「英語が話せる」のは当たり前の時代

 近年、小学校で英語教育が必修化し、大企業では社内公用語を英語にする取り組みが行われるなど、英語の使用を標準化しようという動きがあります。確かに、日本人の英語力は一般に低いといわれており、2016年度のTOEICテストの国別平均スコアは、データのある49か国中41位と低いため、高い英語力は日本の中ではアドバンテージになるといえます。
 また、ビジネスの場面では、グローバル化が進む中、日本企業は工場をアジア圏に移したり、海外展開して販売経路の拡大を図るなど、海外進出は増加傾向にあります。外務省の調査によれば、2011年から2016年までの5年間で海外進出した日系企業は約2割増です。そのような企業では、社内外を問わず、英語でのコミュニケーションは必須条件でしょう。
 一方で、実は世界には、共通言語といわれる英語よりも多くの人々に使われている言語が存在します。文部科学省によると、世界で最も話者の多い言語は中国語で、その使用人口は2005年時点で107,500万人に上ります。また、2位の英語には及ばずとも、3位のヒンディー語、4位のスペイン語も、新興国の人口増加を考えると、今後ますます話者の増える言語だと考えられます。
 また、国の公用語として英語の次に利用されているフランス語が話せるようになれば、世界100か国以上の人と会話できるようになります。このように、第二外国語を修得することにより、より多くの人とコミュニケーションが取れるようになるとともに、国際的に仕事ができる人材を目指すことができます。
 コミュニケーションの幅が広がることによって、多様な人々、文化に触れることにも繋がり、グローバル化の進行している現在、第二外国語を活用する機会は増えるといえます。

言語を通して世界を知る

 多くの大学では、英語以外の第二外国語を学ぶ機会を設けています。多くの学生が、高校までに触れたことのない選択肢を与えられると考えられますが、その言語の背景を調べ、自分の興味や目的に合った言語を選択・履修するべきです。なぜなら、言語を学ぶとともに、その言語を用いる国の文化も学べ、国際理解につながるからです。さらに、将来、外国語のスキルを生かした職業につきたいと考えている学生であれば、活用したい言語を学ぶことによって、より実践的で幅広い知識を身に付けられます。
 国際性ランキングにランクインしている大学は、海外に行かなくても学内にグローバルな環境を整えている傾向があります。その中でも特に、英語はもちろん、第二外国語教育にも力を入れている大学を紹介します。各大学ともグローバル化をふまえ、学部学科に関わらず国際社会で活躍できる人材の育成に向けた学びを展開しています。

実践的な語学能力育成を目指す:京都産業大学
 国際性ランキングの66位タイにランクインしている京都産業大学では、どの学部でも10言語の中から学びたい言語を選択でき、「使える言語」を身に付けることを目標としています。
 コンピューターで言語を学ぶCALL(Computer Assisted Language Learning)教室の活用や、ネイティブ教員が現地の文化を教える授業などにより、多様なニーズに合わせた語学力の習得が可能です。また、全ての言語で「エキスパート科目」が開講されており、4技能(聞く、話す、読む、書く)でコミュニケーションが十分取れる段階にまで成長できます。
 また、外国語学部では、10の専攻語を擁し、語学力をベースにした豊かな教養を育み、世界で通用する問題解決能力を養うことを目指しています。具体的には、プレゼンテーションやディスカッション形式の授業を多く取り入れ、外国文化への興味関心を深めるような環境づくりにも力を入れています。同時に、副専攻語として英語を指定し、高度な外国語運用能力の育成をしているのが特徴です。

多様な外国語の学びを提供する:桜美林大学
 国際性ランキング30位タイの桜美林大学は、学群や専修に関係なく、英語を含めた18言語の中から2言語以上を選択して外国語を学べます。講師の多くにネイティブスピーカーを採用し、実践的なコミュニケーション能力の育成や外国文化の理解を目指す一方で、習熟度別の6つのレベルに分かれた授業により一人ひとりに合った学修ができます。
 また、全学群を対象として、世界33か国153もの大学と提携した留学制度があり、学生たちは学びの目的や留学期間ごとに、各自のニーズに合ったプログラムを利用できます。英語圏以外にも多くの提携校があるため、英語以外の第二外国語の能力向上や各国の文化理解にも役立つでしょう。
 さらに、留学生700名を受け入れ、大学自体の国際化を図っています。留学生の生活サポートを日本人学生が行う「バディプログラム」により、実践的な語学力を身に付けることもできます。

中国語を中心としたアジア圏の言語教育に注力:亜細亜大学
 国際性ランキング11位の亜細亜大学では、アジア系の言語を中心とした14か国語の第二外国語教育を展開しています。柔軟なカリキュラムにより、希望すれば1年次から4年間、第二外国語を履修することができ、それぞれの目的に合わせた段階的学修が可能です。
 また、多様な留学支援制度により卒業生の約7人に1人が留学を経験するなど、実用的な外国語能力を身につけるのに適した環境といえるでしょう。もちろん英語教育にも力を入れており、1年生では週5日のカリキュラムが組まれ、着実な英語力向上を目指しています。
 亜細亜大学独自の取り組みとしては、「アジア夢カレッジ」による実践的な中国語教育があります。希望者による文科系4学部共通のプログラムで、少人数制、産学連携教育を軸とした密度の高い中国語教育を推進しています。2年次では5か月間の中国留学を行い、語学力はもちろん国際的な視点を持った人材育成を目指しています。そのうちの1か月は、中国でのインターンシップを行い、ビジネスの面でも活躍できる力を育んでいます。これまでに30近くの企業が協力しており、学生一人ひとりの主体的な学修が望めます。

 このように、各大学は、様々な第二外国語学修プログラムを含め、グローバル社会で活躍できる人材育成を行っています。国際性ランキングに気になる大学があれば、その大学が語学教育でどのような取り組みをしているかを見ると、大学選びに新たな発見がありそうです。