オーダーメイドの教育で、きめ細かなサポートを提供
日本で初めての女子高等教育機関として誕生した日本女子大学。現在は、家政学部、文学部、人間社会学部、理学部の4学部15学科を擁する女子の総合大学として存在感を放つ。日本版ランキングでも4項目中、教育リソース、教育成果の2項目で150位内にランクインを果たし、実力を示した。
その強みの一つは、高いST比(専任教員一人あたりの在籍学生数)が示すきめ細かなサポート体制にある。ST比の数値は理学部の19.8人を筆頭に、人間社会学部26.1人、家政学部27.0人、文学部31.9人と、学生6000人規模の私立総合大学として最高水準だ。
3・4年次には全学科でゼミ形式の授業が展開され、全員に卒業論文または卒業研究、卒業制作が課せられる。キャリア教育や資格取得のサポートなどにも熱心だが、何よりこの少人数制のゼミで、教員やゼミ生同士と中身の濃い時間を共有した経験によって、学生は大きな成長を遂げることができる。
ゼミを通して学問だけでなく、プレゼンテーション力、コミュニケーション力、マネジメント力など多様な力がつく。その集大成が卒業論文や卒業制作だ。「これらの経験は人としての成長につながり、皆、“ 意志を持った顔”になり卒業していきます」と、家政学部の堀越栄子学部長は語る。
さらに、各学科とも学年ごとにアドバイザーとして教員が複数つき、学習や進路の相談にも乗るなど、学生へのケアは全学を通して手厚い。「一人ひとりにオーダーメイドの教育を」「学生の人生を応援したい」─教員に共通するこの思いは、中途退学率の低さ(2014年度入学者 2.6%)にもつながっている。
学生の好奇心を伸ばす、学部横断型の単位修得制度
学生が自分の興味に合わせて、学部横断的に科目を自由に選択できるシステムを確立しているのも、総合大学ならではの特徴だ。例えば、文学部日本文学科で『源氏物語』の研究をする学生が、平安時代の衣服について学ぼうと家政学部被服学科の授業を受講する。こうした例は珍しくない。
日本女子大学は、多様な領域にそれぞれの専門の教員を擁し、3000にも及ぶ多彩な科目を提供している。学生がこれらの科目を自由に選択できるシステムについて「自らの可能性を広げる場として素晴らしい環境だと思います」と、文学部の高野晴代学部長は自負する。
創立120周年を迎える2021年に向けた記念事業の一環として、目白と西生田に分かれているキャンパスを目白に統合する。学部・学科連携科目を増やし、複数の学科が協同して一つの研究をする仕組みづくりも進んでいる。今後、学部横断的つながりが一層深まることが期待される。
学外にも多様な学びの場が設けられている。
2001年度にスタートした「f-Campus」は、近隣の学習院大学・学習院女子大学・立教大学・早稲田大学のキャンパスで、各大学の提供科目の中から希望する授業が履修できる東日本最大規模の単位互換制度だ。
時代の変化とともに、女子大学の果たす役割も変化
自らの能力を開花させると同時に、自分自身の中にあるジェンダーギャップに初めて気づく女子学生は少なくない。特に共学の理学部の場合、男子学生が中心となり実験をすることもあるだろうが、日本女子大学の学生は各人がさまざまな役割を進んで担う。「本学は、将来のリーダーとなるべき人材を育てる場所になっていると感じます」。理学部の濵部勝学部長は自身の経験と合わせ、感嘆をもってこう語る。実際、学内外で活躍する3人の女性学部長は日本女子大学の卒業生であり、学生たちの良きロールモデルとなっている。
一方、女子大学の果たす役割が時代とともに変化しているのも事実だろう。人間社会学部の小山聡子学部長は、女子大学の使命は更新されるべき時期に来ていると言う。「かつて周縁に追いやられていた女性をエンパワメントする役割を女子大学が担ってきた歴史を思うと、例えば現代で言えば、セクシャルマイノリティを力づけるという新たな使命を担うのも女子大学なのではないでしょうか」。
日本女子大学の教育方針の根幹にあるのは、創立者・成瀬仁蔵氏の信条、すなわち「女子を人として育てる」という考えである。「女性として」以前に、「人として」育てるという建学当初からの精神は、時代を経て新たな使命を担う日本女子大学に、確実に受け継がれている。