人々とのかかわりが育む「対人力」と「行動力」
秋田大学は、国際資源学部、教育文化学部、医学部、そして理工学部の4学部と大学院4研究科を有する国立大学。日本版ランキングでは、分野別の教育成果で37位にランクされた。背景には、地域社会との接点を大切にした教育の実践がある。地場の産業や経済とリンクしたり、地元の人たちと一緒に行ったりするPBLの機会が、秋田大学には潤沢にある。
教育文化学部の学生は、地元企業やメディア等とともに、地域の魅力向上に取り組んでいる。また、医学部の学生も地域に出向き、保健・医療・福祉関係者や、地元住民との対話を通じて、地域医療に何が期待されているのか、ひとつひとつ「気づき」を積み重ねながら、地域とのつながりを強くしている。
2016年にオープンした地方創生センターでは、地域協働・防災と地域産業研究の分野で、多彩なプロジェクトが進んでいる。学部横断的に有志学生が参加し取り組んだ無農薬米の栽培や、秋田大学オリジナルブランドいぶりがっこの製品化などは、文字どおり、地元の生産者や農家とのコラボレーションの賜物だ。
地域の人たちとの協働の中で、学生たちは対人力や行動力を自然と身につけていく。「地元での経験をもとに、卒業後も秋田に残って活躍する若者が増えるとすればうれしい」と、山本文雄学長も期待を寄せている。
「国際資源学部」を筆頭に英語教育の底上げも着実
国際性の指標分野にも、今後の伸長を予感させる要素が多い。その1つが2014年に誕生した国際資源学部だ。
秋田鉱山専門学校を起源とする秋田大学は、資源に関する教育研究に100年以上の歴史をもつ。しかも、資源の調査から安全にプラントを閉じるところまで、あらゆることを教えられる大学としては国内唯一といってもよい。
その積み重ねた知見を礎に、国際資源学部は開設された。資源輸入の安定化、資源国への技術教育支援、国際的な人材育成など、テーマや使命はグローバルかつ多岐にわたる。この分野で世界的なハブ大学を目指す布石として、世界各地にオフィスをつくり、現地大学とのネットワーク構築や留学生の受け入れを進めてきた。また、国際資源学部の学生も3年生の夏休み以降、全員が約4週間の海外資源フィールドワークを通して、世界の現場を体験する。
国際資源学部では英語は必須だ。2年次以降の専門科目の授業はすべて英語で行われ、教養課程では、学部独自の集中英語教育プログラム(I-EAP)で基礎力を養う。
一方、全学的な英語教育の底上げも順調だ。外国人教員や留学生と自由に話せるALL Roomsの設置、TOEIC対策、短期海外語学研修と、恒常的に英語を学び続ける仕組みを「イングリッシュ・マラソン」と位置づけて運用。2017年のスタートだが、学生によってはTOEICスコアが300点前後アップするなど、すでに目に見える成果を上げている。
関係機関と連携して、高齢化時代の課題に挑戦
秋田大学では、県の健康長寿日本一を目指して、県や秋田県医師会との連携のもと、高齢化をめぐる課題の解決に向けた取り組みにも力を入れている。中心となるのは、「秋田大学高齢者医療先端研究センター」だ。老化関連疾患の原因・治療・予防に関する研究のみならず、地域社会学的知見を取り入れて秋田県特有の課題をあぶり出していく。それらに対する交通・環境・文化などの多面的なアプローチで、地域包括ケアや医療資源の適正配分といった幅広い研究を進めている。
医理工分野の教育・研究では、東京工業大学、秋田県医師会との三者間連携で形成する「長寿・健康研究教育拠点」も特筆される。東京工業大学のブレインマシンインターフェース(BMI=脳の活動により機械を操作する身体代替技術)や人工筋肉技術を秋田大学医工連携事業と融合することで、新たな医療機器の開発プロジェクトが進行中だ。
「地方の大学は、あらゆる領域で地元のオピニオンリーダー的存在であるべき」と山本学長はいう。若者はIoTやAIとともに、未知のSociety 5.0(政府が科学技術政策で提唱する未来社会)を生きていく。入学時の偏差値はまちまちでも、卒業時には全員が自信と誇りをもって社会に羽ばたけるよう、各学問領域の基礎力と、実社会で応用する力を育てたい。それが地域にしっかりと根差した国立大学、秋田大学の変わらぬ思いだ。