少人数+バイリンガルで「リベラルアーツ」を体現する
都会の喧騒から離れた東京都三鷹市に、緑豊かなキャンパスを構える国際基督教大学(ICU)。1953年、日本で初めての4年制教養学部の大学としての献学以来、その教育の柱となっているのが、「リベラルアーツ」である。文系・理系の垣根を越え、人文・社会・自然科学にわたる幅広い学びを実践し、自分自身の専門性を深めていく。それが、リベラルアーツの基本的な学び方だ。
「さまざまな領域について多角的に学んだ下地があるからこそ、深く学ぶ1つのことがよく理解できるのです」と、日比谷潤子学長は言う。
ICUは設立当初から「バイリンガリズム」を徹底してきた。日英両語を学内での公用語として定め、教育・研究はもとより、会議資料や食堂のメニューに至るまで、すべての活動が日英併用で行われる。
英語だけで学ぶプログラムを設ける大学が増える中、ICUではすべての学生が、日本語と英語の両言語で学ぶことを求められている。複数言語を運用したほうが、偏りなく情報を得られ、より広い視野で物事を考えることができるからだ。
日比谷学長の就任以来、中国語やフランス語、アラビア語などといった国連公用語を含む9言語や、その背景にある文化・思想を学ぶ授業も拡充し、「日英バイリンガル+1」のトリリンガル教育が推進されている。多言語の学びにより、多角的な視点を養うことが狙いだ。
少人数による対話型授業も、ICUの教育の大きな特色といえる。専任教員1人当たりの学生数は19人。教員と学生、および学生同士の距離が近いこと、その間で対話が繰り返され、学びを深めることができる環境が、真のリベラルアーツ教育のための必須条件と考えている。
「大きな大学では、同じ専門の学生が共に学びます。一方、ICUでは、1つの教室の中にさまざまな専門を持つ学生が混在し、異なる関心や価値観を受容しながら、お互いに触発し合っています。だからこそ、学びを深めることができるのです」と、日比谷学長は強調する。
深い学びを実現する3学期制とメジャー制
前期・後期の2学期制を採用する大学が多い中、ICUは3学期制を敷く。その利点は大きく2つ。まず、科目選択の機会が増えること。2学期制では4年間に8回、科目選択をするが、3学期制では12回となる。2年次の終わりにメジャー(専修分野)を決めるまで多くの学問分野に接するため、ミスマッチを防ぐことができる。
もうひとつは、個々の科目を集中して学べること。どの科目も学期ごとに完結するカリキュラムで、1科目につき週に複数回の授業が行われる。週に1回の授業で多くの科目を学ぶ2学期制に比べ、より密度の濃い学修が実現する。課題にも集中してじっくり取り組むことが可能だ。
ICUのメジャー制では、さまざまな分野を幅広く学んだうえで本当に学びたい分野を見つけ、メジャーとして選択する。メジャー選択後も、関心に合わせて他分野も自由に学ぶことができる仕組みだ。こうした学生一人ひとりに合った学修者本位の教育環境が、学びの充実度を高めている。
国際社会へのパスポート 学士と修士を5年で取得
ICU卒業生の大学院進学率は約20%と高く、専門性への意欲と探究心が高いことが見て取れる。そのニーズに応え、2011年に、学部4年・大学院1年の合計5年で学士と修士の両学位を取得できる「5年プログラム」を導入した。
国際社会を見渡せば、修士・博士の学位を持つ高度職業人は少なくない。その中でリーダーシップを発揮できる人材となれるよう、優位の学生には早い段階で高度な学位を与え、進路の選択肢を広げる。2019年度には、さらにリベラルアーツの素養を持った実務家を養成するため、「外交・国際公務員養成プログラム」など3つのコースをスタートさせた。
進路選択をする高校生に向けて日比谷学長は、「自分の興味がどこにあるか、どんな人生にしたいかを自問し、大きなビジョンを持って情報収集してほしい」と呼びかける。ICUの少人数リベラルアーツ教育は、「本当の自分」を発見する学びの形だ。