使われています。
 現在、地方創生や都市化、人口減少などの課題に直面し、「コミュニティ」の考え方が再び注目を集めています。
 総務省によると、2008年度から2017年度にかけて、オンライン・オフラインのどちらでもコミュニティに参加していない人は減少しています。特に、趣味などで地域を問わず交流できるオンラインコミュニティへの参加は大きく増加しています。
 また、国土交通省では、国土形成計画の中で、「大学等が、社会に貢献する人材の育成や、地域の連携拠点としての機能を果たし、また、大学等や大学生と地域のかかわりが継続的な活動につながるよう、その取り組みを促進」すると述べています。大学が地域コミュニティづくりの担い手の一つとして期待されているといえます。

コミュニティ・デザインが学べる日本の大学

 人と人のつながり方やその仕組みをデザインする「コミュニティ・デザイン」について学べる大学を紹介します。

■立教大学
 立教大学コミュニティ福祉学部は、1年生から4年生までの少人数ゼミナール(演習)が特徴です。また、「行動学習プログラム」として、企業はもちろん政府機関や国際NGOなどでのインターンシップ、福祉の専門性を生かして子どもたちやお年寄りとの交流プログラムを行う「東日本大震災復興支援推進室」の活動など、特色ある取り組みにも積極的です。
 コミュニティ福祉学部の学科は3つあり、社会福祉に関わる相談・援助を行う「ソーシャルワーカー」を養成する「福祉学科」、スポーツを通して健康と生きがい、コミュニティシステムなどについて学べる「スポーツウエルネス学科」、コミュニティを通して生活に関わる政策や社会福祉を考える「コミュニティ政策学科」です。さまざまな人の生活に寄り添うため、学部共通科目として、宗教や文化についても学びます。
 3学科の中でも、特にコミュニティ政策学科では、社会福祉の問題をコミュニティで解決することを学びます。例えば、子育て支援、不登校や少年非行への対応、被災者の救援、失業者への就労支援、健康づくりなどといった生活に関わる政策課題を、コミュニティ全体の問題ととらえ、支援するための仕組みづくりを考えます。
 また、福祉や地方自治、地域の課題をビジネスの手法で解決する「コミュニティ・ビジネス」などについても学ぶことができます。

■大阪府立大学
 大阪府立大学には、文理融合の現代システム科学域があります。現代システム科学域は、大阪府立大学における工学部、生命環境科学部、理学部、経済学部、人間社会学部、看護学部、総合リハビリテーション学部のすべての学びを融合したカリキュラムで教育を行います。
 現代システム科学域の「環境システム学類」では、持続可能な社会システム構築をめざした教育・研究を行います。環境システム学類は、さらに、生態系の中で人が自然と共生するシステムを研究する「環境共生科学課程」、心理学の面から人間と環境にまつわる問題を考える「人間環境科学課程」、異なる価値観を持った人との共生社会をめざす「社会共生科学課程」の3つの課程に分かれています。3つの課程では、専門性を養いつつ、課程の枠を超えた学修が可能なカリキュラムになっています。
 それぞれの課程において、実際の社会の事象をコミュニティの面から捉えなおす研究が行われています。例えば、「環境共生科学課程」の宮脇幸生教授は、エチオピア西南部の農牧民社会で伝統的な生活を営む人々のアイデンティティや社会変容について研究しています。「人間環境科学課程」の井出亘教授は、組織心理学の立場から、組織での人間の行動と動機付けについて研究しています。「社会共生科学課程」の工藤宏司教授は、不登校やひきこもりなどの現代社会で「問題」とされる行動について、なぜ人々がそれらを「問題」とみなすのかという視点から、社会問題や逸脱行動について研究しています。

■宇都宮大学
 宇都宮大学地域デザイン科学部は、理系分野を中心にした文理融合のカリキュラムが特徴です。従来の、社会科学を基盤とした地域づくりではなく、社会科学の素養も身に付けた建築都市や社会基盤のデザインの技術者のほか、理系のスキルで地域を調査分析できる「コミュニティ・デザインの専門家」を育成します。
 地域デザイン科学部のコミュニティデザイン学科では、地域社会の担い手として活躍できる人材の育成をめざしています。社会システム領域(公共政策、地方自治、社会システムマネジメント)、地域資源領域(ランドスケープ、ツーリズム、文化マネジメント)、地域実践領域(社会教育、福祉、多文化共生)の3つの視点を融合した学際的教育を行います。
 コミュニティデザイン学科のカリキュラムには、地域デザイン、地域コミュニケーション、まちづくり、社会調査法、公共政策、文化、観光、社会福祉など、コミュニティ・デザインに欠かせない多くの知識・スキルが学べる科目が満載です。
 また、地域デザイン科学部では、アクティブ・ラーニングにも力を入れています。地方自治体や民間企業などと連携して行われる「地域プロジェクト演習」では、3学科合同の小グループでディスカッションやフィールドワーク、プレゼンテーションを行います。学生は、将来、コミュニティにかかわる仕事をするために必要な協働のスキルを得ることができます。

 この記事で紹介した、立教大学、大阪府立大学、宇都宮大学の3大学は、THE世界大学ランキング日本版2019にランクインしています。総合ランキングだけではなく、どれだけ卒業生が活躍しているかを表す「教育成果」分野のランキングなど、すべての分野においてランクインしています。
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