教育成果で高ランク 秘密は初年次教育にあり

創価大学は、日本版ランキングにおける教育成果の指標で63位タイという高ランクを得た。教育成果の指標は企業の人事や研究機関による評判調査であり、多くの上場企業や国際企業への就職実績と併せて見ると、創価大学の卒業生が社会で広く活躍していることが見て取れる。馬場善久学長はこの結果を受けて、「学生・卒業生が頑張ってくれている証」と目を細める。

この成果はいかにして生まれるのか。秘密は、きめ細かな初年次教育プログラムにある。「大学では、自ら明確な目的意識を持ち、進んで学ぶ姿勢がより求められる。大学での4年間、さらには社会に出てからも学び続けられる『自立的学習者』に育って卒業して欲しい」と、馬場学長はその狙いを説明する。

そのために創価大学では、初年次に教えられるべき内容を定め、教科書・教材、試験、評価基準などを統一した。英語をはじめとする外国語、基幹科目については、講師陣が学生の成績や教材、指導法などの情報を共有し、すべての学生が高いクオリティの授業を受けられる環境を整えている。

「海外も含めた他の大学で教えられている内容を意識し、選りすぐった授業科目を計画しています。本学の学生に合った内容をきちんと教え、一人も置き去りにせず、一人ひとりの成長、伸びしろを大切にする教育を行っています」と馬場学長は話す。

海外のコンテストに自主的に参加し世界と交流を図る学生たち。
海外のコンテストに自主的に参加し世界と交流を図る学生たち。

約5割が海外留学 国際性で20位を獲得

さらに、すべての1年生は「初年次セミナー」に参加する。学生十数名が一つのクラスのようなラーニング・コミュニティーを形成し、週1回講義を受ける。担当教授は、アカデミック・アドバイザーとして学生たちのさまざまな疑問や相談事に応える。

入学直後、周りは知らない学生ばかりでも、初年次セミナーに行けば顔なじみの仲間と一緒に勉強できる。そのような孤立させない環境づくりに力を入れてきた。

もう一つ特徴的なのは、1年次に必修の「学術文章作法」の授業だ。大学では論文、レポートなど、さまざまなタイプのアカデミックな文章を書く。この授業を通じて学術的な文章を書く手順やルール、論の組み立て方を学ぶ。

「自分が物事をどこまで理解しているのか、あるいは理解していないのか、文章化して初めて分かります。書くことは、思考力の根幹をなす技能なのです」と馬場学長は説明する。

こうした綿密な初年次教育で培われる学びの質はさまざまな面で奏功し、国際性で20位獲得と着実に成果を上げている。2014年に採択された文部科学省「スーパーグローバル大学創成支援(SGU)」での高評価もその表れだ。2017年度の中間評価では最高の「S」を獲得。「学生の海外派遣の拡大」を事業の一つに掲げ、年間約800名(1学年の約5割)の派遣実績を達成。2023年にはほぼ全学生にまで拡げる計画だ。

馬場学長は、「初年次に身につけた自ら学び行動する姿勢は、3・4年次の専門性の高い学びにも役立つ。そこで物事を突き詰めて考えて問題を解決へと導く経験が、ビジネスの世界でも生かされているのではないか」と教育成果で高い結果を出した要因を分析する。

共に学ぶ仲間が見つかる環境づくりにも力を入れている。
共に学ぶ仲間が見つかる環境づくりにも力を入れている。

創立50周年の節目に向け「創造的人間」を育む大学へ

創価大学は2021年に創立50周年を迎える。2010年に発表した「創価大学グランドデザイン」では、創立50周年のあるべき大学像を「『創造的人間』を育成する大学」と定めた。

人類が直面する個々の問題に知恵を発揮し真摯に取り組む「創造的人間」。その基礎をなすのは「知力」と「人間力」であり、これらを鍛える中で自己の可能性、すなわち「自分力(学生一人ひとりが有している可能性)」を見いだし、世の中に新しい価値を創り出す。

創価大学の定義する「知力」とは「読む・書く・聞く・話す」力を基礎とした「分析する力・統合する力・創造する力」。「人間力」とは「信念を実践的に継続する力・他者と協働する力」。初年次の学術文章作法をはじめとする「自ら学ぶ」ための基礎固めと、初年次セミナーに代表される共に学ぶ仲間を見つけやすい環境づくりが、この目指す姿に向けた取り組みとなっているわけだ。

馬場学長は「本学には52の国・地域、約750名(全学生の約9%)の留学生が集う。グローバルで多様性の豊かな教育環境の中で、学生が互いに学び合って成長してほしい」と希望を語った。

約52カ国・750名の留学生が集う学内は外国語が飛び交う。
約52カ国・750名の留学生が集う学内は外国語が飛び交う。
学長、経済学博士
馬場 善久
馬場 善久
ばば・よしひさ
1953年富山県生まれ。創価大学経済学部卒業。カリフォルニア大学サンディエゴ校経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。創価大学経済学部講師、助教授を経て、教授。教務部長、副学長を務めた後、2013年より現職。専門分野は計量経済学。