日本人学生の留学比率は国立大学2位の高水準
お茶の水女子大学は、文教育学部、理学部、生活科学部の3学部を有する。これに大学院と研究施設が加わり、領域を超えた学部が一つの敷地内に集結した文理融合の環境を実現している。日本版ランキングでは、女子大学トップとなる総合32位のランクを得た。
創設時から一貫して掲げてきたミッションは「グローバル女性リーダーの育成」。日本の女性科学者として初めてアメリカに留学し理学博士となった保井コノをはじめ、お茶の水女子大学を巣立った卒業生には、国際的に活躍した女性も数多く名を連ねる。
偉大な先輩たちの志は、現代の学生にもしっかりと受け継がれている。お茶の水女子大学では在学中に留学する学生が多く、「国際性」の指標にもかかわる「日本人学生の留学比率」において18位をマーク。国立大学では東京外国語大学に次いで2位という高い水準を誇る。
協定校は28カ国・地域、79大学に広がる(2018年12月現在)。単位互換制度を用いた交換留学や大学の休暇期間を利用した海外語学研修、インターンシップなど、さまざまな留学機会を設けている。学内でもグローバルキャンパス化が進行中。英語での授業受講や留学生との交流、英語科目であるサマープログラムへの参加などを通じて、学生は自然と海外に目を向けるようになる。
文理の枠を超えた新しい理系女性教育
新しい時代を担う理系女性の育成にも力を注ぐ。一般に女性は「理工系が苦手」といったイメージを持たれがちだが、室伏きみ子学長は「こうしたアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)から女性たちを解放する場でありたい」と、大学の存在意義を語る。
理系の中でも、特に注目しているのがデザイン工学分野における女性の人材育成。まずは学内に工学系の研究所を設立し、これを基盤に大学全体の体制を整えていく予定だ。
「日本では、工学系の女性が非常に少ないのが現状。建築や生活に密着した物のデザインに興味のある学生はたくさんいます。彼女たちの新しい感性は、工学分野でもきっと生かせるはずです」と、室伏学長は期待を込める。
2019年1月には、文部科学省による「数理及びデータサイエンスに係る教育強化」協力校に選定された。これは、文理を超え、すべての学生が基礎リテラシーとして数理・データサイエンスを身につけることを目的とした新しい理系教育の試みだ。お茶の水女子大学では、なるべく数式を使わず、図解やシミュレーションによってデータサイエンスの知識を身につけるプログラムを開発した。小学校から大学までのさまざまな学習段階で「理数好き」を増やし、日本の教育改革に寄与する構えだ。
女性のキャリアが中断されることのない社会をめざす
学生たちが卒業後に実社会で活躍できる実践力を養うために、「キャリアデザインプログラム」を提供している。一人ひとりが「人生と職業」という視点でキャリアプランを捉え、学生時代にすべき課題を把握し実行することをめざす。具体的には、社会で活躍する女性を積極的に講演に招き、在学中からロールモデルに触れる機会を増やしている。その成果もあってか、就職率は希望者の約98%という高水準を誇る。
ただ、社会に出た後も、女性が企業の管理職をはじめとする指導的立場に就くためのハードルは依然として高い。こうした背景を受けて、2014年度からは「女性ビジネスリーダー育成塾:徽音(きいん)塾」を開講。多様なバックグラウンドを持つ女性たちが共に学び、企業などで指導的立場に就くための知識やスキルを修得する場を提供している。
一方、優れた女性研究者を「みがかずば研究員」として認定し、継続的に研究活動を支援している。ほかにも、学内に保育所を設けるなど、出産・育児・介護といったライフイベントによって女性のキャリアが中断されることのないよう、大学としてできる限りのサポート体制を整えている。
女性が生涯を通じて活躍できる社会を実現することは、室伏学長の願いである。そして、学生たちには、たとえ社会に大きな変動が起きようとも、状況に応じて対応し乗り切れる「しなやかさ」を備えた女性になってほしいと期待を寄せる。長い歴史の中で培われた実績を基に、これからの時代を牽引する女性リーダーを育てるべく、お茶の水女子大学の挑戦は続く。