各国の高等教育がわかる

 Times Higher Education(THE)世界大学ランキング2018(2017年9月5日発表)では、前回より20校多い89校がランクインしました。新しい顔ぶれも多く、地方の国立大学や特徴ある単科大学など、バラエティに富んだ大学がランクインしている印象です。これらが「他国から見える形」であり、日本の大学の力を見せることができたと思います。
 一方で、実力があっても上位に位置しない大学もあり、ランキングを分析すると、高等教育事情を垣間見ることができます。
 例えば、フランスでは、最高位の大学が72位となっています。総合大学が必ずしもエリート機関ではなく、官僚教育などが特別な小規模のエリート教育機関で行われているといった高等教育の特殊性が、なかなかランキングで上位にならない要因となっているのではないでしょうか。
 近年、こうしたランキングも一因となり、フランスは複雑な学位制度の見直しや英語教育の充実化を進めています。これまでは、フランス語が堪能で、フランスが好きな人を大学へ呼び込んできましたが、最近では、ビジネス・スクールなどで留学生を呼び込もうという動きがあります。
 こういった点は、日本と共通する点も多いと感じています。

国際共同研究を進めていく必要性

 THE世界大学ランキングは、大学の研究基盤とともに、研究の影響力を測るサイテーション(論文の被引用回数)の比重が高い特徴があります。そのため、理系学部を持つ大学は高く評価されやすく、人文社会学系の学部では、強みを発揮しづらい側面を持っていると思います。
 近年、中国、香港、シンガポールなどのアジア各国の大学が上位にランクインしてきています。これは、とくに理系を中心に、各大学が研究力をつけてきているためでしょう。
 一方、日本の大学では、総じてサイテーションのスコアが低く、課題と言えます。意識的に国際共同研究を増やしていかなければ、このスコアを上げていくのは難しいでしょう。また、「英語」への過度な偏向は問題だと思いますが、日本語で積み重ねてきた人文社会系の研究の優れた成果を、積極的に国際的な学術サークルへ発信をしていく努力も必要だと思います。
 日本の文化を発信したり留学生を増やしたり、日本人の価値観や思想への理解者を世界に広めることは、長い目で見て「知識外交」の促進になるでしょう。積極的に研究成果を発信し、相互に論文、ジャーナル等を引用し合える環境づくりをした上で、評価されるようになるという流れを目指すべきだと考えます。これが実現していけば、日本の大学はさらに世界に通用する高等教育機関として成長できるはずです。

東京大学大学院 教育学研究科 准教授
北村 友人
北村 友人
きたむら・ゆうと
1972年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校教育学大学院社会科学・比較教育学科修士課程・博士課程修了。Ph.D.(教育学)。専門は、比較教育学、国際教育開発論。