学士課程教育の再編が「教育満足度」に影響

 今回のランキングで本学は、「国際性」が低く、「教育満足度」が高いという結果が出ました。総合順位を含め、外部からの評価として冷静に受け止めています。
 「国際性」のスコアについては、東北エリアの国立大としては平均的なレベルでしょう。以前から外国人留学生を増やす努力はしており、マレーシアやインドネシアからの留学生は増えていますが、中国人留学生が減っているため、全体としての数は伸びていません。しかし、山形県は電気電子工業、機械工業が盛んで、県内企業がベトナムやタイに進出するなど、グローバル人材育成に対する地元からのニーズが高いので、今後も「国際性」を高める努力を続けたいと考えています。
 一方で、高校教員への評判調査から算出される「教育満足度」は、高く評価されています。本学は2010年度から学士課程教育を見直し、教養教育を全学部共通の「基盤教育」として再構築しています。「基盤教育」では、「導入科目(大学で学ぶためのツールや社会人としての常識を学ぶ科目群)」、「基幹科目(“人間”と“共生”をテーマに学問的志向性を育む科目群)」、「共通科目(コミュニケーション・スキルやキャリア観などを修得する科目群)」などを配し、学生の実践力や社会人基礎力を高める教育に力を入れています。また、「導入科目」のテキストは本学が独自に制作しており、その内容は学内外から高い評価を得ました。こうした取り組みが、高校教員からの評価につながったのではないかと考えます。

高校教員、保護者との関係構築を推進

 このような本学での学びや研究の特長を知ってもらうためには、ステークホルダーへの情報発信も重要です。そこで「年間500校」を目標に掲げ、東北6県と新潟、栃木、茨城などの高校訪問を強化するほか、県内の高校に協力を呼びかけ、保護者が集まる進路講演会に参加しています。進路選択に影響力を持つ保護者に「大学での学びは、社会でどう役立つのか」を理解してもらうことが、伸び悩んでいる県内の国立大進学者数の改善に役立つと考えています。
 本学の基本理念の一つに、「不断の自己改革」があります。PDCAを回しながら改革を進めていきますが、その成果は長いスパンで出てくるはずです。ランキングに使われた指標が普遍的なものとは考えていません。そもそも指標は社会のニーズに合わせて変わっていくべきでしょう。ランキングは大学関係者のみが使うのではなく、小学生から高校生、そして保護者も「人生のプロセスとしての大学選び」に活用するものになることが理想です。

学長
小山 清人
小山 清人
こやま・きよひと
1949年和歌山県生まれ。1972年山形大学工学部卒業。1974年同大学大学院工学研究科修士課程修了。1974年山形大学工学部助手、1992年同大学工学部教授。工学部長、理事・副学長を歴任し、2014年より現職。工学博士。