大学生の就職を取り巻く環境の変化

 近年、大企業での過労死・働き方の問題が議論されています。それに伴い、大学生が就職先に求める条件も変化しています。どれだけ稼げるかといった金銭的な条件よりも、福利厚生やワークライフバランス、「働きやすい企業かどうか」ということが就職活動をする大学生の大きな関心となっています。
 「売り手市場」と言われる近年の新卒市場ですが、学生にとって重要なのは、「売り手市場」の中で自分の理想のキャリアを築くための企業を選ぶということです。そのためには、大学生のうちに企業が採用したくなるような人材になることが大切です。

企業人事、研究者の両面から評判調査

 そのような状況の中で、学生には「就職するための力」だけでなく、「自分でキャリアを築いていく力」が必要となります。また、これからの社会で、AIやテクノロジーが発展しても職を失わず活躍できる人材、社会の変化に対応できる人材を育ててくれる大学はどこなのか、気になるところです。
 THE世界大学ランキング 日本版の「教育成果」ランキングは、企業人事や研究者の評判調査結果から、卒業生がどれだけ活躍しているかを多面的にスコア化したものです。つまり、従来の就職率と異なり、就職後の活躍を基準に、大学を比較しやすくなっています。

教育成果ランキングからわかる大学の人材育成プログラム

 教育成果ランキングでは、1年次から体系的なキャリアプログラムを行う大学が上位にランクインする結果となりました。今回は、その中から特徴的なプログラムを設けている大学とその取り組みを紹介します。

就業についての自己能力を把握:東京工科大学
 94位の東京工科大学(東京都)は、1年次から就職支援プログラムを開始します。就業力カルテ(実学カルテ)を導入することにより、就業についての自己能力を学生一人ひとりが客観的に把握・理解できるようになりました。目標設定や、計画的な能力向上を支援しています。
 特徴的なのは、工学部の正規授業として学外で就業する「コーオプ教育」です。一定期間、企業で働き、大学の単位を修得するとともに、実践力や社会人基礎力などの能力を効果的に身につけることが期待されます。

企業出身者の視点でアドバイス:金沢工業大学
 19位の金沢工業大学(石川県)では、1年次から進路を意識させるための授業を正規のカリキュラムで実施しています。教員の5割が企業出身者であるため、的確な助言を行うことができ、また、各学科の教員約60名が「進路アドバイザー」として学生の進路指導にあたっています。
 さらに、東京・名古屋に専任の企業訪問スタッフが常駐し、企業との関係強化を推進。「採用のための大学案内」を配布するなど、企業側への情報提供にも余念がありません。

自分の適性にマッチした企業を見つける:東北学院大学
 74位の東北学院大学(宮城県)は、学年ごとの総合適性検査が特徴的です。1年生全員に、自分の強み・弱みとは何か、どうすれば目指す人物像に近づけるかを知る「コンピテンシー診断」を、2年生全員には、将来どんな仕事をしたいのかを考えるきっかけとなるよう、今の自分の性格や特性を分析し、どんな仕事が向いているかを発見する「自己分析・自己発見のための職務適性テスト」を実施しています。
 さらに、3年次には、学生が企業で就業体験をする「インターンシップ」を推奨。大学側が参加を募り、積極的に企業へ紹介しています。企業や仕事に対する理解を深められるとともに、前述の職務適正テストの結果とマッチしているかを確認しながら、卒業後の進路を考えられるでしょう。

 このように、専門的な研究を行うだけでなく、実社会で通用する力を養う大学も増えています。教育成果のランキングを紐解いていくと、さまざまな教育システムにより学生をサポートする大学を知ることができますので、参考にしてみてください。