英語をツールに専門分野を学ぶ英米学科

1946年、小倉外事専門学校として開校以来、世界で活躍する人材を多く育成してきた北九州市立大学。2019年には6年ぶりにカリキュラムの大幅な見直しを行った。最も大きく変更したのは外国語学部英米学科だ。グローバル化が進む現代において世界を舞台に活躍するには、確かな英語力を備えながら、専門的なバックグラウンドを身に付けなければいけない。そこで同学科は、「英語を学ぶ」のではなく、「英語で専門分野を学ぶ」スタイルへとシフトした。

新カリキュラムの特色は4つ。1つ目は、1・2年次の英語集中プログラムだ。早期に高度な英語力を身に付けるために到達度別クラス編成を行い、IELTSの点数やディスカッション能力の向上を目指す。2つ目はコアプログラム選択制度。学生が卒業後の活躍フィールドをイメージして軸となる学びを選択するもので、「Language and Education Program(英語学、英語教育など)」「Society and Culture Program(地域研究、通訳・翻訳、国際社会、文化メディアなど)」「Global Business Program(観光、国際経営など)」の3つのプログラム群を設け、専門科目の授業の約7割を英語で行う。3つ目は、海外体験の必修化。現地で異なる文化や考え方に触れる体験は短期間であっても教育効果が高い。そのため、海外提携校を増やして制度を整え、世界各国へ送り出す。そして4つ目が、クラス担任制。学生全員が入学時のモチベーションを維持しながら能力を高めていけるよう、学生へのサポートを強化した。

こうした改革を通して、卒業時のTOEICの点数860点以上という高度な英語運用能力を目標に掲げているのだが、その背景には「世界に羽ばたく人材育成」への強い意思がある。

「これまで本学科を志望するのは『英語が好き』という高校生が多かったのですが、英語をツールとしてキャリアに活かすことまでを想像してほしい。海外体験を通して異なる文化や価値観を知り、英語力と専門知識を身に付ければ、それを活かして働く道が見えてくるはずです」と松尾太加志学長は語る。

【英米学科】全教員がバイリンガルで、留学制度も充実している。
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SDGsの実現を目指し 環境技術研究所で国際学術交流

北九州市は、環境エネルギーに対する取り組みで世界的な評価を受け、経済開発協力機構(OECD)から「グリーン成長モデル都市」「持続可能な開発目標(SDGs)推進モデル都市」に選定されている。世界で唯一、次元の異なる2つの環境モデル都市となった北九州市の基幹大学として、社内リーダー育成講座の開講をはじめ、SDGs推進における多様な取り組みを展開。2019年7月には国連がSDGs 達成に向けて高等教育機関と共同で進める「国連アカデミック・インパクト」に加盟した。

また、持続可能な都市機能の実現を目指す「環境技術研究所」を設置して、国内外を問わず産官学の連携を図り、次世代産業を担うバイオマテリアル、環境、エネルギー、災害対策、ロボットなどの研究を進めている。

例えば、北九州市と並んで「グリーン成長モデル都市」に選ばれたフランスにあるパリ第7大学と2017年に大学間交流協定を締結。「環境技術研究所」とパリ第7大学「明日のエネルギー学際研究所」の研究実績をもとに学術連携を行っている。

さらに2018年には、ドイツのブレーマーハーフェン大学とも学術交流協定を締結。北九州市環境局などとともに市の洋上風力産業拠点化に尽力するほか、風力発電を中心とした再生可能エネルギー分野における人材育成や共同研究を行っている。

「OECDグリーン成長モデル都市4大学連携(シカゴ大学、パリ第7大学、ストックホルム大学)」「SDGsモデル都市大学連携(ボン大学、フィレンツェ大学他)」といった複数のOECD選定モデル都市間交流にも積極的だ。こうしたネットワークのクロスリンクがより大きな成果の創出と情報発信を可能にすると考え、その中心的存在として、国際的な研究拠点構築へ意欲を見せる。

【環境技術研究所】最先端科学技術でSDGsの実現を目指す常設研究所
【環境技術研究所】最先端科学技術でSDGsの実現を目指す常設研究所

全学を挙げた地域連携活動で主体的に学べる環境を整備

公立大学として地域とのつながりを重視するのも北九州市立大学の特色だ。学生と地域の連携活動拠点として設置した「地域共生教育センター(通称421lab.)」では、2017年に起こった九州北部豪雨の復興支援活動をはじめ、行政・団体・企業との連携協定による人材育成や地域振興、小・中学校での授業補助や安全マップづくりのボランティア活動など、バラエティに富んだ取り組みをしている。このような地域貢献は、高い評価を得ている。

2019年4月には、シニア・社会人のキャリアアップや学び直しを支援する新たな教育プログラム「i-Designコミュニティカレッジ」を開設した。学生と社会人が一緒に学べる科目を設けて、相互に交流できる機会を提供。両者が刺激し合いながら自己の知識とスキルを高めることができる。

こうした時代のニーズに応える魅力ある取り組みの数々が、高い就職率や、日本版ランキングの「教育成果」分野(九州・沖縄・山口エリア)において公立大学1位という実績につながっていると言えそうだ。

【i-Designコミュニティカレッジ】2019年、社会人やシニア向けに創設。
【i-Designコミュニティカレッジ】2019年、社会人やシニア向けに創設。
学長
松尾 太加志
松尾 太加志
まつお・たかし
1980年九州大学文学部哲学科心理学専攻卒業、1988年九州大学大学院文学研究科心理学専攻博士後期課程単位取得退学、同大学にて心理学博士取得。1993年より北九州大学(現北九州市立大学)文学部助教授、教授を歴任し、2017年学長に就任。専門分野は、認知工学・認知心理学。