社会で必要とされるグローバル視点と地域視点

 「グローカル」という言葉を聞いたことがありますか。これは、「グローバル」と「ローカル」を掛け合わせた造語で、「国境を越えた地球規模の視野と、草の根の地域視点双方で問題を捉えていこうとする考え方」(大辞林 第三版より)を指します。現在、様々な分野で、この「グローカル」の視点からアプローチする力が求められています。
 将来、海外で活躍したい、外国のことをもっと知りたいというアウトバウンドの側面だけでなく、訪日客や日本への留学生が増えて、地域におけるグローバル化も進む中、今後、ますます「グローカル」視点が重要になってくるでしょう。

Think globally, Act locally
「地球規模で考え、足下から実践しなさい」

 この視点を持つには、多文化理解や社会問題について、知識を得るだけではなく、身近なところから実践に移し、課題解決をしていく姿勢が必要です。

 では、「グローカル」な視点を持つ観点で、大学を見るには、どうすれば良いのでしょうか。
 THE世界大学ランキング 日本版では、分野別ランキングの「国際性」で、グローカルの視点に基づき様々なプログラムや取り組みを実践している大学が上位にランクインしています。具体例を見ながら、「グローカル」な視点を持つことの意義を考えてみましょう。

語学力で地域に貢献する私立大学

グローバル視点と地域視点をどちらも身に付けられる大学とは、どのような大学なのでしょうか。グローバル教育を充実させている「国際性ランキング」にランクインしている大学のうち、特に地域連携に積極的な大学を紹介します。

英語を使って商店街をアピール:大阪経済法科大学
 国際性ランキングで2位にランクインする大阪経済法科大学。グローバルキャリアプログラムを通じた積極的な国際交流や、留学に関する奨学金制度、海外インターンシップのプログラムなどが充実しています。そんな大阪経済法科大学は、大阪府八尾市にある唯一の大学として、積極的な地域連携事業を行っています。
 特徴的な取り組みの一例が、学生目線で八尾市の商店街をアピールする広報誌「やおセレクション」の制作です。誌面は学生が実際に商店街を回って取材した内容で構成。学生に向けたお店やイベントの情報をまとめ、クーポンも掲載しています。編集後記からは、学生たちが地域の人々の親切さや情熱に触れたことが伺えます。
 さらに、「やおセレクション」は簡単な英語版も作られています。これは、八尾市を訪れた外国人に向け、大学と地域が一体となってアピールするものであり、国際性ランキング上位の大学ならではの地域連携の取り組みだと言えます。

地域を盛り上げる拠点として貢献:聖学院大学
 聖学院大学は、国際性ランキング16位にランクインしています。ランクインの理由は、語学力の向上や専門分野の研究など、一人ひとりの目的や目標に合わせた多彩な留学プログラムや、学部横断的な語学教育により、グローバル視点を養っていることにあるようです。
 聖学院大学では、国際性ランキング上位という特徴を生かした、様々な地域貢献を行っています。
 例えば、聖学院大学グローバルキャンプ。これは、英会話教室の「イーオン」との産学連携プログラムで、地元から高校生・大学生・社会人の参加者を募り、英語漬けの5日間を過ごしてもらうものです。講師は、聖学院大学の教授と英会話イーオンの専任講師が務め、聖学院大学の学生や留学生も参加し、様々な講座・活動を「疑似留学体験」として行っています。
 大学側にとってもこの活動は、留学生の派遣を通じた教員の指導力の向上が見込めるほか、日本人学生の英語力の向上を図ることができるメリットがあります。

通訳ボランティアで地域貢献:神田外語大学
 神田外語大学は、外国語学部を持つ単科大学で、国際性ランキング19位にランクインしています。留学制度が充実しているほか、留学中の学費の減額や、最長1年間の留学をしても4年間での卒業を可能とするなど、グローバル教育に積極的です。その一方で、様々な地域連携の取り組みも行っています。
 例えば、ボランティアセンターを設置し、地域貢献活動の拠点として清掃活動、フリーマーケット、そして外国語学部のスキルを生かした通訳ボランティアなどを行っています。
 独自の取り組みとしては、地元のサッカーチームである、Jリーグの「ジェフユナイテッド市原・千葉」と連携した活動があります。具体的には、学生による外国人選手への通訳サポートや、外国人家族との交流会、サッカー教室などの開催です。これらの取り組みにより、大学は学生が英語を使う機会を提供するとともに、地域を盛り上げることに貢献しています。
 神田外語大学では、このように、グローバル教育と地域連携を融合させた取り組みを行い、学生が様々な経験を積む機会を設けていると言えます。

 学生が、地域との連携を通じ、グローバル視点を養っていけるよう、大学も様々な工夫をしています。今回は、国際性ランキングを参考に、地域との連携が深い大学を取り上げました。ランキングを見て気になる大学があれば、その連携内容についても調べてみると、新たな発見があるかもしれません。