自然豊かなキャンパスで「環境マインド」を育む
鈴鹿山脈、布引山地の深遠な緑と、青く輝く伊勢湾に囲まれた風光明媚な土地にキャンパスを構える三重大学。「人と自然の調和・共生」に重きを置き、地域に根ざし、世界に誇れる教育・研究を追求している。豊かな自然環境が身近にあり、「環境先進大学」としても名高く、環境に関する取り組みに意欲的である。
キャンパス内での省エネや節電行動をはじめとする企業体としての環境活動と並行して、「環境ISO学生委員会」を中心に、学内だけでなく地域の環境活動にも尽力している。近隣の海岸の清掃や地元の小学校での環境教育など、その長きにわたる取り組みが認められ、2017年度には、国立大学として初めて「地域環境保全功労者表彰環境大臣賞」を受賞した。
大学の社会貢献度を指標とする「THE大学インパクトランキング2019」では総合ランキングで国内14位タイを獲得。「SDG別ランキング」では、11項目のうち実に10項目においてランクインを果たし、SDG12(つくる責任つかう責任)では国内1位となった。
大学の真髄である『教育』と『研究』の両輪で環境活動を展開し、未来を担う学生たちの“環境マインド”を育てることも三重大学の重要な使命だ。「本学から巣立った学生たちの環境に対する姿勢が、日本全体に、ひいては世界中に浸透していくことを願っています」と、駒田美弘学長は語る。
無限の学びが広がる教育的インターンシップ
三重大学は教育目標として4つの力─「生きる力」「感じる力」「考える力」「コミュニケーション力」の育成を掲げている。ここで言う「力」とは「能力」のことではないと駒田学長は強調する。
「たとえ能力があっても、それを行動に移す力がなければ本末転倒です。知識や技能は古くなっていきますが、目標達成のために行動しようとする“力”は決して劣化せず、やがて血肉となるのです」。学生たちには、そんな「真の力」を身につけてほしいという。
こうした力を育成する手段の一つとして、積極的に実施しているのが「教育的インターンシップ」だ。
大学での学びと社会組織での経験を有機的に結びつけ、新たな学習意欲を喚起させるのと同時に、自らのキャリア設計や適性について考える絶好の機会となる。学生たちの知的な活動に対する欲求を満たす受け皿となる側面もあり、そこには、教室では得られない学びが無限に広がっている。参加した学生からは「将来の仕事のイメージが具体化し、そのために今、どんな勉強をするべきかが明確になった」といった声も聞かれ、たくましい成長を見せている。三重大学ではインターンシップを「教育の一環」として捉え、2019年度に入学した学生から、全学部において卒業要件に組み込まれることになった。学部ごとの教育目標に合わせた取り組みとして導入されることになる。
サテライトキャンパスから地域のイノベーションに寄与
三重大学の教育・研究のフィールドは三重県全域に広がる。その地盤となるのが、伊賀、東紀州、伊勢志摩、北勢に置かれた4つの地域拠点サテライトだ。例えば、伊賀では忍者文化の研究、北勢ではモノづくり企業との連携など、それぞれのエリア特性に応じたユニークで実践的な教育研究活動が行われている。地元企業や自治体と大学をつなぐハブ機能としての役割も担い、地域課題の掘り起こしから、課題解決に向けた共同研究、共同プロジェクトの遂行まで、地域創生に寄与する重要な拠点となっている。
2018年度には、企業や地方自治体と大学を結ぶ「地域創生戦略企画室」が新たに開設された。大学側はシーズを提供するだけでなく、自らニーズを生み出し、外に働きかけるべきとの考えから、この新たな部署を「出入口」と位置付けている。
こうした取り組みは着実に実を結び、三重大学における同一県内の中小企業との共同研究数は、東京大学に続き今や全国2位となった(文部科学省調べ)。今後はさらに加速していきたい考えだが、件数よりも「共同研究によってどれだけイノベーションが起きたか」「どれほど地域が元気になったか」が重要だという姿勢を貫く。
地域のイノベーションが、やがて社会全体へと活力を与える。地方国立大学の使命として地元・三重県の活性化に挑むのと同時に、その目は常に、日本全体、そして世界へと向けられている。