世界を見据えた教育でアジア屈指の大学として
亜細亜大学の国際化への歩みは、1955年の大学設立と同時に始まった。正確にはその前年、香港から96人という、他大学に類を見ない規模での留学生の長期受け入れを行ったことに端を発している。以来、亜細亜大学はその名が表すとおり、アジアを代表する大学を目指し、グローバル社会に貢献できる人材の育成を最大のミッションとして教育研究の体制を整えてきた。
2012年度から5年間にわたり、文部科学省「経済社会の発展を牽引するグローバル人材育成支援」事業に採択された、「行動力あるアジアグローバル人材の育成」プロジェクトもその一つだ。ネイティブスピーカーによる英語の少人数授業をはじめ、約6人に1人が参加する多彩な留学プログラム、海外で現地調査を行う多文化フィールドスタディ、学んだスキルを国内外の実社会で試すインターンシップ、さらには、それらの経験を「夢」につなげるためのキャリア支援に至るまで、取り組みは多岐にわたり、極めて実践的である。
もちろん、建学当初からの伝統である“内なる国際化”にも努めている。「外国人が当たり前にいる環境で過ごすことにより、学生たちは異文化に対する壁をごく自然に乗り越えてくれますね。こういった環境整備や、数々の取り組みが奏功して、日本版ランキングでの高順位につながったのだと自負しています」と、栗田充治学長は語る。
語学力の向上だけに終わらないタフな留学プログラム
グローバル人材育成における先進性を象徴している留学制度が、「アメリカプログラム(AUAP)」である。1988年に始まり、30年間で1万4000人近い学生を送り出してきた。
AUAPの目的は、文化や価値観の違いを理解し、世界を舞台に渡り合える知恵と能力を身に付けること。そのため、出発の約半年前から英語力を含む準備を整え、留学中は受け入れ先の学生と机を並べてアメリカの社会や文化を学び、地域の社会活動にも参加する。さらに、現地の学生と2人1部屋のルームシェアで寮生活を送り、異文化の中で暮らす感覚を染み込ませる。語学力に自信のない学生でも臆することなくチャレンジができる。
国際交流委員長を務める岡村久和教授によれば、密度の濃い5カ月間の体験で学生たちは見違えるほどタフな人間に成長するという。参加した学生のTOEIC®スコアが平均130点上がり、300点以上アップすることも珍しくない。だが、そうした数値以上に、「文化や習慣は違っても人間の本質は同じであることや、自分の考えを明確に表現することの大切さを知った経験が大きい。それが、プレゼンテーション重視の最近の就職面接などにも生きているように感じます」と、岡村教授は話す。
このAUAPの強みをさらに押し上げるため、岡村教授らは今、大改革を進めている。留学前の研修と留学後のフォローアップ教育を徹底させた、実社会で通用するグローバルスキルの習得を目指すプログラムである。
海外での学びとキャリアを結び学生の生涯を応援する
他にも、15カ国・地域の16大学から留学先を選ぶことができる「グローバルプログラム(AUGP)」や、現地教育とインターンシップを組み合わせた「アジア夢カレッジ─キャリア開発中国プログラム(AUCP)」など、亜細亜大学はキャリアにつながる多彩な海外体験のチャンスにあふれている。
例えば、都市創造学部の場合、2年次後半の約半年間、アジアを中心とする各国で英語とその国の言語を学ぶとともに、現地企業でインターンシップを経験する。産業と社会の観点から都市のあり方を探るシティサイエンスという学問を追究するこの学部では、実際にその都市に身を置いてみることが極めて重要な意味をもつからだ。
亜細亜大学では、2016年の創立75周年を機に中長期計画「アジア未来マップ2025」を発表した。そこには、アジア交流の拠点として社会に貢献し、学生の「個性値」を伸ばすとともに、その生涯にわたって応援することを誓う決意が示されている。
「本学における取り組みは、すべてその一点に向かって動いています。これからの時代、AI(人工知能)が処理する膨大なデータ分析の結果に意味を与え、社会を動かすことができるのは、真の教養と知恵をもつ人間でしょう。本学からその主役を送り出したい」。それが栗田学長の願いである。(2018年3月取材)