スコア、ランクの裏付けが知りたくなるランキング
客観的な情報を生徒に提供したい
本校の場合、国公立大学への進学者は45%程度で、あとは多様な私立大学に進学します。進路指導上、偏差値は最重要指標の一つであるため、総スコアのうち「大学合格者の学力」の占める割合が6%しかないことには驚きました。しかし、卒業生の話を聞くと、偏差値が上の大学だから希望の仕事に就けるわけでもない、という実感はあります。大学でやりたいことが決まっている生徒にとっては、偏差値以外の指標を使ったランキングは有用でしょう。 また、昔のイメージで大学を判断する保護者がいないわけではありません。このランキングで上位の大学の中にも、保護者から「そんな大学知らない」「そこはもともと専門学校」と言われたと、生徒から相談される例がありました。生徒の将来を考えると、教員が生徒にニュートラルで偏らない情報を提供できることが大切です。
大学の固定観念が変わるきっかけに
ランキングの中には、これまで注目していなかった大学もありました。偏差値によるランキングとは異なる顔ぶれに違和感を覚えつつ、「なぜこの大学より、あの大学のほうがスコアが高いのか?」と、スコアに反映された実態を知りたくなります。それを生徒から質問された時に答えられるように、教員がより一層、大学を研究するきっかけになればよいと思います。
偏差値だけの価値観で大学選びをしていた生徒が、このランキングを見てグラッと揺らぐことがあってもよいのではないでしょうか。
学費に見合った大学か?その見極めの参考になる
実績、卒業生の評判、そして「教育力」
前任校は進路が多様で、大学への進学者は6割程度。中堅レベルの大学に推薦・AO入試で進学する生徒が多かったため、偏差値を用いた進路指導はしていませんでした。偏差値が高い大学は入学者の学力が高いので、学びの環境が良いのは、大学の教育力というより、学生の質によるところが大きいと思います。
一方、進路が多様な高校の生徒が進学する大学は、学ぶ意欲を高め、育てる教育が求められます。「400万円払って学ぶ価値のある大学かどうか?」を見極めるため、これまで重視していたのは、進学実績と卒業生の評判でした。そこに教育力の客観的なデータがあれば、生徒が迷っているとき、自信を持って勧められそうです。
生徒による大学の多面的評価が進む
4つの評価指標のうち私が注目したのは、「教育満足度」と「教育成果」。これらのスコアが70点以上の大学は、面倒見が良く教育力が高いという印象です。多くの生徒が進学した神田外語大学、千葉工業大学、麗澤大学などが150位以内にランクインしています。ほかにも、24位の立命館アジア太平洋大学や17位の長岡技術科学大学などは、教育満足度が高くなっています。
このランキングが普及すれば、生徒は偏差値だけでなく、教育力なども含めて多面的に大学を評価するようになるでしょう。生徒と対話しながら大学の本当の姿を探っていくのは手間がかかりますが、教員はもっと大学について勉強する必要があると、あらためて感じました。
大学を選ぶ理由を偏差値以外にも持っておく
教育力が高い大学の理由を知りたい
ランキング上位の大学は、ある程度、予想どおりでしたが、その中で、思った以上にがんばっている大学がポツポツとあることに目が留まりました。広島大学(12位)と神戸大学(13位)がほぼ同列など、地方国公立大学が健闘している印象を受けます。近畿圏の私立大学で立命館大学が1位なのは納得できます。さまざまな改革に取り組み、大学全体で教育力を上げていると感じていたからです。
入学時の生徒の学力が高くなくとも、「教育力」が高く出た大学は、何らかの取り組みが評価された結果でしょう。とはいえ、ランキングのスコアだけでは中身がわかりません。具体的な取り組みをぜひ知りたいところです。
大学・学部を選ぶ「根拠」としての活用を
私は「ある学部だけ評価が高い大学」は生徒に勧めません。その学部だけが特別で、全学的なしくみになっていないケースが多いためです。最近は全学部入試で複数の学部に出願し、結局、志望とは異なる学部に不本意入学してしまう生徒もたくさんいます。
偏差値だけで大学を選んでしまうと、第1志望校でなければ、自信を持てないまま4年間を過ごすことになりがちです。併願校・学部を含め、選んだ根拠を与えるという意味で、大学ランキングは生徒の人生にチャンスを与えるランキングになってほしいと考えます。偏差値、世界ランキング、日本ランキングの3つを見ながら、生徒に合った大学選びを考えるのが理想です。