日本版ランキング上位3大学にみる課題

 日本版ランキングの総合ランキングは、東京大学が1位、東北大学が2位、京都大学が3位。国内最高峰の大学として選ばれた「指定国立大学」3大学は、教育力においても日本のトップ3に位置しています。
 分野別ランキングを見ると、「教育リソース」「教育満足度」「教育成果」は3大学ともすべて4位以内。しかし、「国際性」のみ40~60位の範囲にあり、今後、世界の大学との競争を勝ち抜いていくために、伸ばすべきポイントと言えるかもしれません。
 なお、世界ランキングでは、東京大学が46位、東北大学が201-250位、京都大学が74位タイとなっています。

教員の目が届きやすい少人数制の教育環境<東京大学>

 東京大学の分野別ランキングを見ると、「教育リソース」「教育満足度」「教育成果」において、それぞれ2位、2位、1位と高い順位を獲得しています。このうち「教育リソース」のスコアを押し上げている要素として、教員1人当たりの学生数があります。2017年では、1・2年生の学生数約6,600人に対し、教員数は約490人で、教員1人あたりの学生数は約13.5人。きめ細かい指導が期待できます。
 さらに、ゼミや研究室に所属する前でも、教員とコミュニケーションを取りやすい環境が実現しています。例えば、1年次必修の「初年次ゼミナール」は1クラス20人程度で、ほとんどの授業に大学院生のTA(ティーチング・アシスタント)がつきます。学生は、クラスごとに教員が設定した課題に挑戦。インタビュー、モノづくり、文献調査などを行い、プレゼンテーションや小論文の形で発表します。受け身の授業スタイルではなく、自ら学ぶ姿勢を身に付けることが目的です。
 「国際性」は54位ながら、「教育満足度」は2位で、外国人の学生・教員の比率はトップレベルではないものの、グローバル人材の育成には力を入れていることがわかります。特に近年は、英語を使う授業を拡充させています。論文執筆やディスカッションなどを英語で行う技術を学ぶALESS(理科生対象、2008年開講)、ALESA(文科生対象、2013年開講)、FLOW(全学生対象、2015年開講)は1年次の必修科目です。2014年度にスタートしたGLP(Global Leadership Program)は、選抜された約100人の学生(主に3年生)が、地球規模の課題についてテーマ設定し、研究結果をプレゼンテーションする、実践的な科目です。

グローバル人材を育てる取り組みが充実<東北大学>

 世界ランキングでは東京大学、京都大学にやや順位を離されている東北大学ですが、日本版ランキング2018では東京大学に次ぐ2位という結果になりました。その要因として、「国際性」が3大学の中で最上位であること、日本版ランキングが特に注目する分野である「教育満足度」で高いスコアを得ていることが挙げられるでしょう。「教育満足度」の基準には<グローバル人材の育成>があるため、「国際性」の結果と併せて考えると、世界に通用する人材の育成力に長けていると言えそうです。
 海外の大学と交流する際の拠点は、世界16か所にある海外オフィスです。学内の環境に目を向けると、外国人留学生を約2000人、外国人研究者を約2600人受け入れ、異文化交流を行うチャンスが豊富にあります。国際学生寮である「ユニバーシティ・ハウス」は2018年10月までに新たに全6棟が建設され、旧施設と合わせて定員は日本人学生計841人、外国人学生計751人になる予定です。
 教育のしくみの中でユニークなのが、「TGLプログラム」です。プログラムの目的は、専門基礎力と、それを発揮してグローバルに活躍するための力を身に付けること。学部やセンター等が提供する授業のうち、語学・コミュニケーション力、国際教養力、行動力を培う授業と、各種海外研修・留学プログラムにポイントが定められ、取得したポイント数に応じて「東北大学グローバルリーダー認定証」や「TGLプログラム修了証」を取得することができます。
 海外研修・留学については、それらを経験した先輩がこれから留学に挑む後輩をサポートする「グローバルキャンパスサポーター」制度があり、海外に挑戦する後輩を助けています。

学びに向かう姿勢を身につけ社会で活躍<京都大学>

 京都大学は、「教育成果」が2位タイと高いため、研究者や企業人事からの評判が良いことがわかります。この評判を支えているものは何でしょうか。
 京都大学の特徴の1つに、大学院進学率の高さが挙げられます。2016年度卒業の学部生の大学院進学率は、東京大学の49.9%、東北大学の55.4%に対し、京都大学は58.4%。研究志向が強く、積極的に学びに向かう学生が多いことがうかがえます。大学としても、大学院の門戸を広く保ち、学部生の入学定員2,823人に対し、大学院修士課程の入学定員は2,261人(いずれも2017年度)と、受け入れ体制が整っています。
 さらに、2017年度の間接経費を含む科研費は、東大に次いで2位の135億円でした。研究環境も非常に充実していると言えるでしょう。
 こうした環境の中で培われた「学ぶ姿勢」が、研究者や企業の人事担当者に好印象を与えているのだと考えられます。京都大学ならではの、「学ぶ姿勢」を身に付けるために設けられているのが、主に1年生が履修する授業「ILASセミナー」です。5~25人程度のクラスで、問題を発見し解決するという学問のプロセスを体験します。扱われるテーマは幅広く、2017年度は文理問わず、様々な領域の306科目が開講されました。学生同士が議論し、教員の問いかけに答える中で、研究力の土台を築きます。
 キャリアサポートルームがインターネット上で公開している「就職のしおり」には、学部、大学院ともに各年度の卒業生の就職先が公開されています。大手企業や官公庁のほかに、中小企業の名前も多く挙がっていて、自分の意思でやりたいことや将来を追求していく学生を尊重する校風が表れています。