生徒の徹底した大学研究が、早期の志望校決定につながる
晴海総合高等学校では、総合学科の特徴を生かし、以前から丁寧な大学調べを行ってきました。生徒自身の進路に対する意識も高く、1年次には進路を見据えた大学調べをスタートします。そして、3年の4月には、生徒それぞれが第一志望、第二志望を決定します。
大学入試改革が進む中で、すでに入試を取り巻く環境も刻々と変化しています。その中で、総合学科のような、興味があることを掘り下げていく学習スタイルは、強みになると考えています。なぜなら、自ら調べる力や考える力を育てることができる上、その成果が大学に認められ、希望進路に進んでいる生徒が多くいるためです。その結果、生徒の約8割が志望の大学へ、指定校推薦やAO入試で進路を決めています。
しかし、その一方で、一般入試で受験をする生徒の中には、受験校と学力のマッチングがうまく行かず、受験期に志望校を変更せざるを得ない子もいます。これが、その生徒の進学に対するモチベーションを下げてしまうのではないかという懸念は常にあります。
受験期は生徒のモチベーションが重要
受験期における進路指導では、生徒のモチベーションを重視しています。その後、入学するかどうかを決めるのは生徒自身であるため、大学選択の納得度が重要だと考えています。
納得度の高い進路指導をするためには、大学の中身をよく研究すべきですが、「やりたいとことができる」という視点を重視した結果、自己の受験学力を考慮せず、大学選びをする生徒が多いのは問題です。
そこで、教員の役割は、生徒が納得して新たな志望校にできるような大学を、彼らに提案することです。最終的に、その大学へ進学できれば問題はありませんが、もし、生徒が志望校を変えなければならない時に、大学の中身をよく見て、新たな志望校を決めることができれば、受験へのモチベーションを維持できるでしょう。そこで日本版ランキングを活用すれば、大学の中身に迫ることができるのではないかと考えます。
ランキングから読み取れる特徴から勧める
日本版ランキングでは、「教育リソース」「教育充実度」「教育成果」「国際性」の指標から大学の特徴を読み取ることができます。これにより、各生徒に有益なアドバイスができ、保護者にも納得感のある決断をしてもらえると考えています。単に「○○大学がいい」というのではなく、その大学が優れている理由を添え、生徒たちに提示すれば、モチベーションを維持することができると思います。
例えば、当校は、語学コミュニケーション系列の生徒を中心に、国際系や語学系の希望者が多く、卒業後の留学も例年5名前後いるような状況です。そのため、留学を希望している生徒に対し、国際性ランキング19位の神田外語大学や『全学生に占める留学経験者の割合(中長期/短期)』が高い、昭和女子大学を志望校に加えるように勧めています。
特に、神田外語大学の場合は、『全授業に占める英語で行われる授業の割合』が青山学院大学と同様で、この点でも生きた英語力が高められると考え、志望する生徒も数多くいます。このように、大学間のデータ比較ができる点も日本版ランキングの魅力でしょう。
さらに、日本版ランキングサイトのトピックスの記事の中で、「研究力の高い私立大学3校」として紹介されている工学院大学は、最近、工学系学部に加え、理学系統の学科が新設されました。そのため、理学系を希望する生徒にも志望校に加えるよう、勧めることがあります。加えて、記事内で、東京医科大学、東京薬科大学との連携プロジェクトも行われ、医療用ロボットや医療用の素材などの開発も進んでいると紹介されていました。人気小説のような話を思い出しますが、この記事を受けて、医療系のこの分野に興味を持つ生徒にも、勧めています。
日本版ランキングへの期待
晴海総合高等学校としては、日本版ランキングが、大学の中身や特徴に加えて、大学生の成長も見えるものになることを期待しています。高校生の大学研究が活性化する仕掛けとして、学生の指標化は効果的でしょう。
また、ランキングが「単年」ではなく「経年」で表現されることによって、「大学の変化」が鮮明に見えてくるのではないでしょうか。さまざまな大学がそれぞれ改革を行っている中で、日本版ランキングにおけるスコアの変化や順位の推移を追ってみると、大学の頑張りを客観的に判断できるでしょう。
ランキングによって、大学の新たな一面を、発見したり、調べたりすることができます。そのため、生徒だけでなく進路指導する側の先生方にも、ぜひ、このランキングの活用をお勧めします。