女子大学のランクイン状況

 日本版ランキングの総合ランキングにおける、女子大学ランクイン数は2017年の5校から2校増加し、2018年では7校となりました。なお、女子大学がランクインしているのは、教育力にフォーカスを当てた日本版ランキング特有の状況です。
 各スコアを見てみると、女子大学のランクイン要因は、分野別の国際性と教育充実度のスコアが高いことだとわかります。なぜ、女子大学は国際性のスコアが高くなっているのでしょうか。
 日本学生支援機構(JASSO)の、「協定等に基づく日本人学生留学状況調査結果」によると、日本人留学生の女性比率は62%(2016年度)で、男子学生よりも女子学生の方が留学を経験する比率が多いとわかります。つまり、女子学生の方が男子学生よりも国際交流に積極的と言えます。一方で、女子大学は、女子にとって魅力のあるカリキュラム編成やサポート制度に力を入れます。つまり女子学生のニーズに応えるためには、国際交流の機会やグローバル教育のプログラムを提供することになります。中には、独自の強みを生かした国際交流プログラムを設置する大学もあります。これが、国際性スコアが高い要因と言えるでしょう。
 次に、女子大学の教育充実度スコアが高い傾向にあることの要因を考えてみましょう。教育充実度スコアは高校教員の評判調査を基準とするもので、グローバル人材育成の重視、入学後の能力伸長が同じ割合で考慮されます。そのため、高大連携の取り組みの中で、高校生の進路指導をする高校教員の印象に残りやすく、それが評判調査で良い結果を出すことにつながったと考えられます。

ランクインした女子大学の取り組みを紹介

 それでは、東日本の女子大学で、総合ランキング上位にランクインした3大学の、各分野のスコアに注目し、特徴的な取り組みを見ていきましょう。

少人数教育と体系的な能力開発:お茶の水女子大学
 総合ランキング32位のお茶の水女子大学は、教育リソースにおいて40位タイにランクインしています。教員1人当たりの学生数14.80人という、学生の様々な興味にも教員がしっかりと向き合える環境を生かし、「問題関心の広げ方、専門の深め方、固有のテーマの発見の仕方についても自由度の高い学び」を実現しています。お茶の水女子大学では「少人数教育による個性の育成」を特徴とする教育体制を反映していると言えます。
 また、教育充実度では55位にランクインしています。約140年にわたる女子高等師範学校の伝統を持つお茶の水女子大学では、リーダーシップ、キャリア教育など、学問だけでない包括的な能力開発に取り組んでいます。2015年には「グローバル女性リーダー育成研究機構」を設置し、入学後から始まる体系的な「キャリアデザインプログラム」を通して、自分自身を、そして社会を変えられる女性への成長をサポートしています。
 具体的には、「キャリアデザインプログラム科目群」「コンピテンシー評価プログラム」が挙げられます。
「キャリアデザインプログラム科目群」は、主体的に講義や学生生活に取り組むための思考力や行動力を育てるプログラムです。このプログラムでは、企業などからゲストを招いての実際的な課題制作やIT機器を活用したグループワークなどの課題解決型学習が行われています。いずれも、世の中で実際に起こっている困ったことについて思考を巡らせます。
 その成果を学内のオンラインシステム「My Portfolio」を使って振り返り、次の計画を立てるというサイクルによって、「課題を発見し知識や技能を状況に応じて組み合わせ成果をあげる包括的能力とその行動特性」であるコンピテンシーの開発を行うのが、「コンピテンシー評価プログラム」です。
 これらの取り組みにより、社会で実践的に使える体系的な能力開発を行うことが、学生の能力伸長に関するスコアにつながったと考えられます。

目的意識の高い生徒・学生に応える取り組み:津田塾大学
 津田塾大学は、総合ランキングでは55位タイと上位にランクインしています。さらに、教育充実度ランキングでは女子大学で1位を誇ります。ランクインの秘訣は、積極的な高大連携によって高校教員の支持を得ていることだと考えられます。
 津田塾大学では、都内の高等学校と高大連携協定を結び、高校生の受講希望者を受け入れています。受講者となった生徒は、通年または半期の「科目等履修生」として、高大連携開放科目の中から、希望する授業を在学生と一緒に受講します。期末には、試験やレポート課題にも取り組み、出席日数も合わせて成績評価を受けます。高校生が授業を体験できる大学は他にもありますが、成績が出されるというのは珍しい取り組みです。
 また、国際性ランキングでは46位タイにランクインしています。創設者である津田梅子氏の意思を引き継いだ国際交流や留学・外国語プログラムが充実していることがその理由です。
 津田塾大学では、第2タームと夏休みを合わせた「ギャップターム」の期間を利用した海外体験を奨励しています。ギャップタームの学外学修の体験記からは、学生達が自身の将来の夢や学びたい学問などの具体的な目的意識を持ち、留学や海外活動を通してその後の学生生活やキャリアの原点になるような経験をしていることが伺えます。津田塾大学は、学生たちにサマースクール、インターンシップ、サービスラーニングなど様々な機会を提供し、大学生活で有意義な「学び」を得るための環境づくりを徹底していると言えます。

キャンパス内での語学習得・国際交流体験に積極的:東京女子大学
 総合ランキング98位の東京女子大学は、分野別ランキングの教育充実度では80位、国際性では96位タイにランクインしています。東京女子大学のグローバル教育の特徴として、キャンパス内での語学習得・国際交流体験に積極的であることが挙げられます。
 その取り組みの1つに、「キャリア・イングリッシュ・アイランド」があります。これは、学内の「アイランド」と呼ばれる拠点を中心に、英語学習やキャリア形成のためのさまざまなセミナーやイベントを行うものです。これらには、全学生が自由に参加できます。例えば、ネイティブスピーカーによる英会話トレーニングでは、大学の英語教員、提携した英会話学校のプロフェッショナル、外国人留学生という、話し相手の異なる3種類の企画が実施されています。学生は日常会話から国際問題、TOEFL Speakingのトレーニングまで、自分の目標や英語力に合わせたトレーニングを受けることができます。
 また、学生が所属する学科の科目に加えて履修できる「キャリア・イングリッシュ課程」というプログラムが設けられている点も特徴です。このプログラムでは、1年次の希望者の中から、選抜を経て課程登録をした学生を対象に、演習を基本とした授業が実施されます。これにより、2年次以上の課程で、英語力はもちろん、国際社会で活躍するための心構えや考察力、コミュニケーション能力などを育成しています。
 さらに、留学生と日本人学生が共同生活を送る「桜寮」もあります。東京女子大学では、留学生を積極的に受け入れ、さらに日常的な国際交流が行われる環境づくりを目指していると言えるでしょう。

 女子大学は、共学の大学と比べて、より創設者の意思や教育理念が国際交流や教育などの様々な面に反映されていることが多く、ユニークな取り組みが多く見られます。ランキングで気になる大学があれば、その理念についても調べると、大学への理解を深めることができるでしょう。