学修成果を「見える化」し、日々の学修や就職活動に役立てる

芝浦工業大学は、日本版ランキングにおけるすべての項目で前回よりランクアップし、総合ランキングでは44位につけた。中でも伸長著しいのが、2019年度から在学生への学生調査が反映された「教育充実度」だ。

この背景には、大学改革に向けた動きがある。同大学では、創立100周年を迎える2027年に向けた大学改革プラン「Centennial SIT Action」を宣言。「アジア工科系大学のトップ10入り」「理工学教育日本一」などを目標に掲げ、教職学(教員、職員、学生)が協働してさまざまな取り組みを進めている。2014年には文部科学省の「大学教育再生加速プログラム(AP)」に選定され、「学修成果の可視化」や「アクティブラーニングの拡充」に力を入れる。

学修成果の可視化は、「SITポートフォリオ」の構築がその中心だ。従来も学修成果の記録は残されていたが、それぞれの学科や部門別にデータが散在していた。それらをすべて一元化し、学生が「SITポートフォリオ」のサイトであらゆる過去の受講履歴と成績、課外活動などの履歴を、数字やグラフで分かりやすく見られるようにした。また、教員が学生に宿題を課し、学生が課題を提出するやり取りもシステム上で完結し、評価・採点も記録されるため、学生にも教員にも過度な負担がかからず、授業外学修時間の把握も容易になった。

SITポートフォリオにより、学生はいつでもPC・スマートフォンで大学での活動を振り返り、成長の軌跡を確認することができる。村上雅人学長は「所属する学科の教育目標にどれだけ近づけているかを確認するほか、就職活動の際に過去の活動を振り返って自分の強みを見いだす際にも役立ちます」と話す。実際、学生に好評で、今やほぼすべての学生が「SITポートフォリオ」を有効活用しているという。

【SITポートフォリオ】学修成果を可視化し、学生の成長を支援する
【SITポートフォリオ】学修成果を可視化し、学生の成長を支援する

海外で学ぶ、留学生と学ぶことによりグローバルな人材に

APのもう一つの軸であるアクティブラーニングの代表的なものとして、「グローバルPBL(Project Based Learning)」がある。約2週間、東南アジアやアメリカ、欧州、オセアニアなどのパートナー大学へ赴き、現地の学生たちとともに課題の解決に取り組む。

英語でのコミュニケーションに不安を持つ学生もいるが、日本から教職員のほか、過去にグローバルPBLを経験した院生がTA(Teaching Assistant)として同行し、必ずプログラムをやり遂げるよう学生をサポートする。その結果、参加者の中からクォーター制を活用して2〜3カ月の短期留学や、長期の交換留学にチャレンジする学生も出てくる。何らかの形で海外に派遣される学生数は1700名(2018年実績)に迫る勢いだ。「昨今、グローバル人材を求める企業からも、この経験は高く評価されています」と村上学長は胸を張る。

文部科学省の「スーパーグローバル大学創成支援事業(SGU事業)」に選ばれている同大学では、留学生の受け入れにも注力し、その数はSGU事業に採択された2014年度の297名から、2018年には1,509名にまで増加。東アジア・東南アジアを中心に世界中から留学生が集まる同大学のキャンパスは、急速にグローバル色を濃くしている。

彼らの日本での学修や生活面のサポートを、教職員だけでなく学生も参加することにより結びつきが強まる。2020年からは、すべての単位を英語で修得して学位を得られる「英語学位プログラム」を学部にも導入する予定で、さらに海外から注目される大学となるだろう。

【グローバル】全学生のおよそ5人に1人がグローバルPBLなどで海外を経験
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最先端の機器がそろう研究施設「テクノプラザ」

芝浦工業大学では、教育研究の活性化を目的に、2016年より豊洲および大宮キャンパスに共通機器センター(テクノプラザ)を設置・運営している。走査型・透過型電子顕微鏡やCTスキャンをはじめ、グローバルなレベルで最先端の分析・解析機器が50台以上揃う研究施設だ。

テクノプラザには機器の使い方を指導する技術員が常時待機し、学生はいつでも自由に利用できる。一般の大学ではなかなか扱う機会がない希少な機器も多いが、企業では当たり前のように使われているため、使用経験のある学生は、就職した企業からも重宝されるという。

「テクノプラザは特に短期留学生に喜ばれています。彼らは自国の大学で作った試料をテクノプラザに持ち込んで、3カ月くらいで論文をまとめて帰って行く。彼らの口コミで、海外でも本学の評判が広がっているようです」と村上学長は話す。

「世界で学び、世界に貢献できる理工学人材の育成」を目標に掲げる芝浦工業大学は、グローバル標準を見据えた改革を着実に進めて、社会に貢献する技術者を数多く生み出し、日本でのプレゼンスをさらに高めていくはずだ。

【テクノプラザ】世界レベルの研究を実現する最先端機器がそろう
【テクノプラザ】世界レベルの研究を実現する最先端機器がそろう
学長
村上 雅人
村上 雅人
むらかみ まさと
1955年岩手県生まれ。1984年東京大学工学系大学院博士課程修了。1995年より名古屋大学、岩手大学、東京商船大学の客員教授を歴任し、2003年に芝浦工業大学工学部教授に就任。大学院工学研究科長、副学長を経て2012年より現職。工学博士。