アドミッション・ポリシーの意味と役割を解説

 アドミッション・ポリシーは、入学者の受け入れ方針をまとめたものです。自学の特色や教育理念を反映した上で「どのような学生を求めているか」という受け入れの方向性が、アドミッション・ポリシーには明確に記載されています。
 学部・学科ごとにアドミッション・ポリシーを定めていることも少なくありません。大学教育で向上させる力や入学者に求める能力などを、入学希望者に伝えるのがアドミッション・ポリシーの役割です。
 とはいえ、アドミッション・ポリシーは入学者の基準を設けるものではありません。高校時代までに身につけておくべき知識に関しての記述もありますが、実際の知識・思考力の有無などは入学試験によって審査されます。
 したがって、大学のアドミッション・ポリシーを読むことにより、学習意欲がその大学で勉強・研究するにあたり十分なものかどうか、また、その大学で身につけられる能力は入学希望者の目的と合致しているかどうかを知ることができるでしょう。

アドミッション・ポリシーに見る公立大学の相違点

 それでは、実際に大学はどのようなアドミッション・ポリシーを策定しているのか、紹介します。今回は、THE世界大学ランキング 日本版の総合ランキング上位にランクインした公立大学のアドミッション・ポリシーを一部、見ていきましょう。

20位:国際教養大学(秋田県)
 国際教養大学では、世界各国から留学生を受け入れ、語学以外のすべての授業のうち98%を英語で行うなど、グローバル教育に力を入れています。そのため、同大学のアドミッション・ポリシーでは、グローバルな環境に適応し、問題を解決する能力を求めています。

「学生は大学での学修において、
・英語で教養教育を修めるに足る十分な英語運用力を獲得する意欲を持ち、
・バランスのとれた教養教育科目を履修要件とする本学のカリキュラムを理解しこれに積極的に挑戦し、
・留学などで直面する困難な問題にも自立的学修者として取組める強い意志と、多様な背景を持つクラスメートあるいは留学先の人々と協働できる能力を高める意欲を有する
ことが必要です。」
(国際教養大学ホームページより引用)

23位:会津大学(福島県)
 会津大学はコンピュータ理工学部、1学部のみで、国内でも随一のコンピュータ教育を提供しています。アドミッション・ポリシーは、コンピュータ工学についての興味・関心を問う内容となっています。

「コンピュータに関する知識・技術は大学入学後に学びます。まず求められるのは、旺盛な好奇心や新しい事柄に挑戦する創造性、物事を科学的に探求する論理性などです。コンピュータを本当に学びたいと考え、会津大学を第一志望とする学生を歓迎します。」
(会津大学ホームページより引用)

 専門的な知識・技術より、その学修の基礎となる好奇心・創造性・論理性が求められていることが分かります。

=24位:首都大学東京(東京都)
 総合大学である首都大学東京には、大学全体としてのアドミッション・ポリシーのほかに、学部ごとのアドミッション・ポリシーも策定されています。
 大学全体のアドミッション・ポリシーには「求める学生像」として、

「1.知的好奇心にあふれ、未知のものにチャレンジする人
2.独創的な発想に富み個性豊かな人
3.人とのかかわりを大切にし、社会に貢献する人
4.向上心が強く努力を惜しまない人」
(首都大学東京ホームページより引用)

 とあります。これを受け、例えばシステムデザイン学部のアドミッション・ポリシーでは、

「1.先進的なシステムデザイン工学を習得するに十分な基礎となる高校段階での学力を持つ人
2.先進的な開発や人や環境に配慮した新しいシステムの創造に関心を持ち、機械、電気・電子、情報、航空宇宙、デザインなどの工学及び感性を複合・横断的に学びたい人
3.知的好奇心を持って新しい価値の創造に積極的に取り組む意欲がある人
4.国内外の研究機関との研究交流・共同研究に興味を持ち国際的に挑戦する人」
(首都大学東京ホームページより引用)

 とあります。会津大学のアドミッション・ポリシーと見比べると、「好奇心」「挑戦」といった共通点はありますが、同じ理工系の学びであっても、求める学生像に違いがあることがうかがえます。

 このようにアドミッション・ポリシーは、大学での学修に関するメッセージが込められています。ランキングを見て興味を持った大学があれば、アドミッション・ポリシーを見てみてはいかがでしょうか?