100周年に向けて国際化戦略を展開

日本版ランキングで、桜美林大学は国際性と教育充実度で高いランクを得た。特に、分野別でトップ50 に入る「国際性」は、データからその取り組みや成果をはっきりと追える。「学べる言語数=18(2018年度)」「外国語だけで進行する授業数=168科目(2016年度)」「外国人教員=138人(2018年度)」「海外の提携機関=34か国・地域で160以上(2018年度)」「年間の海外留学・研修参加学生=746人(2017年度)」などがあり、留学派遣数は全国770 校中7 位(「大学ランキング2019」朝日新聞出版)を誇る。

そうした実績をベースに、さらなる国際化への大学改革に取り組んでいる。創立100 周年を迎える2021 年に向けた「長期ビジョン」では、「豊かな教養を持った国際的人材を育成する」などを目標に掲げ、実現のため、国際化戦略「REDEMPTION21」を立てている。これは、Research(研究)、Education(教育)、Diversity(多様性)など強化すべき10 項目をリストアップしたもので、ゴールには、「学生の25%程度が外国籍」「英語による授業科目数を185 科目程度に増やす」といった具体的な数値を挙げる。

目標に向けた取り組みは多彩だ。例えば、海外校との行き来を容易にする「セメスター制度」を設けている。留学プログラムが豊富で、学内の国際交流も盛んだ。留学生の受け入れも、日本語指導の充実、宿舎の整備、奨学金制度、渡日前入試など、ただ受け入れの枠を用意するのではなく、充実した留学生活を提供できるよう配慮している。こうした環境整備で、日本人と留学生が豊かに学ぶキャンパスの国際化を目指す。

創立100周年に向け、さらなる国際化への大学改革に取り組む。
創立100周年に向け、さらなる国際化への大学改革に取り組む。

「世界から人が集まる大学」を目指す

桜美林大学が国際化を推し進めるベースには、建学の精神がある。創立者はキリスト教宣教師でもあった清水安三。清水は大正期に中国に派遣され、1921 年に北京で日本人・中国人・朝鮮人を分け隔てなく受け入れる学校「崇貞学園」を作った。桜美林大学では、「崇貞学園」を源流と定めている。

自身も桜美林大学卒業生で、在学中には創立者と交流したという畑山浩昭学長は、「そもそも国際化の概念が多くの大学とは異なっている」と語る。

国際化というと、日本人の学生をベースに考えがちだが、桜美林大学では、さまざまな人種・国籍の人たちが共に学ぶところから始まっているのだ。

多国籍の学生が集まる環境では、同じことを学んでも、さまざまな立場から多彩な意見が出てくる。そこで、「ああ、そういう考え方があるのか」という気づきが生まれ、授業も、学生個人の内面も活性化してくる。桜美林大学が「世界から人が集まる大学」を目指しているのは、そうした環境を維持するためだ。

多様な人種・国籍の人が共に学ぶ場が桜美林大学のあるべき姿。
多様な人種・国籍の人が共に学ぶ場が桜美林大学のあるべき姿。

社会に貢献する人材を生む学びの数々

そうした環境の中で、20 歳前後の若者たちはどんどんと変わっていく。桜美林大学の教育は、日本版ランキングにおいても、「入学後の能力伸長」を含む高校教員からの評価で高得点を得た。

この「能力伸長」においては、同校には先駆的な取り組みがある。10 年ほど前に完全導入した「学群制」だ。学部や学科という枠組みにとらわれず、自分の学びたい授業を能動的に受講できるこのシステムは、教員が「この子はこんなふうに変わったのか」と驚くような、多様な学生の成長をもたらした。

学びの本質的な価値を、「発想が自由になる」ことだと、畑山学長は語る。知ることで、考えや行動が広がっていく。学群制による幅広い学びの中で、学生たちに自分の行くべき道を見つけていってほしいのだ、と。

また、社会の変化のスピードが速く、働き方も多様になった現代では、一人がさまざまな分野に関わるようになってきている。そんな中で活躍していくには、複眼的に考察し、物事に柔軟に対処できる資質も必要だ。その面でも、学群制は有効だと言う。

さらに、理念とする「学而事人(がくじじじん)」(=学びて人に事つかえる)を実践する取り組みとしては、「サービス・ラーニング」のプログラムが挙げられる。地域貢献活動、被災地支援、インターンシップといった活動で学んだことを社会に役立てる取り組みで、これもまた、「能力伸長」を促す学びの一つだ。

畑山学長は、桜美林の教育を信じてほしいと願い、「学生たちは4年間で非常に変化します。桜美林で伸びると思う子がいたら、ぜひ送ってほしい。高校と一緒になって、その子の可能性を見ていければと考えています」と語る。

地域貢献事業やインターンシップが単位化されるサービス・ラーニング。
地域貢献事業やインターンシップが単位化されるサービス・ラーニング。
学長
畑山 浩昭
畑山 浩昭
はたやま ひろあき
1985年 桜美林大学 文学部 英語英米文学科 卒業、2001年ノースカロライナ大学グリーンズボロー校 大学院博士課程修了。米国 ノースカロライナ州立大学シャーロット校 外国語学部 助手等を経て、1997年桜美林大学 国際学部 講師に就任。国際交流センター センター長、学長補佐、学園長補佐等を経て、2018年4月より学長に就任。文学博士。