「学生が主役」のきめ細かな支援
外国語学部と経済学部から成る麗澤大学は、1 学年約600 人という学生の顔が見える規模。建学以来、"人間力"の基盤となる「道徳教育」「人格教育」に力を注いでおり、一人ひとりに向き合う教育をモットーとする。その地道な教育活動が、THE世界大学ランキング日本版(以下、日本版ランキング)での上位ランクインにもつながっている。
学則に「世界的・国際的識見を備えた有能な人材を養成する」を掲げる麗澤大学では、また、「海外にはばたく」ための教育も一貫して行ってきた。そのことが、日本版ランキングの「国際性」でトップクラスのランクを獲得した要因であると、国際交流センターの犬飼孝夫センター長は自信を示す。
外国語学部で見れば約3人に1 人が留学を経験するという実績の背景には、留学しやすい環境や仕組みづくりがある。それらの最大の特徴は、手間をかけ、留学派遣業務のほぼすべてを自前で行っていることだ。専門会社に委託をすれば大学の負担は軽減するだろう。だが、それでは教育の成果が見えにくくなるため、教職員が自らプログラムを練り、PDCAサイクルを回して洗練させていく。
多言語習得を目的としたクロス留学はその一つだ。ドイツや中国など非英語圏に留学し、日常生活ではその土地の言語を学び、文化や歴史を味わい、大学では英語を学ぶ。一度の留学で多言語・多文化に触れられるレベルの高いプログラムとして学生からも人気が高い。
学生サポートには全教職員がかかわる。教員には学生の顔写真や出身校名入りの名簿を配布するうえ、大学では珍しい担任制も敷く。担任教員は学期ごとに面談し、学生の成長に寄り添う。
留学先を決めるときもじっくり面談をして、要望を聞くことも重視している。「留学費用がネック」という声には、学費負担が少ないドイツ、台湾、タイや韓国などへの留学ルートを開発してきた。さらに、「ネパールで減災教育を広めたい」といった学生発案のボランティア活動や海外インターンシップにも、大学として支援を行う。
国際交流センター主任の片山大輔さんは、「学生が主役になれる大学でありたい。それこそが顔が見える小規模大学ならではのメリットですから」と話す。「自分にぴたりと合った留学ができると、どの学生も自信をつけて、驚くほど実力が伸びます。偏差値ならぬ“ 伸差値”です」と、犬飼センター長も目を細める。
国際性の質を追求するキャンパスの「多国籍化」
もっとも、全学生が留学できるわけではない。そこで要となるのが、学内の国際化だ。2013 年に5 年計画のグローバル化ビジョンを策定した際、12.5%だった外国人留学生の割合を、2017 年度には16%に引き上げた。
「留学生の受け入れはアジアからの学生に偏りがちです。しかし、それでは真の意味で国際性とは言えません」(片山さん)。そのため麗澤大学では、北欧やアフリカなども含め、約30ヵ国・地域から留学生を受け入れ、さまざまな国・地域の言語や文化が行き交うキャンパスをつくっている。教員の多国籍化も図ってきた(2017 年現在は14ヵ国)。
同時に、多国籍化した学生・教員が交じり合えるような仕組みもある。「小さな地球」をコンセプトにしたキャンパスでは、英語のネイティブスピーカーといつでも交流できる「iLounge」をはじめ、インターナショナルフロア「iFloor」を展開している。
良きパートナーとして生涯付き合う
常に世界に目を向ける麗澤大学の教育は、就職においても好実績をもたらしている。海外経験を生かしてグローバル企業で活躍する卒業生も少なくない。片山さんは「異文化理解力や幅広い教養は、社会人としての基礎力。本学のグローバル教育はその点で就職にも直結しています」と強調する。
だが、就職はゴールではない。生涯を見据えたキャリア開発が、麗澤大学の流儀である。1年次からキャリア教育に取り組み、2年次、3年次と自己分析をステップアップさせながら、「本当に本人がやりたいことは何か」を探るために全員と面談する。小規模大学ならではの手厚い指導。その積み重ねが、「教育成果」分野でのランクインにもつながったのだろう。
「私たちが目指すのは、学生たちの生涯にわたる良きパートナー。常に支えとなる存在でありたい」と、犬飼センター長は熱い語り口で話を終えた。