ランキングを高校現場で活用するには?

 これまで、全国的にはあまり知られていない地方大学や小規模大学も、日本版ランキングの登場により、脚光を浴びることになりました。そのため、高校現場からは「今後は、各大学の“強み”から、志望校を勧められるようになる」との声が多く挙がっています。
 では、高校の進路指導に携わる先生方は、THE世界大学ランキング 日本版(以下、日本版)をどう見ているのでしょうか。今回は、ランキング発表後の先生方の反応から、3つの活用方法をご紹介します。

(1)世代間で異なる大学のイメージをすり合わせる

 これまで、進路指導の場面では、進路選択の基準として、入試難易度(偏差値)で判断されることがほとんどでした。しかし、日本版にランクインしている大学では、偏差値以外の評価基準として、4分野の各スコア、全学生に占める留学経験者の割合、学部卒業時の進路決定率などの、細かなスコアが提供されています。
 世代が異なる生徒・保護者・教員の3者間では、各大学に抱いている印象が異なります。そこで、日本版のランキングの客観的なデータは、3者間の大学イメージをすり合わせていく材料として活用できそうという意見が出ています。
 例えば、保護者世代が持つ大学イメージがマイナスであっても、現在は実態がそのイメージとは大きく変わっていることを、ランキング情報の詳細によって示せる可能性があります。

(2)客観的な比較軸で志望校の視野を広げる

 大学選びの基準は、生徒によって様々です。各々の主観的な比較軸や偏差値だけで検討していることが多いのも事実です。一方、日本版のランキングでは、偏差値以外の指標で、客観的に大学を見ることができるため、“生徒の関心の幅が広がる”という声も挙がっています。
 高校1年生などの早い段階で日本版ランキングを調べる指導を行うと、視野を広げることができます。これに伴い、「早期に受験意識が醸成され、学力の向上が期待できる」との見解も挙がっています。
 活用時期はそれぞれですが、タイミングとしては、高校2年生から3年生にかけてです。高校2年生ではオープンキャンパスの選択肢を増やすため、高校3年生では第2志望校選びのために活用できそうとの声が寄せられています。生徒が知らない大学にも興味をもってもらうきっかけとして、ランキングが有効のようです。

(3)スコアを大学研究の材料にする

 さらに、日本版のランキングは、大学研究の材料としての活用も考えられます。特に、分野別ランキングへのニーズが高く、分野別のスコアにより、各大学の特徴をつかむことができます。
 よって、一部の地方で国立大学よりも県立大学の方が上位にランクインしている理由や、偏差値が同程度の大学の差異について、ランキングやスコアを比較しながら見ていくことができます。「なぜこの大学のスコアが高いのか?」気になる大学を調べていけば、本当の大学研究ができるでしょう。

 今回は3つの活用方法を抜粋して紹介しました。進路指導での活用はまだまだ広がりそうです。