クォーター制のメリットと導入状況

クォーター制とは?
 クォーター制とは、1年間を4つの学期に分けて授業をするシステムです。
 日本の大学が取り入れている学期制には、他に「2学期制(セメスター制)」「3学期制(トリメスター制)」があります。まず、これら3つの制度を比較し、クォーター制の特徴を見ていきましょう。

【2学期制】
 1年間を2つの学期に分ける2学期制のことです。一般的に、前期の4月~8月初旬、後期の10月~2月初旬で履修します(学期の初めと終わりの時期は大学によって異なります)。学生は、1つの科目を1週間に1時限ペースで受講し、約4か月でカリキュラムを修了します。

【3学期制】
 1年間を3学期に分ける制度です。一般的に、1学期は4月~7月下旬、2学期は9月~12月、3学期は1月~3月としています。

【クォーター制】
 1年間を4つの学期に分ける4学期制です。一般的に、春学期の前半が4月〜6月初旬、春学期の後半が6月中旬~8月中旬、秋学期の前半が9月後半〜11月中旬、秋学期の後半が11月下旬~2月中旬というように、1年間で4つの履修時間割を組みます。1つの科目を1週間に2、3回ペースで受講し、約2か月で1単位を修得します。

 続いて、クォーター制のメリットを見ていきましょう。

クォーター制のメリット①短期間で、濃密な学習を、自由度高く
 クォーター制のメリットの1つは、学生が1単位分の授業科目を短期間で履修することができるという点です。
 セメスター制では1つの授業を初回から最後まで受けるのに約4か月かかりますが、クォーター制では約2か月で授業が完結します。そのため、集中的な学習が期待できます。
 また、クォーター制では1年間を4回に分けて授業を行うため、柔軟な履修計画の立て方が可能になります。履修計画を立てる際、学生にとって興味のある授業でも、授業が開講する時間割が他の必修授業と同じであると受講できないということが起こり得ます。その点を考慮すると、クォーター制では1年間に4回の履修機会があるため、より多くの種類の授業を履修することにより幅広い学びができます。

クォーター制のメリット②海外への留学がしやすい
 クォーター制のメリットの2つ目として、留学のしやすさが挙げられます。クォーター制をアメリカの大学の学期制度と比較すると、セメスター制採用校への留学のしやすさがわかります。
 
【セメスター制を取り入れている米大学の学事暦】
秋:9月初旬~12月初旬
春:1月初旬~5月初旬
サマースクール:6月中旬~8月中旬

【クォーター制を取り入れている米大学の学事暦】
秋:9月末~12月中旬
冬:1月初旬~3月末
春:3月末~6月初旬
夏:6月中旬~8月中旬

 セメスター制をとっている大学のサマースクールと、クォーター制大学の夏学期に注目してください。どちらの学事暦でも、日本のクォーター制大学であれば、夏学期を利用して6月~8月に留学ができます。

 それでは、次にクォーター制が日本の大学制度にどれほど浸透し、効果を発揮しているのかを見ていきましょう。THE世界大学ランキング日本版2018の「日本人学生の留学比率ランキング」では、上位51校のうち14校がクォーター制を取り入れています。
 「日本人学生の留学比率ランキング」のうち、2018年度にクォーター制または3学期制を導入している大学は以下のとおりです。

東京外国語大学、関西国際大学、福岡女子大学、国際基督教大学(3学期制)、芝浦工業大学、お茶の水女子大学、立命館アジア太平洋大学、横浜市立大学医学部(3学期制)、九州工業大学、東洋大学、南山大学(1部科目のみ)、関西医科大学(3学期制)、宮崎大学(1部科目のみ)、愛媛大学

 日本の大学では以前からセメスター制が主流ですが、特に日本人学生の海外への留学に熱心な大学では、クォーター制を取り入れる動きがあるようです。

クォーター制を取り入れた大学の取り組み

 日本人学生の留学比率ランキングにランクインし、クォーター制を導入している大学の中から、特徴的な取り組みを紹介します。

芝浦工業大学
 芝浦工業大学では、2015年から、工学部電気工学科の3年生に限り、前期のみ実質的にクォーター制が導入されました。このことにより、多くの国々で夏期休暇となる6~8月に行われる短期留学プログラムへの参加がしやすくなっています。また、外国人留学生の受け入れが容易になったため、同学科では2015年7月前半にハノイ理工科大学への派遣プログラムを実施しています。
 芝浦工業大学は、2014年度に文部科学省から私立理工系大学で唯一のスーパーグローバル大学に指定されました。以降、留学制度と国際化事業が活発化しています。「学生のうちに海外経験を」のコンセプトのもと、2013年には1.7%だった留学経験者の割合を、2023年までに100%まで増やすことを目標とするなど、日本人学生の海外への留学に熱心であるといえます。
 また、将来エンジニアとして必要なスキルを身に付けるグローバルPBL(Project-Based Learning)、海外インターンシップなど、海外の学生との問題解決型学習を通した産学官連携による人材育成を推進し、2017年までの4年間で海外への人材派遣数を5倍、受け入れ数を3.6倍に増加させました。

九州工業大学
 GCE(Global Competency for Engineer:グローバルエンジニア)育成のため、九州工業大学では留学を推奨しています。そのための取り組みとして、クォーター制が導入されました。
 九州工業大学では、夏季休暇や春季休暇の短期間を利用して集中的に言語取得や研究ができる「モビリティープログラム」と、1~2学期間、留学先で集中的に専門分野や研究に打ち込む「交換留学制度」を導入しています。
 「モビリティープログラム」は、「派遣型」と海外から留学生を迎える「受け入れ型」の大きく2つに分けられます。派遣型では、大学が用意した留学プランの中から、学生が自分に合うプログラムを選択して留学できる制度です。また、留学の補助金があるプランを選択できる点も特徴です。
 一方、留学生を迎える受け入れ型の「モビリティープログラム」では、留学生がキャンパスで日本語を学んだり、北九州周辺都市の工場見学や施設見学により日本の技術を体験的に学んだりすることができます。さらに、留学生が研究室や学生プロジェクトのメンバーと交流したり、日本の学生との異文化交流プログラムに参加したりするため、日本人学生にとってもメリットのあるプログラムです。
 交換留学では、自分で留学プランを組みます。このプログラムでは学費が免除になるため、学生にとって留学しやすい環境です。
 そして、この2つの留学制度を使い分けることにより、長期的な視点で留学を計画できます。例えば、1・2・3年次の間に長期休暇を利用して「モビリティープログラム」に参加して、異文化に対応する経験を積み、その後4年次や大学院在学中に、数ある協定校の中から交換留学先を選択し、これまでに身につけた海外経験を活かし長期留学に臨む、といったプランを立てることが可能です。