上位2校の外国語の講座は8割以上
日本版ランキング2018の調査過程で収集されたデータのうち、「外国語で行われている講座比率」のデータ上位50校が日本版ランキングの「Official Guide 2018」の誌面に掲載されています。これは、すべて外国語で実施している講座数(語学を除く)を全講座数で割って算出された数値によるものです。
このランキングで1位の立命館アジア太平洋大学と2位の国際教養大学では、8割以上の授業が外国語で行われています。3位の会津大学は60.4%ですが、4位以下は4割未満で、上位3校とは差がついていることがわかります。
就職や研究で国際的に結果を出す
外国語で行われている講座の比率が高いということは、外国人学生にとって、学びやすい環境が整備されていると言えます。さらに、日本人学生にとっては、グローバルな環境に身を置くことができるため、語学力向上や異文化理解につながるでしょう。
しかし、グローバル社会で活躍できる素養を身に付けるためには、高い語学力に加え、それをどのように活用し、社会に役立てていくかという力も必要です。そこで、外国語で行われている講座の比率ランキングと「教育成果」ランキングを併せて見てみると、グローバル人材を育成し、社会に送り出している大学かどうかを判断できます。
「外国語で行われている講座比率ランキング」を設置区分別に見てみると、国立大学が20校、公立大学が4校、私立大学は26校がランクインしています。トップ50に入っている大学のうち、教育成果ランキングも上位の国立大学3校の取り組みを紹介します。
九州大学(福岡県)
外国語で行われている講座の比率ランキング23位の九州大学には、全て英語の授業だけで学位を取得できるプログラムが、工学部、農学部の2学部で設置されています。九州大学は学生全体の約3分の1が工学部生であり、様々な領域を学べる九州大学の中でも代表的学部で、留学生にも学びやすい環境を提供するという取り組みになっています。このプログラムが、「9人に1人は留学生」という九州大学の留学生比率を押し上げています。
また、九州大学では外国人留学生のほか、博士人材、障がいのある学生、地方公務員志望者、中央省庁志望者など、様々な学生に寄り添った手厚い就職支援が行われています。1年を通して様々なセミナーや講座を開催しが行われ、日本で就職したい外国人留学生向けのビジネス日本語やマナー講座、研究型インターンシップの報告会など、きめ細かい就職支援プログラムを整えていることが「教育成果」の秘訣でしょう。
2018年度に設置された「共創学部」は、自ら学ぶ姿勢を重視し、「能動的学習能力」「課題構想力」「協働実践力」「国際コミュニケーション力」を軸に新たなイノベーションの創出を担う人材の育成を目指しています。学生には海外大学への留学等が義務付けられるほか、日本人学生と外国人学生がともに学ぶ授業を積極的に行うことによって、これからの社会を牽引する人材を育てます。
東京大学(東京都)
外国語で行われている講座の比率ランキング38位タイの東京大学は、英語のみの授業で学位をもらえる「PEAK(教養学部英語コース)」の実施が、ランクインの要因と考えられます。
注目すべき取り組みは、国際社会における指導的人材を育成することを目的に2014年度より行われている「グローバルリーダー育成プログラム(GLP)」です。将来的には、国際機関やグローバルに展開する企業での活躍につなげる取り組みで、このプログラムには、大手企業も後援・協力しています。参加学生たちは、実践研究や海外プログラムなどを通じ、実践的な英語力、発想力、高いアウトプットの力を身に付けることができます。
また、海外のオフィスや海外で活躍する日本人の業務を間近に見られる「海外企業体験活動」も推進されています。上限50万円の金銭的支援を受けることができ、グローバルキャリア形成のきっかけになる体験をできるでしょう。これらの取り組みの結果、東京大学は教育成果ランキング1位になっています。
東北大学(宮城県)
東京大学と並んで、外国語で行われている講座の比率ランキング38位タイの東北大学では、東北大学グローバルリーダー育成プログラム(以下、TGL)で、学生の積極的な国際経験を促進しています。TGLプログラムは学部学生を対象とした登録制のグローバル人材育成プログラムです。高い専門基礎力を前提に、「語学・コミュニケーション力」「国際教養力」 「行動力」を養う授業や講座・セミナー等からなるサブプログラムと、「海外研鑚」サブプログラムを設けています。指定する科目の履修や課外授業等への参加により所定の条件を満たした学生には、東北大学グローバルリーダー認定証又はTGLプログラム修了証が授与されます。
TGLプログラムに参加している学生は、「TGL folio(ポートフォリオ)」を活用し、日頃から自身の活動や学修成果を記録しています。これにより、現状を理解し、主体的な学修の振り返りや目標設定を行う意識を高めることができます。そのほか、担当アドバイザーが継続的な学修支援を行い、グローバルキャリアなどに関する情報も収集しやすくなっています。
紹介した3大学では、就職や研究で国際的に結果を出すための取り組みを積極的に行っていることがわかります。複数の分野別ランキングを横断的に見ていくと、大学の新たな側面を発見できるでしょう。