「教育リソース」分野のランキングと大学の研究力の関係

 日本版ランキング2018では、大学を多面的にスコア化し、それを基に4つの分野別ランキングを発表しています。
 分野別ランキングの1つである「教育リソース」分野のランキングでは、「どれだけ充実した教育が行われている可能性があるか」が読み取れます。このランキングの指標項目は5つあり、それぞれ「学生一人あたりの資金」「学生一人あたりの教員比率」「教員一人あたりの論文数」「大学合格者の学力」「教員一人あたりの競争的資金獲得数」です。このように、「教育リソース」分野のランキングは、その大学で行われている研究にも焦点を当てています。したがって、その大学で研究がどれだけ盛んに行われているかを知るためにも参考になります。
 大学の研究では、iPS細胞やロボットといった、いわゆる「理系」の研究がニュースなどでよく話題に上がります。しかし、いわゆる「文系」の研究の中にも、社会に役立ち、学生を成長させる研究が数多くあります。
 そこで、「教育リソース」分野のランキングにランクインしている大学の中から、人の営みや社会について研究する社会科学系の学問で特徴的な研究を行う国立大学をピックアップして紹介します。

社会科学分野で特徴的な研究を行う国立大学

佐賀大学:学生が企業や行政と連携して研究を行う
 佐賀大学は、「教育リソース」分野のランキングで59位タイです。佐賀大学経済学部の地域経済研究センターでは、2016年度から、3つの研究ユニットのもと、それぞれの研究目的に応じた調査・研究を実施しています。
 その中の1つである「学生チャレンジ地域連携プロジェクトユニット」(2017年度に、ゼミプロジェクト研究ユニットから名称変更)は、学生の主体的な問題意識に基づいた研究を行う組織です。学生たちは、担当の教員の指導のもと、企業や行政などと連携しながら、課題の解決を目的とした調査・研究を行います。
 「学生チャレンジ地域連携プロジェクトユニット」で、学生は、数人から十数人程度のグループで、経済学・経営学・法学の視点から、地域の課題に取り組んでいます。2017年度には、唐津市旅館協同組合や嬉野温泉旅館組合と連携した、「佐賀県の宿泊施設の外国人旅行者受け入れに関する研究」や、日本政策金融公庫佐賀支店と連携した、「個人投資家の行動・意識についての研究」などを行いました。学生たちは調査・分析をし、最終報告論文にまとめるほか、報告会で発表もします。
 このように、学生主導の研究チームが、教員だけではなく企業や行政と連携して研究活動を行うことは、特徴的な取り組みだと言えます。

島根大学:出雲文化や島根の地形を生かした研究
 「教育リソース」分野のランキングで87位にランクインした島根大学では、島根県の文化や地形を生かした研究が行われています。
 その中の1つに、「くにびきジオパーク・プロジェクト」があります。ジオパークとは、地球科学的に価値の高い地質・地形のある自然遺産を保護・保全し、地域の持続可能な開発をめざす活動です。自然遺産は教育や防災活動、観光活動にも活用されます。
 「くにびきジオパーク・プロジェクト」の「くにびき」とは、島根県を含む山陰地方に伝わる「国引き神話」に由来します。このプロジェクトは、ジオパークの考え方を、島根県の出雲地域に応用したものです。古代から伝わる神話などの出雲文化や、島根県の多様な動植物や鉱物資源を利用して発展してきた産業を、地球科学・生態学・歴史・文化といった学際的な視点でとらえ、研究・教育・普及活動を進めています。
 2013年には、島根大学総合理工学部地球資源環境学科のメンバーが中心となり、中国地質調査業協会島根県支部および協同組合島根県土質技術研究センターと連携して「島根ジオサイト地質百選」を選定しました。百選のうちの、出雲地域の地質学的・文化的に意義の大きい、くにびきジオパーク構想地域に関わるスポットは、「山陰・島根ジオパーク構想」プロジェクトセンターのホームページに掲載され、情報が閲覧できるようになっています。

三重大学:伊賀の歴史から「忍者」を学術的に研究
 三重大学は、「教育リソース」分野のランキングで92位にランクインしています。かつて伊賀流忍術が栄えた地にあり、忍者にちなんだ珍しい研究が行われています。
 三重大学人文学部人文社会科学研究科は、上野商工会議所、および伊賀市と連携して「伊賀連携フィールド」として活動しています。伊賀連携フィールドは、地域貢献の取り組みにより、伊賀地域の充実・発展をめざしています。その一環で、「伊賀連携フィールド忍者文化協議会 」 の一員として、忍者に関する学術的研究を行っています。「忍者」の存在は世界的に有名ですが、これまで「忍者」が学術的に研究されることは、ほとんどありませんでした。そのため、「忍者」を取り上げるこの研究は、特徴的な取り組みだと言えます。伊賀連携フィールド忍者文化協議会では、これまで、イギリスやスペイン、ブルガリアなど様々な外国に赴いて、忍者についてのレクチャー・デモンストレーションを行っています。
 また、三重大学人文学部人文社会科学研究科では、忍者にかかわる日本国内・海外の資料のデータベース化にも取り組んでいます。今後は小説・テレビ番組・映画などの情報も網羅し、「忍者」に対する現代のイメージまでを含めた包括的なデータベースを構築することを目指しています。

 社会科学系の研究で特徴的な取り組みを行っている大学は、他にも数多くあります。日本版ランキングでは、「人文科学」「法学」など、その学問分野が学べる大学別で検索ができるようになっています。