ランクインの背景にあるコミュニケーション重視の風土

 本学はTHE世界大学ランキング日本版2020で総合36位、特に「教育充実度」の分野では7位にランクインしました。小規模な外国語大学として、このような高い評価を得た理由は「教育充実度」の構成指標のひとつである「高校教員の評判調査」にあると分析しています。
 本学は高校の進路指導の先生方との信頼関係を築くために、卒業生が各高校を訪問し、本学の取り組みの具体例を伝えるとともに、より良い高大連携について高校の先生方と考える進学アドバイザー制度を設けるなど、高校訪問に力を入れてきました。加えて、千葉県内の英語教員になった卒業生も多く、彼らの語学力や指導力が教員の間で評価されていることが、評判調査の結果につながったのではないかと考えています。
 また、2019年からは在学生の評判調査も「教育充実度」の指標に加えられました。本学の教育の特徴は、少人数制のアクティブラーニングと、学生が自ら積極的に学ぶ「自立学習」を支援する考え方にあります。ただし、最初から誰もが「自立学習」を実践できるわけではありません。そのため、一人ひとりに最適な学習方法を学生と一緒に考えるラーニングアドバイザーを常駐させているほか、個々の教員も積極的にアドバイスを行うなど、「自立学習」を支援しています。ランキングのスコアはこうしたサポート体制、コミュニケーション重視の学風が学生に支持されたと考えます。
 教育力が評価されたことが自信になる一方で、「この評価に値するだけの教育サービスを提供できているのか」と自問し、教育内容をさらに向上させなければいけないという決意を一層強くしました。現在、プレゼンテーションの機会も設けた双方向型の少人数授業を展開していますが、これをさらにブラッシュアップさせていきます。また、今後は「卒業時の語学力」を社会から問われることも増えるでしょう。在学中の語学力の伸びをステークホルダーにわかりやすく説明できるようなしくみ、教育メソッドの開発に取り組んでいきたい考えです。

これからの社会に不可欠な教養ある国際人を育成

 外国語を学ぶだけであれば海外でトレーニングしたほうが上達を期待できるでしょう。また、AIの発達によって、文脈を踏まえた自動翻訳も遠からず実用化されるはずです。現在、国境を越えた人の移動やテクノロジーの進化が加速していますが、私はこれに伴って外国語大学の存在感が低下するのではないかとの危機感を持っています。今後、グローバル化がさらに進む社会で生きる人間に求められるのは、正解がひとつでない問いに対して考え抜く姿勢と、解決に至るために必要な深い教養とクリティカルシンキングです。こうした資質・能力を学生に身につけてもらうために、2021年にグローバル・リベラルアーツ学部*を新設する予定です。ここでは本学伝統の実践的な語学教育に加え、アクティブラーニング型のリベラルアーツ教育によって、世界で起きている解のないさまざまな問題を正しく理解し、平和的な解決策を探る人材を育てていきます。
 日本の高校生は受験科目の「ペーパーテスト偏差値」を見て進学する大学や学部を選ぶ傾向があり、また多くの大学は入学者の偏差値帯に応じ、出来上がった序列を「大学の偏差値」と呼んで唯々諾々と受け入れています。訳のわからぬ偏差値信仰に縛られ改革を怠る大学は淘汰され、ますます世界水準から遅れをとり、大した個性もなくタコツボと化した日本の大学は世界で相手にされなくなるでしょう。今後、必要となるのはオープンイノベーションであり、大学間で互いに学び合って成長する姿勢です。本学も国内外を問わず他大学の先駆的な取り組みを学び、本学らしさを失わず、ス ピード感を持って大胆に改革を進めていきます。

*2021年4月開設予定(設置届出申請中)。設置計画は予定であり、内容に変更が生じる場合があります。

神田外語大学 学長
宮内 孝久
宮内 孝久
みやうち たかひさ
1950年東京都生まれ。1975年早稲田大学法学部卒業、三菱商事株式会社入社。サウジアラビアのリヤード駐在やメキシコでの塩田経営などに従事。2013年同社代表取締役副社長に就任。2018年4月より現職。