私立外国語大学の教育成果に注目
日本版ランキング2018では、前年のランキングから一部の指標が変わりました。具体的には、全体に占める「国際性」の割合が増加し、「国際性」分野には「日本人学生の留学比率」と「外国語で行われている講座の比率」という2つの項目が加わりました。そのため、大学の教育力がより反映されたランキングになっています。
この変更の結果、日本版ランキング2018では、外国語大学が躍進しました。総合ランキングに、外国語大学から6校がランクイン。そのうち4校が私立です。
総合ランキングにランクインした外国語大学は分野別ランキングの「教育成果」でもランクインしています。学生の語学力を伸ばすだけではなく、修得した語学力を社会で生かせる人材を輩出していると言えるのではないでしょうか。
生きた英語を学んだ人材を航空業界に輩出
私立の外国語大学の特徴の1つとして、語学力を生かせる職業である航空業界、旅行業界、ホテル業界への就職実績が高いことが挙げられます。各大学で、これらの業界への就職を支援する様々な取り組みを実施していることがわかります。
ここでは、大学のビジョンやアクションプランの中で専門的職業への就職支援を掲げている関西外国語大学と名古屋外国語大学の取り組みについて紹介します。
関西外国語大学
分野別ランキングの「国際性」35位、「教育成果」76位の関西外国語大学では、「関西外大ルネサンス2009」の中で掲げたビジョンの6つの柱の1つに「高度な専門職業人育成へのアプローチ」を掲げ、キャリア教育の充実に注力しています。そのため、学生一人ひとりが自ら将来を見据えて「+αの学び」を選択するコース制を導入し、国際的な視野で活躍することができる専門職業人を育成しています。
語学力を生かした職業人育成の例としては、航空業界への人材輩出が挙げられます。朝日新聞出版『大学ランキング2019』によると、関西外国語大学のキャビンアテンダント採用者数(2017年)は102人で、全国で1位を誇ります。
キャビンアテンダント採用者数全国1位の背景には、様々な業界を志望する学生に向けたイベントや資格取得のための講義等の取り組みがあります。中でも、全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)2社からOB・OGや内定者などを招いて行う「関西外大エアラインフェアin collaboration with ANA&JAL」は大規模なイベントです。航空業界に対するイメージを具体化することによる、学生のモチベーションアップを目的としたもので、2017年には、約600人の学生が参加しました。
また、授業科目の中にもエアライン、ツーリズム、ホテル業界それぞれの仕事で使える実務的な英語を学ぶことができます。そのほかにも、ANAのエアラインスクールと教育連携協定書を締結して、キャビンアテンダント養成プログラムの6日間集中講義等も開催しています。夏休み期間に開催されるこの講義で、学生はビジネスマナーやサービスの基本からエントリーシートの書き方まで就職活動に役立つ情報を得ることができます。
ほかにも、関西外国語大学では、キャンパス内に本物のホテルのフロントを模したホテル演習室や、旅客機の機内を模したエアライン演習室を設けています。
名古屋外国語大学
名古屋外国語大学は、分野別ランキングの「国際性」8位、「教育成果」144位に、それぞれランクインしています。
名古屋外国語大学は、アドミッション・ポリシーの中で、「グローバル人材の養成に向けて、世界を舞台に活躍できる豊かな個性と人間味に溢れ、国際感覚を身につけた人材を育てること」を掲げています。また、アクションプランの中で、エアラインやマスコミ関連など、専門的職業への就職支援をさらに充実させることを宣言しています。具体的には、「エアラインドリカムプラン」として、授業、キャリアサポート、学生の活動という3つの面から航空業界への就職を支援します。
名古屋外国語大学では、航空会社と連携した「エアライン・ホスピタリティ科目」を正課の授業として開講しています。この科目では、航空業界、旅行業界、ホテル業界への就職を目指す学生が、様々なサービス業に通じる「ホスピタリティ(おもてなしの心)」をサービス・接客業務の基礎知識を中心に学ぶ科目です。また、「エアライン・トレーニング・スタディ」は、訓練の厳しさや旅客機の安全運航の重要性を認識することを目的とした体験型プログラムです。外資系航空会社が乗員訓練で実際に使用するオーストラリアやマレーシアの正規訓練施設を使います。様々な実習を英語で行うため、生きた英語を学び実践する場にもなっています。
さらに、「パワーアップエアラインプログラム」として、採用試験突破に向けた資格別・志望業種別対策講座を開講しています。そのほか、航空・旅行業界を目指す学生たちが自発的に設立した業界研究グループ「NUFS AIRLINES」が積極的に活動していることも特徴の1つです。
教育理念に基づく教員の育成
私立の外国語大学では、語学力を必要とするサービス業界のほかにも、教員を目指す学生も多くいます。そこで、教育理念や建学の精神に基づいた教員の養成を行っている神田外国語大学と京都外国語大学の取り組みについて紹介します。
神田外語大学
分野別ランキングの「国際性」15位、「教育成果」71位タイにランクインしている神田外語大学は、「言葉は世界をつなぐ平和の礎」をテーマに、世界の懸け橋になる人材を育成しています。そのため、「高い語学力を養うとともに、使命感を持って教育に職を求める姿勢を育み、コミュニケーションのとれる人間性を育てること」に重点を置いた教員養成が行われています。
神田外語大学は英語教員の道へ進んだ卒業生が多く、千葉県内だけでも200名以上います。神田外語大学が多くの英語教員を輩出する秘訣は、今後の英語教育者に必要とされる「英語で英語を教えられる力」を持つ学生を育てる教員養成にあると言えます。
授業は「言語+α」「少人数」「参加型」「実践的」の4つのポイントがあり、専門的かつ実践的な内容になっています。具体的には、言語だけでなくその国の背景までも総合的に学び、各国と地域の歴史や文化、政治経済などを専門的に学べる4つの研究コースがあります。そのため、学生は将来、教員になって言語を教える際、生徒に対してその言語が持つ背景までも伝えられる知識を得ることができます。
また、英語に限らず、スペイン語・中国語・韓国語の高等学校教諭一種免許状が取得できる専攻がある点も魅力の1つです。どの学科でも中学校・高等学校教諭一種免許状が取得できるほか、日本語教員養成課程・児童英語教員養成課程も開設され、学生のニーズに合わせて、教職課程を選ぶことができます。
京都外国語大学
京都外国語大学は、分野別ランキングの「国際性」6位、「教育成果」135位にランクインしています。
「PAX MUNDI PER LINGUAS―言語を通して世界平和を―」を建学の精神とする京都外国語大学では、実践的な外国語運用力の育成、コミュニケーション力、多文化共生実現力の3つの力の強化を図っています。その中で、教職課程では、教員となった卒業生が日本から世界へ、また世界から日本への橋渡し役となること、また、その児童生徒が、今後求められる諸課題に真摯に向き合うとともに、日本から世界へ、世界から日本への次世代の橋渡し役として育つことを目指しています。
実際に、密度の濃い授業と教職員のサポートで、2017年度の教員採用試験では合格者63名という高い実績を誇っています。大学の教職課程では外国語というと英語が一般的ですが、京都外国語大学では、英語以外にポルトガル語やドイツ語など専攻する言語の中学校・高等学校教諭一種免許状が取得できるのが特徴です。
また、京都外国語大学には、「英語教員養成インテンシブ」コースが設置されています。その中で学生は、インターミディエイトレベル(中・上級者)のクラスで学習を進め、英語教員に必要とされる実践的な英語教育力を養うことができます。
そのほか、独自の教員養成塾「教師志塾」や教職サポートルームを通じて、教職を目指す学生同士が切磋琢磨し、相互に高め合う環境を整えています。
いずれの大学も、外国語大学という特徴を生かしたカリキュラムで、学生たちが将来進みたい業界に特化したユニークなキャリア教育を実施していることがわかります。イメージだけにとらわれるのではなく、分野別のランキング・スコアにも注目してみると新たな発見があるでしょう。