東日本で「教育充実度」分野のランクを上げた私立大学は?

 THE世界大学ランキング日本版の指標の一つである「教育充実度」とは、「どれだけ教育への期待が実現されているか」を表します。実際にその大学に通う在学生への学生調査と、高校教員の評判調査の結果が指標化されています。
 「教育充実度」分野で上位に入る大学は、授業・指導の充実度はもちろんのこと、教員・学生の交流や、協働学修の機会の確保、学修を進める上でのサポート体制の整備などが評価されているといえます。
 2021年度の世界大学ランキング日本版において、「教育充実度」分野のランクを上げた東日本の私立大学は、21校ありました。
 そこで、その21校のうち、大幅に順位を上げた3校をピックアップしてご紹介します。

教育充実度の順位が上昇した大学の取り組み①共愛学園前橋国際大学

 共愛学園前橋国際大学は、「教育充実度」スコアが66.2で、76位でした。2020年度から33位上がり、100位以内にランクイン。東日本の私立大学の中で、最も大きく順位を上げた大学です。
 「学生中心主義」「ちょっと大変だけど実力がつく大学」「地域との共生」をモットーにしており、学生一人ひとりへの手厚いサポートと、地域と一体となった教育が特長です。
 中でも教育の手厚さには力を入れており、3割の授業が10名以下の少人数クラスになっています。さらに、7割以上の授業が、アクティブ・ラーニングを取り入れた主体的・能動的な学びを実践しています。
 アクティブ・ラーニングや学生同士の交流の場となるのが、「KYOAI COMMONS」という校舎です。学生にとって学びやすい建物にするため、設計段階から学生が参画。2012年には、GOOD DESIGN賞を受賞しました。まさに、同大学の象徴のような存在だといえます。通信環境やカフェ、ミーティングスペースなどが整っており、多様な活用が可能です。
 この「KYOAI COMMONS」を拠点に、学生、教職員、学園内の園児、児童、生徒、地域の人々と交流しながら、学生主体のプロジェクトや学修が進められています。校舎内には相談役も常駐しており、学修や施設利用について質問することができます。
 このように、学生が主体となり、協働で学修できる環境が整っていることが、高い教育充実度につながったと考えられます。

教育充実度の順位が上昇した大学の取り組み②東北公益文化大学

 東北公益文科大学は、「教育充実度」スコアが60.5で、112位でした。先にご紹介した共愛学園前橋国際大学に次いで順位が上がっており、2020年度から27位上がりました。
 同大学は、日本初の「公益学」を学ぶ大学として知られています。教育、研究に当たっては、「公益の視点」から教養や専門性を身に付け、議論するという特色があります。
 現在注目されているのが、2021年4月から行われている教育改革です。異分野連携を推進する人材の育成強化に向け、「データサイエンス・AI教育プログラムの導入」「ダブルメジャー制の導入」「課題解決に必要なスキルを全員が共通で身につける」の、3つのカリキュラムの機能強化を図っています。
 これらのカリキュラムの強化によって、学生は、データ活用のスキルや、複数の分野の知識取得や連携、思考法やプレゼンテーションのスキルといった、今後社会で必要となる基礎力を培うことができます。
 そして、この基礎力の発揮の場、応用の場として、地域の課題解決を実践する「プロジェクト型応用演習」や、企業や地域から提示された課題に対してチーム単位で取り組む「競争型課題解決演習」、インターンシップなどの演習が、多数展開されています。
 このように、ほかの学生と協働しつつ、学校の枠を出て、自分の力を試せる環境が、学生の学修意欲や満足度につながっているのでしょう。

教育充実度の順位が上昇した大学の取り組み③北星学園大学

 北星学園大学は、「教育充実度」スコアが60.2で、114位でした。2020年度から18位上がっています。
 同大学はグローバル人材の育成に力を入れており、米国ルイス&クラーク大学との姉妹校提携が50年以上続いています。ほかにも、アメリカ・カナダ・ヨーロッパ、アジアなど、15校以上の海外の大学と連携しており、毎年20名~30名ほどの学生が留学しています。各国からも、1年間を通して70~80名の留学生が訪れており、日常的に多文化交流ができる環境です。自由な留学が難しいコロナ禍においても、留学経験者によるオンラインセミナーやオンライン留学体験などが開催されており、継続して、海外に開かれた環境づくりが行われています。
 学生が自主的に学修・創作活動を行える「ラーニング・コモンズ」も完備されており、用途に合わせて選べる6つのエリアがあります。ラーニング・コモンズは、大学の学びに役立つスキルが学べる「学習セミナー」や、教員が学生をマンツーマン、1対複数で指導する「個別学習支援」など、さまざまな学修支援の場にもなっています。
 また、同大学の特色あるサポート体制のひとつに、学生同士の学びあいやサポートを行う「北星ピア・サポーター」の存在が挙げられます。これは、教職員と学生が協働し、学生を支援する制度です。時間割の組み方や学修の進め方などをサポートし合えるため、日々の学校生活にしっかりとついていくことができます。
 このように、国際的な交流に挑戦できることや、学生や教員同士のサポート体制が整っていることから、学生がやりがいや充実感を得られているのではないでしょうか。