愛知県の大学の特徴
都道府県別に、THE世界大学ランキング 日本版の総合ランキングを見てみると、愛知県の大学は、東京都に次いで2番目に多い10校がランクインしています。
愛知県の大学の特徴は、産学連携に力を入れている大学が多いことです。文部科学省の調査によれば、愛知県内の大学は、「同一県内企業及び地方公共団体との共同・受託研究実施件数」が他県と比較して多く、平成27年度の調査では、例えば名古屋大学は246件で全国第5位となっています。これは、名古屋市が日本有数の工業地帯である中京工業地帯にあり、製造業が盛んなことも1つの要因と考えられます。
また、平成27年度の「同一県内企業及び地方公共団体との共同・受託研究実施件数(地方別)」を見てみると、名古屋工業大学が第2位、豊橋技術科学大学が第6位など、東海地方のトップ10のうち6つの大学が愛知県の大学です。積極的な共同研究が、教育の質の向上に貢献し、今回の総合ランキングへのランクインにつながったと考えられます。
企業との連携に積極的な愛知県の国立大学
愛知県の中でも特に産学連携を深めている国立大学3校を取り上げ、特徴的な取り組み内容を紹介します。
企業とのマッチングと地域貢献に積極的:名古屋大学
総合ランキングで=4位にランクインした名古屋大学では、企業との“マッチング”に力を入れています。そのため、大学で研究・開発された、新たな産業の種(研究シーズ)を企業向けにわかりやすく解説し、研究成果の公開を積極的に行っているのが特徴的です。
また、株式会社日本政策金融公庫(名古屋支店、名古屋中支店及び熱田支店)とともに地域の産学連携を推進し、地域社会の発展に貢献するため、日本政策金融公庫の取引先である中小企業の技術ニーズと名古屋大学の研究シーズのマッチングをコーディネートしています。
併せて、産学官の連携によるイノベーション創出を目指し、2012年に名古屋大学ナショナルイノベーションコンプレックス(NIC)を設置。NICは、名古屋大学の学術研究・産学官連携推進活動に関わるワンストップサービスを提供している研究施設で、9つの企業が入居し(2017年現在)、産学共同研究の拠点としています。NICでは、地域の組織が集まって様々な研究を行う「場」として、地域発の世界水準のイノベーション創出拠点となることを目指しています。
さらに、2017年、株式会社大丸松坂屋百貨店の松坂屋名古屋店との間で、「ICT活用による、サービスイノベーションとエリア魅力開発~情報おもてなし都市・なごやの創造~」をビジョンに掲げた包括連携協定を締結しました。最先端のICT技術を活用した名古屋への観光客誘致やインバウンド強化、AIを利用した顧客マーケティングなど、人々をおもてなしするサービスイノベーションを起こし、栄エリアや名古屋の魅力を開発していきます。
先端的研究や各分野の融合を支援:豊橋技術科学大学
総合ランキング37位の豊橋技術科学大学には、高度な研究を実現するため、異分野融合の研究を行う「エレクトロニクス先端融合研究所(EIIRIS)」や先端的研究を行う「ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー(VBL)」が設置されています。これらの施設では分野の垣根を超えた研究や先端的研究が行われます。
例えば、VBLでは、半導体集積回路とセンサ技術やナノテクノロジー技術などの融合により、各種センサと信号処理回路を一体化し、人間のように自律的に判断するデバイスの研究開発などを行っています。これには政府・産業界の資金協力を得ています。
また、EIIRISでは、先端材料計測領域の研究が行われています。この研究では、生物や細胞の活動を観察するための技術や、宇宙や高温などの過酷な環境で使用できるセンサチップの開発に向けて、新たな素材を使った半導体技術に取り組んでいます。
このように、豊橋技術科学大学には、独創的・創造的な研究開発や、創造的な人材を育成する環境が整っていると言えます。
学生や地域を巻き込んだ実践に取り組む:名古屋工業大学
総合ランキングで=60位にランクインしている名古屋工業大学では、学生や企業を巻き込み、双方の学びとなる様々なプログラムを実施しているのが特徴的です。
例えば、「三機関協働支援事業」では、名古屋工業大学、愛知県中小企業診断士協会、あいち産業振興機構という3つの機関が、中小企業の課題解決の取り組みを支援しています。この事業を通じて行われる、経営者、社員、教員、学生が知識を深め共有する合同講習会や報告会は、学生にとって仕事を体験する場となるだけではなく、企業側にとっても知識の深まりや異分野の企業との交流といったメリットがあります。
また、「プロトタイピングから学ぶデザイン思考教育プロジェクト」では、異なる学部の学生や社会人で構成されたグループで、プロトタイピングによる「ものづくり」を行っています。プロトタイピングとは、実際に動作する試作品を作ることによってアイデアを視覚化し、改善点や生産が可能かどうかなどを検証することです。専門の異なる人々が、互いに意見を出し合いながら共に試行錯誤し、より優れた作品に仕上がる点が、このプロジェクトの醍醐味になっています。
これらのプログラムを通じ、大学側、企業側の双方のメリットを明確化することが、さらなる連携強化につながっていると言えます。
今回は、愛知県の大学の特徴を紹介しました。いずれの大学も、企業との連携を深め、大学単独ではなしえない研究や開発を実現しています。他のエリア別ランキングで興味の都道府県のランクイン大学も調べてみてはいかがでしょうか。新しい発見がありそうです。