学部の枠を超えて学ぶ、全学共通基盤科目を導入
城西国際大学の開学は1992年。当時は2学部2学科でのスタートだったが、続々と新しい学部を開設し、着実に発展を遂げてきた。現在では、国際人文学部、観光学部、経営情報学部、メディア学部、薬学部、福祉総合学部、看護学部という7学部と、6つの研究科を擁する総合大学へと躍進している。
「学問による人間形成」という建学の精神のもと、「自分が所属する学部だけでなく、他学部の学生や教員とも接点を持ち、切磋琢磨しながら成長する環境は、総合大学ならではの強みです」と、杉林堅次学長は語る。
学部の枠を超えた新たな学びの機会として、2022年度から「全学部共通基盤科目」がスタートした。文理が融合するリベラルアーツおよそ100科目を提供。どの学部の学生も、スタディスキルズや外国語といった大学での学びの基礎となる分野をはじめ、生命科学やデータサイエンスなどの先端領域や、哲学、倫理学などの伝統領域、演劇・舞台芸術論などの芸術文化系など、8つのカテゴリーに分かれる科目群を縦横無尽に学ぶことが可能となっている。
全学部共通基盤科目は、インダストリー4.0、ソサエティ5.0、AIやロボティクスの進化など、社会や文化の大きな転換点を見据えたものでもある。「持続可能な開発」を含む世界的な課題解決に向け、学問領域の壁を超えて探求する精神と、実践力を育むことを意図したプログラムだ。異なる学部の学生が机を並べて学びながら、互いに新しい視点や発想を得る。異なる専門分野の仲間と協働する。そんな展開にも期待が熱い。
4学期制への移行で、より留学がしやすい環境に
6000人を超える学生は、全国47都道府県、1585校(2021年4月)から集まっている。加えて外国人留学生(国際生)も多い。校名からもわかるように、開学時から国際教育には熱心だ。留学生数はコロナ禍のさなかでも800人弱、最多では1500人を超え、多様性豊かなキャンパスを構成している。
中国人日本語教員の育成や、日中の日本語教員による合同研究の促進、あるいは、特有の文化と歴史を持つ、ハンガリー、チェコ、スロバキア、ポーランドの東欧4カ国の大学との協定促進など、独自性が光る取り組みも少なくない。
もちろん日本人学生の海外留学も盛んだ。世界32カ国、200以上の海外協定校があり、最長1年間の交換留学ほか、短期から長期まで多彩な留学プログラムを提供。毎年多くの学生が世界へと飛び出して、現地の大学で学び、あるいはインターンシップを経験して、知識や視野を広げている。
その背中を後押しするのが、「JEAP」という制度。留学中の単位が年間で最大30単位まで認められるため、休学せず、在学したままで留学できる。1年留学をしても4年間で卒業できるのは、学生にとってうれしい制度だろう。
一方、コロナ禍を機に、海外の大学との間で実施するオンライン合同授業もすっかり定着した。特に時差が少ないオセアニアやアジアの協定校とは、時間に縛られず、合同授業や交流活動に集中できる。こうしたグローバルな学びの機会をふんだんに提供する取り組みを反映し、城西国際大学はTHE世界大学ランキング日本版2022において、「国際性」で首都圏の私立大学17位と、高いランクをキープした。
2022年度からは4学期制(クォーター制)を導入。105分の同一授業が週に複数回開講され、短期集中的に授業が取れるようになった。同時に、留学、海外研修、インターンシップ、ボランティア活動などに参加するチャンスも、いっそう広がりそうだ。4学期制では、各学期に履修する授業数を自分で調整しやすいので、一つの学期と休暇を組み合わせ、短期留学や海外セミナーに参加するといったこともより簡単になっている。
地域と共に歩む大学として保健・医療分野の充実を図る
「城西国際大学は、社会で学び、社会を変える力を養う地域基盤型教育にも力を入れています」と杉林学長は話す。地域社会に寄り添うことを重視しているのだ。2019年の台風で、千葉県東金市一帯が断水した際に、東金キャンパスの貯水システムが地元住民への給水に大活躍をしたのはその表れである。避難が必要な自然災害が起きれば、学生の安全をしっかり確保しつつ、近隣の高齢者や弱者の避難を大学を挙げて支援する体制だ。
看護学部、福祉総合学部、薬学部など、保健・医療分野の強みを生かした地域貢献も盛んだ。高齢の市民向けに、シニアウェルネスの講座を開講。外国人住民の病気や出産には、英語が得意な看護学部の学生や教員が対応して協力する。新型コロナウイルスのワクチン接種会場でも、看護学部や薬学部の教員たちが活躍した。
「2023年4月には薬学部と看護学部の上に、大学院健康科学研究科の新設を予定しています。保健医療の分野に横串を通すように、専門性と総合的な視野を養い、現代人が抱える多様な健康問題に対応する人材を育てていきます」と杉林学長は意欲を見せる。スポーツと栄養学や理学療法を組み合わせた研究や、予防医学など、人々の健康維持に役立つ研究の新たな拠点として注目される。